表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
#ドラなぜ 勇者の相棒であった守護龍は、なぜか勇者の故郷を滅ぼしたいようでして  作者: アッキ@瓶の蓋。


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4/18

第4話 騎士団長ダンガイという男

 騎士団長ダンガイと言えば、傑物として有名である。

 僅か45歳という、歴代最年少の若さで騎士団長に就任した。騎士団長とは、全ての騎士の憧れであるべき人物であり、その強さは騎士団の中でも一番でなくてはならない。無論、戦闘技術だけではなく、頭脳も。

 つまりは、騎士団最強の称号こそ、騎士団長なのである。


 その地位に、最年少で辿り着いたダンガイ騎士団長の所に、編纂二課という窓際部署の俺なんかは、絶対に関わるはずもないと思っていた。


「ねぇねぇ、ダンガイ騎士団長さん? 情報、ボク達にも教えてくださいよ~」


 そんなダンガイ騎士団長の頬を、ユトリエが指で突きながら、情報を強請(ねだ)ってる! いっ、いたたまれない!

 というか、なんでコイツは、騎士団長の部屋まですすい~っと入るや否や、仕事中の騎士団長のいる机に腰かけて、そんないたずらっ子みたいな事が出来るの?! 一切、躊躇(ちゅうちょ)とかなくて、俺、止められなかったんだけど?!


「心の広いダンガイ騎士団長さんならぁ~、部下の疑問に答えてくれるでしょう? ねっ、ダンガイ騎士団長さん?」

「…………。」


 おっ、怒っていらっしゃる! 傑物として、騎士団の見本とも呼ぶべきダンガイ騎士団長の額に、ピキッとしわが張っていらっしゃる!


「すっ、すいませんっ!」


 サッと、ユトリエを羽交い絞めにして止める俺。その際に、「ひゃんっ! ガッキーさんってば、だ・い・た・んっ♡」とか言っていたが、俺はツッコみませんよ!


うちの部下(ユトリエ)が、騎士団長様のお仕事を邪魔するなんて、監督不行き届きです! 如何様にも罰を!」

「そうだ、そうだぁ! 窓際部署であるガッキーさんに、これ以上の罰を与えられるって言うのなら、与えてみてくださいっすよ!」


 ……俺、お前を助けたはずなのに、なんでお前は俺が罰を受ける事に賛成派なんだ?


「……構わんよ」


 「はぁ……」と溜め息を吐き、ダンガイ騎士団長は書類仕事に使っていたペンを置いて、俺達に向き合う。


「どんな立場の人間であろうとも、それが騎士であれば、話を聞いて向き合う。それが私の騎士道だ」

「よっ! 騎士の鑑!」


 ひゅひゅーっと、口笛を吹くユトリエ。お前は、騎士団長相手でもその態度を続けるのな。ある意味凄いよ、本当に。


「それで、何の用事だ? 今は、別件の対応で忙しいんだが?」

「その別件――つまりは、守護龍メサイアウトさんの乱心について、ボク達も聞きたいなぁ~って話っすよ! ねっ、ガッキーさん?」

「おいっ、急に話を振るなって!」


 「本当か?」みたいな顔で、騎士団長さんに睨まれてるんだけど! まだ心の準備とか全然出来てないのに、なんでいきなりこっちに話を振るんだよ!


「……どうやら、そちらもその事件の調査をしたい。そういう事だな」


 「はぁ……」と、再び、それも先程よりも大きな溜息を吐くダンガイ騎士団長。


「確かに、あの事件は衝撃(インパクト)が強すぎるからな。知りたいと思うのも無理はあるまい。

 ――分かった。私が伝えられる範囲なら、教えてあげようじゃないか。なんなら、捜査しても良い」

「良いんでしょうか……?」

「構わんよ。どうせ暇してるでしょう、君達」


 うっ……!? そう言われると、素直に頷くしかないんだけど。


 ともあれ、騎士団長は俺とユトリエに、素直にいま、守護龍メサイアウトが"勇者"の故郷を滅ぼすと言っている事件――つまりは、守護龍メサイアウトの乱心について、俺達に教えてくれたのであった。




「まず第一に、守護龍メサイアウトが言っている件。あれは本気(・・)だ。本気で、"勇者"の故郷であるティロット村を火炎で焼き滅ぼそうと言っている。いまは、神殿の人達が宥めているらしいのだが、守護龍様の気持ちに折り合いがつかないと、本気でティロット村は焼き滅ぼされるであろう」

「ふむふむっ! そのティロット村が、"勇者"様の故郷って事っすね!」

「あぁ。言っておくが、何の変哲もないただの田舎だ。少なくとも、守護龍様に滅ぼされるほどの悪事はしていない。そして、ティロット村は少し厄介な場所に、村があってな」


 そう言いながら、騎士団長は俺達に地図を見せてくれる。

 それはこの辺りの、大雑把な地形が分かる地図だった。東の方の山間に、『ティロット』という文字が書かれており、どうやらここが例の、滅ぼされる可能性がある"勇者"の故郷という事だろう。


「このティロット村の周囲には、4つほど、小さな村がある。ティロット村とさして変わらない村なのだが、仮に守護龍様がティロット村を焼き滅ぼすとなると、この4つの村も火災に巻き込まれる。

 そして、この4つの村も被害を受けるとなると、王国の食糧事情に多大なる影響をもたらす。冬を越せない人々も出てくるだろうな、この王都でも」


 なるほど、騎士団長はそこが気がかりなのか。

 守護龍様がなんで今、ティロット村を焼き滅ぼそうというのかはどうでも良い。大切なのは、もしそうなった場合、近くの村がどれだけの損害を受け、そして王都の民がどうなるのかという所か。


「収穫しようにも、まだ芽すら出てないのがほとんどだ。それに、守護龍様が王国の一部を焼き滅ぼしたなんて、人々にどう説明すれば良いか分からない。

 今だって、『守護龍様が、どうして御乱心されるのか!』と混乱する者達が多いくらいだ。せめて、神殿側の者達が守護龍様のお言葉を伝えてくれていれば、情報を秘密裏にする事も出来たのに」


 「やれやれ」と、額に手を当てて疲れた表情を見せる騎士団長。

 今もこうして「話をしろ」と無言の圧力と共にせがむ、ユトリエの対応しているのも、疲れの原因かもしれない。一緒に押し掛けた俺が言うのもなんだが、ごめんなさい……。


「あっ、それボク気になってたんです! なんで守護龍様自身が話したのかって! 神殿の怠慢じゃないっすかね、これって」

「いや、それが話を聞くところ、普段は大人しい守護龍様が、いきなり飛び出したと、神殿側はそう言っているのだ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ