第10話 解き放たれた警告
「結局、手詰まりという感じっすね~」
村長の家を出た俺とユトリエ。しかしながら、得られた情報はこの問題の解決するほどの情報ではなかった。
「まぁ、けどそれで良かったかもしれない。あれが単なる、守護龍様なりの冗談だったかもしれないし」
納得していないユトリエだが、それは俺だって同じだ。だが、実際にこれ以上、俺達に何ができるというのだろうか?
そもそも、このティロット村に来ている騎士が俺とユトリエの2人だけと言うのも、その理由の1つだ。もし仮に、あの守護龍様の発言を真面目に捉えているのならば、騎士様が数十人、少なくとも数人単位でこの村に調査に来ているはずだ。しかしながら、来ているのは俺達だけ。あの発言の真偽をまだ疑っている段階なのだろう。
「本当に良いんっすか? ボクはまだ納得してないっすけど」
「納得する以前に、これ以上は専門的な知識が必要だろう。なにより俺達の本来の仕事は、部屋での編纂作業だからな」
「……別に誰も求めてないと思うっすけど」
まぁ、それに関しては俺も同意だけど。
しかしながら、いくら窓際部署といえども、仕事として与えられている以上はしないといけないでしょうよ。うん。
「しゃあないっすね! ここは隊長の唯一の後輩ちゃんたるこのユトリエちゃんが、隊長とあの部屋でくんずほぐれつ頑張っちゃうっす!」
「くんずほぐれつとかは良いから、仕事をしろ。仕事を」
さてそれじゃあ、また2日ほどかけて王都へと帰るかぁ~。俺がそう思っていると、
――ひゅ~~!!
空をなにか、赤い玉のようなモノが飛んでいた。そしてその玉は、こちらに近付く度に、段々と大きくなっていって、
――ぶしゃああああああああああああああ!!
村にあった、作物の保存用の倉庫に引火した。
ごぅごぅと燃える倉庫、慌てて消火しに入る村人たち。そんな倉庫が燃える様子を見ながら、俺とユトリエはその炎を見ていた。
「ねぇ、先輩。あれって……?」
「あぁ。あの白い炎は、アレだよなぁ……」
白い炎――この国において、真っ白な炎を使えるのは、たった1つの生命体だけ。
――守護龍メサイアウト様、だけ。
その後、俺は知る事となる。
王都にて、守護龍メサイアウト様が再び現れて、宣言した事を。
『我は守護龍メサイアウト。いまのは警告だ、次は容赦しないぞ』




