11. 僧侶ちゃんのお手伝いだってできる!
アムちゃんやシフちゃんと一緒に乗る、空を駆ける竜馬さんの背。
「壊れた聖石というのは、この、鞍の前のほうについているものですね?」
私の質問に、目の前の竜馬さんの頭が上下に揺れます。
『そうだ! 我の魔物の魔力は、弱い生物に悪影響があるからな! それを防いでくれるものだ!』
多分、竜馬さんから出ている、人間などに影響がある魔力をカットするようなアイテムなのでしょう。
「質の良さそうな聖石なんですけど……」
そうそう壊れそうには見えません。
『うむ! こちらに来る道すがら、強い魔物を駆除していてな! 全力で魔法を使ったら壊れてしまった!』
……多分、竜馬さんの魔力を隠すものでしょうから、攻撃魔法か何かを使ったときの魔力の余波か何かを隠そうとして、聖石の能力が足りず、壊れてしまったのでしょうか。
どんだけ強力な魔法を使ったんですかね。
「直せるかどうか試していいですか?」
聞きます。この状態なら、僧侶の魔力を注入するだけですから。
『それは、もちろん。だが、確かこれは聖女の中でもかなり神の加護や魔力が強い者、もしくは、それに匹敵するような神の加護や魔力等がないと直せないはずだから……』
ああ。特殊な聖石ということでしょうか。つまり、私が試しても、無理かもしれないということですね。
「一応、暗くなってしまった聖石に明るさを取り戻させるのは得意なのですが……それだと、無理かもしれませんね……」
『あっ、いや。もしかしたら大丈夫かもしれないと考えている。問題ないならば、試してもらえるか?』
そうですか。
「わかりました!」
うなずいた私は、聖石に触れます。そして、直すための魔力の注入を試みました。
えい!
ですが……
うーん。これ、相性は大丈夫ですが、魔力が少し足りないやつですね。魔力は多いほうなんですけど。
このやり方だと、ダメそうですかね……
そう思っていると、聖石に触れる私の手に、触手さんが触れてきました。
なんだろう、と触手さんを見ると、そこから神の力が注がれてきて……!
「わあっ! メルミィさん、聖石直りましたね!」
「石……光ってます……!」
シフちゃんとアムちゃんが驚きました。
「また、触手さんが助けてくれたんです!」
ふふーん、と触手さんを自慢する私に、竜馬さんの声が聞こえてきます。
『う……うむ。確かに、その触手殿が助けていたようだが。そなた、魔力さえ足りていれば、聖石は直せたのではないか?』
「はい! 魔力が足りていれば直せました! 聖石と相性が良い魔力も出せるみたいで。魔力を込める前に、うっかり砕いてしまった聖石とかにも、魔力を込められましたよ!」
魔法の儀式などのため、本来は、魔力を込めたあとで、砕かなければいけないんですが。
この能力のおかげで、院長先生に怒られるのを、何度か回避しています! ビックリの能力です!
『おお……! ただ、魔力を込めるだけで、そうなるのか? それならば、かなり強い神の加護があるのかもしれないが。触手殿の力だろうか』
「いえ。粉になった聖石に魔力を込められるのは、触手さんが生える前からでしたよ?」
『んっ、そうなのか……! ……しかし、それができるということは。……では、メルミィ殿は、《浄化》の魔法をかけるとき、対象に痛みを感じさせないようなことは?』
痛みのない《浄化》ですね!
「できます!」
『ほう、それもか! たしか、聖女の八割ができることだが、今は聖女はいないはず』
そうつぶやいた竜馬さんが、かなり真剣な声で私に聞きます。
『メルミィ殿。このことを、我が主に伝えてもいいだろうか? 妖精族の中には、肉体が精霊に近いようなものがいてな。その者たちに必要な能力なのだ!』
「……その《浄化》が、ですか?」
『ああ。この者たちが、よどみの強い魔力溜まりなどで邪悪な魔力等に侵されることがあって……』
はいはい、人間でもありますね。
『これは通常《浄化》などの魔法で治療することが可能なのだが、この者たちにそれを使うのは問題がある』
「問題ですか?」
『そうだ! 邪悪な魔力といっしょに、その体が吹き飛ばされてしまうことがあるのだ!』
おおっ? 人間では聞かない現象です。……というか、アムちゃんも妖精族ですから、こういうのはもっと知らないとダメですね。
純妖精族が、《浄化》で体が吹き飛ぶことがある種族なのか、わかりませんけど。
『痛みのない《浄化》では、これを防ぐことができるのだな。邪悪な魔力だけを浄化できる! そういうわけで、我が主に伝えてもいいだろうか? 我々にとり重要なことなのだ』
「わかりました! そういうことなら問題ないです!」
修行に出る前は、あまり公言しないようにとは言われていましたが、別に秘密というわけでもなかったですから。
『そうか! ありがたい!』
喜んでいる、竜馬さんの思念が伝わってきたのです。
『メルミィ殿には、そのことや聖石のことも含め、お礼をしたいのだが……我に何かできることはあるだろうか?』
そう聞かれます。
「お礼ですか……」
パッと思いつかなくて、困りますが。
「メルミィさん、メルミィさん! 竜馬さんに、薬草などの素材採取を手伝ってもらうのはどうでしょう!」
シフちゃんに提案されます。
「おおっ、それは良いかもしれませんね! 妖精族の……エルド国の森なら、良い物が採れそうです! アムちゃんは、どうですか?」
「おいしい……くだもの……」
前の森では、たまに良い果実が手に入っていましたから! アムちゃんも賛成のようです。
「触手さんは……」
にょろにょろが早くなっています!
『うむ! どうやら、全員、それで良いようだな! とりあえず、この国の中では無理だが、エルド国の中に入ったら薬草などを集めながら目的地へと向かおう!』
触手さんは賛成か反対かわかりませんでしたが、そう判断されたようです!
『目的地についた後も、そなたらの足となり、素材集めを手伝うぞ!』
その提案に、私は「ありがとうございます!」とお礼を言ったのです。
あっ、でも……
「そのやり方だと、けっこう寄り道してしまう感じになりそうですが、それは大丈夫でしょうか?」
『ああ! 大丈夫だ!』
うなずいた様子の竜馬さん。
『鞍の聖石が新品のようになり、魔力をたくさん出して走っても問題ないようになっているからな』
つまり、速度を出して走れる、ということでしょう。
『さらには、そなたらを迎えに行くにあたり、監視無し、我一人でそなたの国の中を飛んで良いという許可をもらったから、この国の者たちの護衛もない!』
ああ、そうなっていましたね。
『他者の速度にあわせなくて良い、いくら速く飛んでも問題ない、ということなら、どれだけ寄り道をしようとも、目的地には予定通りに着く!』
……かなり速度に自信があるようです。
『それに、もともと賊の対策で、蛇行した経路を飛ぶつもりなのもあったし……』
多分、通る場所の予測を難しくするためでしょうかね。竜馬さんとしては、あちこち寄るのは問題ないらしいです。『賊がいるとは思えぬが』とも、つぶやいていますけれど。
『そもそも、そなた達への歓待の一つとして、王宮に行くまで、良い薬草などの採取地を案内するような案もあったしな……。……我が場所を覚えておらず取り止めになったが』
そうなんですか。
「……では、それでお願いできますか?」
『うむ!』
うなずいた様子の竜馬さん。
『他にも、何か、我にできることがあるならやりたいぞ!』
そうも言ってくれます。
『なんでも言ってくれ!』
と伝えられても、急には。……あっ、そうだ!
「では、私の習った、エルド国の習慣や礼儀作法が問題ないか、お話をうかがっても良いでしょうか?」
聞きます。これについては、ちょっと不安がありました。
エルフを他国に入れないことが、彼らなりの礼儀だったり、人間の国と、ちょっと違うところもあるみたいですし。
強い、特殊な術を使う者たちとして彼らが恐れられていたころの名残だとか聞きましたが。
派遣する従魔などの種類も、相手国との関係で、いろいろ変わってくるのでしょうけれど。
『良いぞ! 習慣などについて話すのだな! 我が知る妖精族の、昔からの一般常識なぞは、大体わかる! 向こうにつくまでの暇つぶしにもなりそうで、我も嬉しい!』
そう、竜馬さんから許可をもらえたのです!
アムちゃんのような純妖精族に浄化を使って良いかも疑問でしたし、いろいろ聞けそうでありがたいですねー。
そうやって私たちは大空での会話を楽しんだのです!
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