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【完結】戦隊ブルーはクールでいたい〜頼むから俺を振り回すな〜  作者: 仮面大将G
ハシレンジャー結成!

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第29話 幹部対策を練ろう

 モニターをつけたハシレイは、指し棒を持って来てモニターをバシバシ叩き始めた。


「分かるか? このxに代入せなあかんのや!」


「なんの話をしてるんだ! 数学の授業をするな!」


「xに合成着色料を代入したら何ができるか答えてみい」


「知るか! 数学でもないのか!?」


「答えは『体を冷やして水分と塩分を補給する』や」


「熱中症の応急処置じゃないか! お前はずっと何を言ってるんだ!」


「ああすまんすまん、つい熱くなってもうた。体を冷やして水分と塩分を補給せなな」


「うるさいぞお前……。早く本題に入れ!」


 ハシレイはこほんと咳払いをひとつして、再び話し出した。


「ほな本題に入るで。入ると言えば代入やな。合成着色料の代入についてやけど……」


「その話はさっき聞いた! 同じ過ちを繰り返すな!」


「おおせやったな。本題はこれや!」


 ハシレイが指し棒でモニターを指すと、大きな文字が表れた。

 そこには『甲子園注目球児100選』と表示されている。


「おいこれはなんだ! 今から高校野球の話をされるのか!?」


「ああこれはワシが個人的にまとめた資料なんや。間違えてしもたな。興味あったらこっちから解説するけどどや?」


「興味は無いから本題を話してくれるか!? 前フリが長すぎるぞ!」


「ほんま碧はツレへんやっちゃなあ。実は自分も甲子園目指して毎日弁当を作ってたとかノってくれてもええやんか」


「なんで母親の方なんだ! せめて球児本人であれ!」


「ほな改めて今から本題に入るで」


「急だな!」


 ハシレイはもう一度モニターを指した。

 するとそこにはロボットのような姿の怪人が映し出される。だがいつものホーテーソク団の怪人とは違い、かなりゴツい体をしている怪人だ。目の部分は三角形に尖っており、威圧感を覚えてしまう。


「司令、これは何? 私には怪人が飛び出しているように見えるのだけれど」


「3Dメガネを外せ! どこから持って来たんだそんなもの!」


「おー! 俺が貸してやったんだ! 前買った3Dメガネだぜ!」


「なんでこのタイミングで貸した!? そもそも怪人を3D仕様にしておくな!」


 俺たちが騒いでいる中、ハシレイは打って変わって真面目な声を出した。


「こいつはホーテーソク団の幹部、ケイブマンや。恐らくこいつが、自分らが前会ったっちゅう幹部やとワシは睨んどる」


「幹部ってなんだー? 病気とか傷がある部分のことかー?」


「それは患部だ! いや、それも『かんぶ』ではあるんだが……ややこしいボケ方をするな!」


「唐突にもほどがあるわね。その幹部のことを私たちに知らせてどうしろって言うのかしら? 今の私たちが大縄跳びで勝てる相手なの?」


「大縄跳びでは勝てるかもしれないだろう!? そんなことで勝負するな!」


「せやな。実際これを自分らに伝えても、今の自分らに適う相手やない」


「よく真面目に話し続けられるなお前は!」


 真面目な声のトーンを保ったまま、ハシレイは指し棒を黄花に向けた。


「そこでや! 黄花、自分の神秘的な力を引き出したい。今もミステリアスな部分はあるけど、自分にはもっとどえらい力が眠ってるはずなんや。そいつを最大限に引き出すで!」


 ミステリアスな力……? 確かに黄花は少しミステリアス風を装っているが、俺にはただの天然バカにしか見えない。そんな大きな力が、黄花にあるって言うのか?


「あら、よく分かってるじゃない。私には神秘的な力があるのよ」


「そーなのかー? 新しく肉を焼くのかー?」


「多分だが『神秘的』を『新品ステーキ』の略だと思ってないか!? ビフテキみたいな考え方だろう!?」


 俺と紅希のアホなやり取りを無視して、ハシレイは黄花に近づいた。


「黄花、今の時点でこの幹部について、何か感じることは無いか?」


「今のところはあまり無いわね。ただ宇宙からの声で『今日の昼飯はカレーヌードルにするか』と聞こえているわ」


「それは外にいるおっさんの声じゃないのか!? 基地なんだからもっと壁を厚く作っておけ!」


「じゃー俺が壁を擦って熱くしてやるぜ!」


「熱いの意味が違う! 摩擦熱を起こしてどうする!」


「あちぃー! これならフランベもできそーだな!」


「おい火が出てるぞ火が! 早く消せ!」


 俺は慌ててバケツに水を汲み、紅希の方へ水をかける。なんとか火が大きくなる前に消火できたが、大火事になっていたらどうするつもりだ。正義のヒーローが火事で救助されるなんて、そんな情けないことは無いぞ。


「よし。ほな黄花、自分の力を最大限に引き出すために、実験室に行こか」


「実験室……? そんなものがこの基地にあるの?」


「せや! 自分らはまだ行ったこと無いやろけどな、ワシは日常的に出入りしとるで!」


 そう言ってハシレイは黄花の背中に手を添え、部屋から出て行こうとする。


 ……なんだか嫌な予感がするな。俺は結局ハシレイについて何も情報を持っていない。黄花を実験室に連れて行って、一体どんな実験をするつもりなのか……。これは確かめないといけないな。


「おい紅希、俺たちも実験室について行くぞ」


「なんでだー? 俺実験とか分かんねーぞ?」


「そうだろうが、もしかしたら黄花が危ないかもしれない。何かあった時のために備えるんだ」


「んー、よく分かんねーけど分かった! とりあえずもう1回火起こしていいか?」


「ダメに決まっているだろう!? 何故またやる!?」


「いやー、手で火を起こす感覚にハマっちまってよー! これができればどこでも肉と田村麻呂が焼けるぜ!」


「マシュマロじゃなくてか!? 征夷大将軍を焼くな! ただの火葬じゃないか! 」


 そんなことを言っている間に、黄花とハシレイが出て行ってしまう。俺は壁に手を擦り付ける紅希を引き剥がし、2人の後を追った。

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