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【完結】戦隊ブルーはクールでいたい〜頼むから俺を振り回すな〜  作者: 仮面大将G
幹部襲来!

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第44話 通勤路

 朝——。カーテンの隙間から朝日が差し込み、俺の顔を照らす。

 昨日は久しぶりにゆっくり眠ることができた。おかげで頭もシャキッと冴えている。今なら誰にでもツッコミを入れることができそうだ。……いや、ツッコミを入れてどうする! 俺はあくまでクールにだな……。


 ダメだダメだ。バカばっかりの周りに振り回されて、俺の脳がツッコミモードになってしまっているようだ。気を取り直して今日も会社に行こう。


 起き上がって洗面台へ向かい、顔を洗って歯磨きをする。髪を濡らしてからいつも通りセンターパートに乾かし、スーツに着替えて家を出た。


 少し歩くと、カツカツとヒールの音が近づいて来る。また部長か。家の方向が同じだから、出勤時間が被るといつも俺の後ろから現れるんだ。


 呆れながら振り向くと、そこにはいつもと同じショッキングピンクのスーツを身につけた部長が、両手にヒールを履いて逆立ちで歩いて来る姿があった。


「……何してるんですか鳥羽部長!?」


「おお橋田! おはよう! 今日もいい朝だな!」


「今この瞬間いい朝から意味不明の朝に変わりましたよ! だから何してるんですかって!」


「何って通勤じゃないか。2つの缶だ」


「じゃあツー缶じゃないですか! なんか飲んで来ました!?」


「いや、よく見ろ。足には缶ぽっくりを履いているぞ」


「ああそのツー缶だったんですね。納得……しませんが!? 何してるんですか!」


 鳥羽部長は逆立ちのまま俺の横に並び、俺の目線には缶ぽっくりが乗った部長の素足がチラつくことになった。


「しかし爽やかな朝だな。こんな朝には肉うどん(特盛)でも食べたくなるな!」


「なんでそんな暑苦しいものを……じゃなくて! 俺はずっとなんで逆立ちしてるのかを聞いてるんです!」


「ああ! なんだそんなことか! 私が今日ポニーテールにして来たことを聞いてるのかと」


「逆立ちなんでポニーテールかどうか気づかなかったです! で、なんで逆立ちしてるんですか!」


「これはトレーニングだ! 私も早く君たちの仲間になりたいからな!」


 まだそんなことを言ってたのか……。なんで部長はそこまでしてハシレンジャーになりたいんだ。自分でやってみて思うが、ヒーローというのは大変なものだ。何かある度に出動しなければならないし、怪人と戦って負傷することももちろんある。そして紅希と黄花、ハシレイがアホだ。なんならホーテーソク団もアホだ。……うん、多分俺が1番大変だと思ってるのはこの仲間のせいだろうな。


「私は子どもの頃からヒーロー番組が大好きでな。特に戦隊のピンクに憧れたものだ! 女の子でもヒーローになれる。そんな姿が格好良くて、私もヒーローになりたい、そう思ったんだ! ところで今度有給を使って徳島に行くんだが観光スポットを知らないか?」


「知らないです! 自分で調べてください! せっかくいい話かと思ったのに!」


「徳島と言えばトマト祭りだな! 互いに熟したトマトを投げつけ合う! 最高の祭りだ!」


「徳島のことスペインだと思ってます!?」


「それで徳島は」


「徳島はどうでもいいんです! 部長がハシレンジャーになりたいとかそういう話だったでしょう!?」


「ああそんな話をしたこともあったな。今となっては昔話だが」


「今玉手箱開けました!?」


 結局そのまま逆立ちの部長と並んで歩いて行く。傍から見ればかなりシュールな光景だろうな。いや俺から見た部長単体でも十分シュールなのだが。早く普通に歩いてくれないだろうか。


「ところで橋田、ホーテーソク団の幹部を倒したらしいな! おめでとう! コンプレックスネーションだ!」


「コングラッチュレーションでしょう! なんですかその劣等感の国家は!」


「それは多分あれだ、みんな背が低すぎて困ってるんだろう。平均身長が1.9mmだ」


「パスタの直径みたいな身長! 小さすぎるでしょう!?」


「大体7分で茹で上がるぞ」


「じゃあパスタじゃないですか! ……いやどうでもいいんですよその話は! 何回話を逸らすんですか!」


「警察の取り調べではカツ丼が出てくるイメージだが、パスタが出て来てもいいと思うのは私だけか? ああ警察といえばケイブマンを倒したんだったな」


「話がターンして戻って来た! 荒業ですね!?」


「で、どうだ? 幹部を倒した感想は?」


 器用に缶ぽっくりを乗せたままこちらを向く部長のつま先に向かって、俺は口を開く。


「そうですね、まあ晴れ晴れとした気分ではありました。あいつ紅希を執拗に狙ってて、2回も洗脳してきたので、やり返せて気持ち良かったですね」


「そうだな。大野さんと小野さんはローマ字で書くと見分けがつかないな」


「話聞いてました!?」


「大は小を兼ねると言うから、もう全国の小野さんは大野さんになればいいのに」


「むちゃくちゃ言いますね!? 暴論すぎてびっくりしますよ!」


「ところで橋田、喉が乾かないか? 今日は何故かやけに汗をかくんだ」


「逆立ちしてるからでしょう!? 俺は特に喉は乾いてません!」


「お、ちょうどあそこに自販機があるぞ。水ゼリーでも買うか」


「本当に喉潤いますかそれ!?」


 宣言通り水ゼリーを買った部長は、器用に足でボトルを振り、逆立ちのままゼリーを飲む。よくやるものだ。そのまま逆流して来そうなものだが……。


 最終的に逆立ちのまま通勤路を歩き切った部長を連れ、俺は会社の中に入った。


 ケイブマンを倒したから、しばらくはこういう日が続くのだろう。ホーテーソク団も幹部を倒されたから、大人しくしているはずだ。


 オフィスに着いてもまだ部長は逆立ちのまま。面倒くさくなった俺は部長を無理やりひっくり返して足にヒールを履かせ、缶ぽっくりを投げ捨て、逆流して来た水ゼリーを掃除してから業務を始めた。

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