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異世界転生は女の子で。~草木に囲まれて錬金術スローライフ~  作者: 滝川 海老郎


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第21話 孤児院の建て直し

 この町にも孤児院はある。

 街の外へ働きに行く人や農家などは魔物に襲われることがあるのだ。

 また父親を病気で亡くして、母親だけでは育てられず子供を孤児院に預ける人もいた。


「それで、お金が結構あるんだよね」

「そうですね」


 メルシーも同意してくれる。


「それでさ、偽善も偽善なんだけど、この街の孤児院、ボロいよね」

「そうですね、かなりの年季かと」


 孤児院の建物は掘っ立て小屋を長年改築して使っている。

 何回か直したものの、基礎からして小屋だったので、今でもおボロなのだ。


「このお金で建て直しできないかな。どう思う、リーチェ」

「そうですね、費用の半分といったところでしょうか」

「そっか」


「過去の利益を集めれば?」

「そうですね、四分の三くらいでしょうか。もうちょっとですね」

「領主様にお願いしてみる」


 ということで段取りをしてお手紙を書いて、領主様に直談判をすることになった。


「領主様、領主様」

「どうしたんだい? エルダだったかな」

「そうです。エルダ・バーグマンです」

「妻がハーブオイルで世話になってるな」

「そうですね。ご利用いただきありがとうございます」

「うむ」

「孤児院を建て直したいと思いまして、資金を提供しようと思ったのですが四分の三くらいが限界でして」

「なるほど、補助金がほしいと」

「はい」


 領主様と視線を交わす。

 さて、どうなるか。


「いいぞ」

「えっ、いいのですか?」

「ハーブオイルや簡易中級ポーションの税収も増えていてね。今、かなり余裕がある」

「そうなんですか。それはよかったです」

「うむ」


 領主様はそう言うとウィンクをして見せる。

 なかなかお茶目だ。


 孤児院はサラマン教の教会の隣に建っている。

 視察に行った。


「えっと、今度の孤児院は裏側へ建てる予定です」

「うん、わかりました」

「今ある孤児院を取り壊してしまうと、住む家がなくなってしまいますからね」

「なるほど~」


 そっか。今も使ってるから同じ土地に建て直すとどこかへ一時避難をしないといけない。

 それなら裏の畑をつぶして、今度はこちらを畑にした方がいい。


「楽しみです」

「そうですね」


 孤児院は教会の付属物だけど、もちろん領主の管轄でもある。

 ただ教会の組織そのものは王家や貴族とは別系統の秩序があって、貴族に準じる位があるんだよ。


「神父様、それでは失礼しますね」

「はい。この度は、ありがとうございました」


 神父さんが頭を下げる。

 孤児院は神父さんが管理者を兼ねている。

 私は男爵家の長女で、神父さんは子爵家当主くらいの地位のはず。

 だからほんらいなら私なんかに頭を下げるような人ではないのだ。


「いえいえ、いいんですよぉ」

「こんなことくらいしかできませんのでね」


 今度は頭を上げてにっこりと微笑んだ。

 かなりの御高齢のおじいさんだけど、なるほど、それなりの貫禄があった。

 細身なのにどこか威厳があるというか、そういう立場の人っぽさというか。


 そうして突貫工事が始まった。

 大工を何人も雇用して、どんどん石組が組まれていく。

 前のボロ家とは違い、しっかりした建物だった。


 私はもちろん、素知らぬ顔をして学校へ通った。

 あれよあれよと時間は過ぎていき、一か月くらいだろうか。


「ついに完成ですね」

「はい、よかったです」


 神父さんと作業の進捗を見にきた。

 もう工事はほとんど終わり、内装工事に移っていた。

 シンプルな平屋を二棟くっつけたような形をしていて、大広間が一つある。

 そして子供たちの寝室の小部屋がたくさんあった。


 前は子供部屋も大きな部屋に雑魚寝だったものを領主様がベッドを買ってくれたので、ひとりずつ寝床があった。


「わーい」

「すごーい」

「部屋がある! 子供部屋だ!」


 子供たちが走って中を見に行く。

 どこが誰と誰の部屋という風に割り当てられていく。

 基本的に四人部屋になっていて、二段ベッドだった。

 それでも以前に比べればずっと快適だろう。


「いやはや、こんな立派なものを」

「領主様が奮発してくれましたから」

「それでも言い出したのは、エルダ様です。本当に感謝しています」


 神父さんがまた頭を下げる。

 もう何度目だろう。

 毎回来る度に頭を下げられている。

 たしかにかなりの大金だ。


 これなら普通の人は自分の家を引っ越すだろう。

 ただうちはもうかなり立派な方の家なので、これ以上はないのだ。


「お姉ちゃん、ありがとう」

「「「「ありがとう」」」」


 孤児院のみんなが私に礼を言う。


「いいって、いいって~」


 ひらひらと手を振る。

 こうして孤児院の再建ができたのだった。



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