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世界は裏でまわってる  作者: 最上 品
92/93

92.ランチのコンミス

もう一話、あります。


2/3



「おはようございます……って、あれ?タエちゃん?」


 お昼より少し前の時間になって、裏から挨拶をしながら入ってきたのは紫乃さん。


「おはようございます。さっきぶりですね?」

「そうだね。って、なんでいるの?」

「色々と……」

「あー、はいはい。聞かなくても分かるやつね」


 私は「知っているよ」と言わんばかりの顔をすると、紫乃さんがしたり顔になった。


「あら、おはよう。くっちゃべるのは後にして、用意しなよ」

「はーい」


 紫乃さんはおかみさんの一言に返事をしながら、裏へ行くといつもとは少し違う状況を察したのか、すぐに整った状態になって戻ってきます。


「何かお店でも、あった?」

「ええ、仕入れで……」

「そう。それでおかみさんはいつも以上に笑顔なのね」


 紫乃さんの言葉で再びおかみさんを見るが、私にはいつも通りに見えた。


「みたいです」


 喋るのはここまでにして、数分もしないうちに大将が店を開けるぞと、一声。


 お店が開店すると、開店一番で入ってくる客も。


 夜とは違う客層は特に時間をかけない。

 帽子も取らずに席に着く客、新聞を片手で読みながら待つ客、革靴の底が床を小さく鳴らす客。

 皿が置かれた瞬間に食べ始め、だが一口ごとに味を測るような目だけが鋭い客。

 ――誰も急がないが、全員が急いでいて、味には一家言あるような妙な圧力を感じる。


 大将は丁寧な仕事で次々と料理を仕上げていく。だが、追いつかない。


 手は出せない。それでも、鍋の減りと皿の戻りだけは数えてしまう。


 大将とおかみさんだけでは少しずつ手が足りない状態に追い込まれ始めた。


「紫乃さん、忙しい時って昼はどういう感じ?」

「んー、誰かしら手の空いているのがパパっと手伝って、また客席側に戻る感じかな?」

「今まさにその“手の空いてる人”が必要な状況ですよね。行ってきても?」

「いいと思うよ。ここのみんなも、タエちゃんの調理の腕は知っているからね」


「え、でも、厨房は……」


 紫乃さんの許可はあるものの、若い女給は戸惑い、逆に慣れた女給はよろしくと言ってくる。


 私は対応していたお客さんの番号を別の人に渡し、厨房へ。


「丁度いいところにって、タエさんか」

「ええ。お手伝いに来ましたよ。後程改善の話もしますが、まずはこの山場を乗り切るところからですね?」

「……だな。って、客席は大丈夫か?」


 私は一度だけ、迷いなく頷いた。


「いいですよね?おかみさん?一応、紫乃さん達に確認は取りましたが……」


 そう言うと、額から汗が落ちそうになるのを首の動き一つで何とかするおかみさんが言う。


「お客さんには悪いが、タエさんが出ると客の回転が悪いみたいだし、そうだね、何処まで出来るんだい?」


 床に落ちた粉、積み上がった皿、ソースの付いた鍋。


 私は大将の目をまっすぐ見て、袖を捲った。


「全部」





「じゃあ、コロッケの衣を纏うところまで、後は……卵を追加で溶いて……いや、その前に……」


 大将が指示を出しかける。だが待つまでもなく、足りないのは洗い場だった。

すぐにどのたわしを使えばいいのか確認をする。


「このたわし、使っていいです?」

「ああ、ただ……」

「大丈夫です。拭くものも用意して、お皿は後にしますよ?まだありますよね?」


 山のような皿には目もくれず、私は空になった鍋だけを掴み、洗い場へ滑らせる。


 今止まっているのは、火だ。


「頼んだ。後は……」

「おかみさん、おかみさんの方の必要な手伝いも言って下さい。重要なモノだけはすぐにやっていきますから」

「…………助かるよ。よぉし、やるよ」

「「おうっ」」


 大将と私の返事が重なり、厨房のやる気も最高潮に。


 そこからの約二時間はまるで観客のいないサーカスのよう。


 客席ではなく、裏方が命綱を握る曲芸だ。


 鍋が跳ね、皿が滑り、言葉が飛び、火が踊る。


 私は火の前には立たず、全体を見て優先順位をつける。


 崩れかけていた洗い物と調理の流れが、少しずつ噛み合い始める。


 三人で回す厨房に人が足りなくなりかけた頃、紫乃さんに頼んでいた洗いの早い子がスッと洗い場に入る。


 さらに時間を少しズラして、乾いた皿を拭き上げて戻す子も現れた。


 いつもだと大将はおかみさんが温め直して出すモノの最終的な味の確認をする事があるらしいが、おかみさんが鍋を大将の手元に滑らせる。

 大将が鍋を受け取ると、盛り付けと味の確認をし、投げるように鍋を洗い場に。


 そこからある程度時間が経ち、厨房の空気が少し緩んだ頃。

 ふと見ると、大将だけが鍋ではなく隅の箱を見ていた。


「そうだった……」


「なにが?」と聞きたくなる顔で、大将がこちらを見る。


「どうかしたんですか?」

「賄い……忙しかったのもあるが、何も手を着けていなくてな。残っているあのクズ肉……微妙だからな……」

「ああ、そう言えば、そんな事もありましたね」

「ありましたねって、何かいい方法でもあるの?」


 大将とは打って変わって、おかみさんがどうにかなるのならしておくれという顔で見てきます。


「許可さえ頂ければ、やりましょうか?」


 サーカスの最後は、拍手がなくても、少し派手なくらいが丁度いい。





なんとなくですけど、サーカスとか小さい頃に見た記憶があり、雰囲気などが好きです。


そんな記憶もあるので、映画のグレイテスト・ショーマンも好きです。あ、でもあれは曲がね、すごくいいんですよね。


ラ・ラ・ランド

グレイテスト・ショーマン


どっちも曲も好きで、今の人達は何それと言われてしまいそうですが、CD持ってるなぁ(笑)


タエさんみたいなかっこよく場を回せる人……素敵ですよねぇ。


どういう脳してるんだろう??って気になるけど、気にする方向が変??……そうですかね??(笑)


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