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23.魔法って便利ですね

はい、一夜にして大金持ち(予定)になった異世界ドリームの体現者、アーサー君です。

知らない親戚とか友人とかが、突然現れたりするんでしょうか?



はてさて、今日は屋敷の片隅にある馬小屋に来ています。

いや、正確には馬小屋の横にある作業場ですね。


ここは馬具の補修を行ったり蹄鉄を直す器具などが置いてあるんです。

つまり火床ほどと金床、それに各種工具が揃ってるんですよ。


そして今、俺の目の前には、先日の鍛冶屋探訪で手に入れた、鉄やミスリルの端材が並んでいます。

今日は自分用の武器を作ろうかと思って、その実験に来たのです。


作業場の管理を任されている使用人は、俺に言われて渋々場所を貸してくれました。

いや、権力とか使ってないですよ?


空いた時間でいいから、貸して欲しいって言ったら、「坊っちゃんに怪我でもさせたら、クビになっちまう!オラにはムスメが!」って言ってました。

なので銀貨一枚と一筆書いてようやく借りられましたよ。


リーラはと言えば、他の仕事があるらしく今日は別行動です。

なんか珍しいですが、まあ居てもらってもする事がないと思うので、問題ありません。




さて、準備も整いましたので、ボチボチ作業を始めましょうかね。


木炭に火魔法で着火して、風魔法で空気を送り込みます。

なんですかね?火起こしとかフイゴの操作とか、一切無視です。魔法ってべんりー!


最初に手馴しとして、まずは鉄だけを炉に差し込んで熱していきます。


赤くなってきた所を素早く取り出して、ハンマーで叩いて整形していきます。


カン、カン、トン、トン、カン、カン、カン!


おおよそ形になってから灰に突っ込んで、除冷しておきましょう。

こうやって焼き鈍しておけば、後からヤスリでの整形が楽になるんです。

ジジイに連れられて、よく行ってた鍛冶屋のおっちゃんが言ってました。


同じ要領でミスリルも、叩いて形にしていきます。


いや~、鍛冶作業って楽しいですね♪


えっ?三歳児が鍛冶作業なんておかしいだろって?

そりゃ、自分の腕より大きいハンマー振り下ろすなんて、普通はできませんよ。


でもね、ファンタジー世界ですので魔力強化を使えば、問題なく重いハンマーを振るえるんですよね。



ふう、まずは第一弾の作業が終わりました。

いま叩いたナイフは、後でヤスリをかけて整形して、それから焼入れです。


そして、ここからが本日の本命である作業です。


鉄とミスリルの端材を、それぞれ炉にブチ込みます。

先に鉄を取り出して薄く長く伸ばしてから、タガネを使って二つに折り返します。

もう一度叩いて形にしてから、再び熱して同じ要領で折り返すのです。


この作業は折り返し鍛造と言うんですが、見た所この世界の鉄はそれほど質が良くないので、不純物を飛ばすためにやっています。


えっ?素人がそんな簡単に、鉄を打てるワケがないって?


はい、そこは例によって、モザイクの兄さん(かみさま)からもらったチートが関わってきます。

ここまで出番があんまりなかった『真理の目』ですが、自分が目にした人の動きや、スキルなどを読み解く能力があるのです。


そこでこの間行ってきた鍛冶屋探訪ですよ。あそこでミスリルの剣を打っていた、エルモさんの動きを読ませてもらいました。


ただ、それをスキルとして習得できるかは、実際に体を動かして体験しないと無理みたいです。

最初に端材を打ってナイフ作ったのは、そういう訳でなんですよ。



そうして何度も鉄を鍛えてから、いよいよ本命の作業に入ります。

タガネで鉄に切れ目を入れていきます。先程は折り返すので横に切込みを入れましたが、今度は縦に切れ目を入れていきます。

さて、ここからが緊張の瞬間です。


俺は魔力を練ると、無属性の魔法で切れ込みを入れた鉄、そして炉から取り出したミスリルを、魔力で覆っちゃいました。


細長いミスリルの端材を、タガネで作った切れ込みに入れ込んで、叩き始めます。



力と魔力を同時に使う作業ですので、集中力が試されますね。


ガンガンと叩いて、ミスリルと鉄が徐々に接合し、無事に一つの塊になりました!


あとはこの塊を、もう一度熱してナイフの形に整形していきます。



いやはや、魔法バンザイ!


今日できる作業は、このぐらいでしょうかね。

何本かのナイフを火造りして、ようやく一息つきました。


後の作業は、明日以降になりそうです。




そもそも新しい武器を作ろうと思った時に、候補としてはミスリルで作ろうと思ったのです。

でも、自分が求める短刀の形にミスリルを整形した場合、折れる危険があると言われたのですよ。


なんでも硬度とミスリルの特性らしくて、半ば諦めてたんですよね。

それなら割り込み鍛造とかどうよ?って、思ったんです。


割り込み鍛造っていうのは、和式の刃物に使われる手法で柔らかい鉄に鋼を埋め込んで作る刃物なんですね。

高価で硬い鋼を、安くて柔らかい鉄で、挟み込んで作るのが特徴なんです。


こうすれば貴重な鋼を節約できて、硬くて折れやすい鋼を、柔らかい鉄が支える刃物が生まれるのです。

和式の刃物が『折れず・曲がらず・よく切れる』というのは、こうした工夫から来ているんですね。


はい、ここテストに出ますよ!



さて、ここで問題が出てきます。

そもそもミスリルと鉄はくっつくのか? という素朴な疑問。

そしてこの世界で接合を助ける、鍛接剤と呼ばれるホウ砂が手に入るのかっていう、わりと致命的な問題に行き当たりました。


まあ、もっともな疑問ですよね。

屋敷の人に聞いても本を見ても、それらしい答えは返ってきませんでしたし、武器屋の陳列商品を見ても、それらしい手法の武器はありませんでした。


ならば試してみましょう。っと言うのが、本日の趣旨だった訳ですよ。

まず実際にやってみて、ミスリルと鉄の鍛接ができるのかどうか?鍛接剤のかわりに使える物はないか?


鍛接剤は、昔の人が使ってたという藁灰と泥で代用しようかと思ってたんですが、ふと魔力という便利な存在に行き当たりまして。ええ。

鍛接の障害になる酸化皮膜を作らないようにするには、いっそ魔力で覆っちまえばいいんじゃね?って。



何度でも言いますよ。魔法バンザイ!




そして翌日、完成した少し大振りなナイフを目にして、一人でニヤニヤしています。

刃物見てニヤニヤするとか完全に危ない人ですね。


前世ならさすまた持ったお巡りさんに、周囲を囲まれますよ。


ええ、焼入れやら色々と作業しましたので、今日も汗だくで手はまっ黒ですよ。

昨日はお風呂の時間にリーラから、さんざん文句を言われました。炭と鉄の汚れって、落ちにくいんですよね。

石鹸があればいいんですが……



そして完成したミスリルの割り込み鍛造の結果は、成功でした!

ミスリル特有の白い輝きと、鉄の鈍い色が見事に波紋を作っています。


ただし、自分で作れるのは、ここまでなんですよね。


作業場の環境は小さな刃物を作るぐらいなら申し分ないのですが、流石に武器となれば違ってきます。

鍛冶って力仕事ですから大物を打つとなれば、いくら魔力強化が使えても3才児の力には限界がありますので。


ここから先は、本職の仕事になりますね。

このナイフを持って、再びエルモさんを訪ねて行って、俺の武器を打ってもらう予定です。


ああ、残りの材料も有効活用しましたよ?


父様と母様には、俺とお揃いの割り込みで作ったナイフ。

リーラとエリーナさん、それからモーリスさんにはミスリル製の小さなナイフを作りました。



夕食の時にプレゼントしましたら、みんな驚いて受け取ってくれました。

中でも父様が一番気に入ったらしく、エルモさんの所に行く話をしたら、食いついて来ました。


父様いわく 「代金は領主館に回して構わないから、お前の武器と一緒に、俺の剣も打ってもらってくれ」 だそうです。


やっぱり父様も、男の子ですな~ぁ♪


俺にそう耳打ちしてきましたので、俺はにっこり微笑んで、大きくサムズアップしました。

父様も同じように笑って、二人はガッチリ握手を交わします。


めでたく契約成立です。いやはや男親との友情って、いいですね!




あれ?エリーナさんが母様に何か耳打ちを……



あっ、母様が笑顔でこちらに近づいてくる。



「リーラ、そろそろお部屋に戻ろうか!」



俺はいち早く気づいて、リビングから脱出しました。



あぁ……父様も気づいて逃げようとしますが、壁ドンの末に捕獲されたようです……


うん、父様の尊い犠牲を、僕は寝るまで忘れないよ!


明日は武器屋に行かないといけませんからね。良い子は寝る時間です。


それでは、皆さまおやすみなさ~い!




日本刀は割り込みじゃなかったりしますが、話の都合上、色々と端折ってます。


多分今日はもう一回更新(予定)


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