第12話 俺が辿り着いた真実
守護龍メサイアウト様による、倉庫放火事件。
王国親衛隊による、正当な捜査が始まった以上、俺とユトリエに出来る事はない。まぁ、久しぶりにイツザの奴の顔が見る事が出来たという、そういう成果を得たというべきかな。
これ以上は、王国親衛隊の捜査の邪魔になると判断した俺は、そのまま帰る事にしたのだ。
「(――おや? あれは?)」
ふと俺は、焼け焦げた倉庫に目線が移っていた。なんで視線が移ったのかと言えば、たまたまそこに倉庫があったからとしか。
そこには数人の人間が倉庫の立て直しをするために、半壊している倉庫を完全に壊そうとしている最中であった。
「おい、お前ら! しっかり壊しておけよ! 後で整地するから、跡形もなく壊して置け!」
「「「へい、親方!」」」
あー、半壊しちゃってるから下手に直すよりも、全部壊しちゃってから、また新たに建てる方が速いという判断なのだろう。
「うわぁお! あの親方さん、すっごい張り切っているようっすね。まぁ、こんな田舎じゃあ新規の建築依頼なんてほとんどないっすでしょうからね」
「そうだよな。そんな頻繁に建て替えまくっていたら、お金なんていくらあっても足りないし。こういう、事故があった時くらいしか、建て替えなんて――って、あれ?」
……何だろう? あの倉庫を破壊している様子を見ていると、なにか、思いつ――
「……? どうかしたっすか、隊長? あんな改築工事、王都ではそう珍しくないでしょうに」
そう、王都ではごくごく普通の改築工事。いまさら、とりわけ珍しい事ではない。
しかし、そんな倉庫の改築工事が、何故だか俺の頭に響いていた。
――倉庫を燃やされた事による、改築工事。
――守護龍メサイアウト様の、白い火炎による、警告。
――勇者イートバニラの故郷ティロット村。
「まさか、もしかして――」
1つ1つの情報は、大した情報ではない。
しかしながら、もし仮に、これらが最悪な形で結びついており、それこそがこの守護龍メサイアウト様が急に暴れ出した理由なのだとしたら――
「まずいなぁ、おい」
「――? まずい?」
「あぁ、俺の想像が正しければ、恐らく……」
俺はそう言って、近くに居た村人に話しかける。
「すいません、1つ聞いてもよろしいでしょうか?」
「騎士さん? えっと、まだ何かありましたでしょうか?」
「1つ尋ねたい事があるんですけれども、よろしいでしょうか?」
「まぁ、良いですけど……」と、質問に応えてくれる事になったので、とりあえず今知りたい情報だけを聞いておく。
「あの燃えていた倉庫の中身は、全部燃えてしまっているんですか?」
「あぁ、その事ですか。いえいえ、全てを燃やされたという訳ですよ? 既にいくつかは、外に出出していましたので、全ての中身が燃やされたという訳ですよ。まぁ、燃やされたのは半分以上という所でしょうかねぇ。
――まぁ、品評会に出品する分が既に王都に向かっているだけでも、良かったというモノでしょう」
村人の話を聞いて、俺は思わず「やべぇなぁ……」と口にしてしまった。
幸いなことに、質問した村人さんは「それじゃあ、仕事がありますんで」ともう既に別の仕事に出ていたため、聞いていなかったようだ。だけれども、ユトリエだけは俺の言葉を聞いていたみたいで――
「隊長、なにかあったんっすか? 今の質問に何もおかしなところは、ないっぽいっすけど?」
「いや、恐らくだが、守護龍メサイアウト様が暴走している理由が、なんとなく分かったんだよ」
「それ、本当っすか? ……で、それってやばかったりするっす?」
「あぁ、俺の想像している事が正しかったとしたら……」
そう、もしも俺の想定通りだとしたら――
「勇者の故郷であるティロット村どころか、王都が燃やされるかもしれないぞ?」
そう、それくらい、大変なことが起きるかもしれないのだ。
「すぐに王都に戻るぞ、ユトリエ! ――まぁ、俺が行ったところでなにがどうなるかは分からないけれど」
「……そうだとしたら……もしかすると」
ぶつぶつと、ユトリエはなにか言っていたようだが、俺としては早く王都に戻った方が良いと、馬を走らせる。
俺以外にも、俺が見つけたこの事実に気づいている者もいるかもしれないが、それでもお節介かもしれないが言っておこう。
「間に合うと、良いんだが……」




