表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#ドラなぜ 勇者の相棒であった守護龍は、なぜか勇者の故郷を滅ぼしたいようでして  作者: アッキ@瓶の蓋。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/18

第6話 デキる後輩、ユトリエちゃんの推理 ~解答編~

 ――だんだん、話が見えて来た気がする。


「つまり、魔王討伐して、"勇者"が逃げ出してから5年後、捜索は他ならぬ守護龍メサイアウト様の手によって打ち切りに。そして現在、その守護龍様は"勇者"さんの故郷を焼き滅ぼそうと宣言している、という事っすよね?」

「あぁ、4か月ほど前は、そんな気配はまるでなかったというのに」


 ということは、この4か月の間に、守護龍メサイアウト様がそう決心するほどの、何か大きな出来事があった。


 しかしながら、その出来事がなんなのかが、まるで分からない。

 なにせ、今年は魔王討伐を成し遂げて、平和になってから200年という記念すべき年。小さな都市から、大きな都市まで、出来事(イベント)というモノは数多く行われており、たった4か月調べるとなっても、100件以上のイベントが行われている。

 また、『4か月ほど前はそんな気配はなかった』というだけで、その時は知らなかったが、実はそれより前にあった出来事から、今回の事態を決意したとなると、さらにその数は膨大となる。


「"勇者"さんの故郷、ティロット村周辺の出来事に絞ってはどうっすか? あそこが気に食わないから、今回の事態を引き起こそうとしてると考えて!」

「それでも20件近くあるぞ。さらに驚くなかれ、ティロット村の周囲には4つの村があるって、騎士団長様も言ってただろう? あれらも含めれば、さらに件数は3倍以上だ」


 とてもじゃないが、どれが守護龍メサイアウト様を刺激したのかを特定するのは、ほぼ不可能といっても良い。

 これは、なにか狙いを付けて絞り込まないと、終わらないのではないだろうか?



「はいはい、はーいっ! ここはガッキーさんの忠実なる部下にして、デキる後輩であるボクにお任せっす!」



 どう狙いを絞り込もうかと考えていると、いきなりユトリエがそんな風に自己アピールしてきた。というか、普通にキラキラした瞳でこちらを見つめて来るの、うざいので止めて欲しい。


「……それでデキる後輩とやらは、何をするんだ?」

「ふふふっ! それは勿論、このボクが、この事件の真相を解き明かしちゃうんですよね! つまりは、探偵パート、という奴っすよ!」


 どこから取り出したのか分からない、謎の帽子を深々と被ると、ごほんっと咳込んで、ユトリエは自分の推理を語り始める。


「ずばりずばりっ! この事件の真相は、"勇者"自らが行った故郷に対する復讐、という線っす!」


 ――え? "勇者"自らが行った?


「おいおい、それはないでしょうが。なにせ、"勇者"は普通の人間。200年も経っていたら、もうこの世には残っていないでしょうよ。どれだけ長生きなんですか」

「ふふんっ! デキる後輩の話は、最後まできちんと聞く! それがデキる上司の在り方だと思うっすよ?」


 キランっと、なんか歯を光り輝かせて言うのやめい。


「"勇者"が人間である事は事実、そうなのでしょう。魔王討伐から200年、生きているとは思えない」

「ほら、思えないって――」

「しかぁし! もし仮に、『守護龍メサイアウト様が、"勇者"の意識を取り込んだ』としたら、どうっすか?」


 ほう、『"勇者"の意識を取り込んだ』と来たか。



「良いっすか? まず第一に、"勇者"様が第三王女との結婚式の前に逃げ出したのが、彼女との結婚が嫌になったからとかじゃなくて、魔王を討伐した際に、なにかしらの呪いをかけられたとしたら。その呪いを、皆に移さないように、1人で死のうとしたとしたらどうでしょう?」


 確か伝承によれば、魔王を討伐したのは、"勇者"たち4人である。そして、魔王に一番大きなダメージを与え、魔王討伐の最後の一撃を決めたのが、"勇者"だとされている。

 平和な時代である私達が、魔王をどういう者なのかを知るのは伝承からしかないが、伝承からでも魔王のとんでもなさは伝わって来る。


 『巨大な大陸を、素手で2つに割った』とか、『平地に山脈を生み出して、配下の魔物として生み出した』とか、『空に浮かぶ太陽は元々3つあって、そのうちの2つを魔王が破壊した』とか。

 まるで嘘みたいな出来事が、歴史書に事実のように記されているのである。そんな魔王であれば、自分を一番追い詰めた相手である"勇者"に、何かしらの呪いをかけていても不思議ではないのかもしれない。


「そう! そして、1人寂しく死のうとした"勇者"。しかし、"勇者"の相棒であった火炎龍は、そんな"勇者"を見つけだし、彼の魂ごとその身に喰らう事に成功する!」

「そうして、"勇者"と1つとなった。ユトリエはそう言いたいの?」

「そうっす! そうして、魔王が規格外の存在なら、守護龍様だって規格外っすよね? なにせ、王国1つを丸々守護する結界を張れる、そういう生命体がまともなはずがないっすよね?」


 まぁ、一応、理屈としては通っている……ような?




「そして、ここからが本題! "勇者"の故郷を滅ぼしたいと願ったのは、守護龍メサイアウト様の中にいる"勇者"ご自身の意思! 恐らく、200年の間に、自分が救ったこの世界が、自分という"勇者"の功績を忘れてのほほんっと平和ボケしているのを見て、怒りがこみあげて来たのでしょう。こう言うのは、理屈とかではなく、積み重ねっすからね。

 積もりに積もった不満が、200年のこの時に、一気に爆発して、"勇者"の故郷を見せしめに滅ぼそうとした! いわゆる、ストレス発散みたいなやつっすよ、多分。いきなり壊さないのも、すぐに壊したら面白くないとか、そういう事を考えてるんじゃないっすか?


 ――どうっすか? この完璧な、デキる後輩のユトリエちゃんの、マジ推理は!」




 ふふんっと、ユトリエは胸を大きく張って、そう自慢げに答えるのであった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ