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 何か酷いものを見た気がする。

 主にこちらに丸投げされた感じの、そういうサムシングを感じる。


 きっと何かの間違いだ。表示バグってやつだ。そう信じて恐る恐る確かめてみることにする。


「ルルスのステータスですが……」

「表示できませんでしたよね?

 一応強さとしては全盛期の物らしいのですが、今の私はどこの世界にも属していないということになるのだそうです。

 何かあった時に私を簡単に回収できるのだとか」


 oh,my god.


 あ、神様呼んでいないので、出てこなくていいです。

 やっぱり文句言いたいので、出てきてください。


『どうしたんだい?』

『どうしたんだい? じゃないです。この子どういうことですか!?

 そういうことなんですか!?』

『んふふ。まあ、そんな感じのことだよ』

『やっぱり、この表示の処理は僕任せなんですね。これ人に見られたら面倒なのも良いところですよ。

 どうしてこう、微妙にかゆいところに手が届かないんですか』

『あーはっはっはっは……』

『急に笑ってどうしたんですか?』

『いや、文句ってそっちなんだなと思ってね』

『ああ、ルルスをお目付け役目的で送ってきたことですか?

 そっちは別にいいです。神様に反抗しようとか思っていませんし、真面目な話この世界に属していないからと言って、僕を殺せるわけではないですよね?』


 ルルスにステータスがない――世界に属していないということは、ルルスはこの世界において僕を止められるかもしれない存在であるということ。

 つまり僕が何かやらかした時のストッパーってわけだ。実際にどれくらいの力があるかわからないけれど、こういう存在がいるというだけで心理的に足が止まりやすくなる。


『そうだね。それが出来るならフィー君が元居た世界から蟻をそのまま連れてきたら、それでフィー君倒せるしね。

 この世界で自然に生まれたものは、フィー君を倒せない。勇者達はもともとはこの世界の人間ではないから、倒せる可能性が0ではない。君がルルスと名付けた精霊は君を倒せる可能性があるというだけだね』

『ですからそっちは気にしてないです。そういえば、今の人って精霊捕まえられるんですか?』

『無理だろうね。別世界の技術があって初めて、何とかなったものだし』

『分かりました。また連絡します』


 そう言って、神様との通話を終える。

 何か隠しているというか、言っていないことがあるような気がするけれど別にいいか。

 世界に所属していないから、世界が崩壊してもルルスは逃れられるとか、そんなことのような気がするし。


「フィーニス様?」

「神様と交信してました。

 ルルスって僕の全力についてこられるんですか?」

「フィーニス様の全力と言うと、どれほどになるんでしょうか?」


 そういえばルルスは知らないのか。と言うか、僕もよく知らない。


「ここから王都まで半日かからないくらいです?」

「それくらいなら元の姿に戻ればなんとか。人型はまだ慣れていませんから難しいです」

「まあ、最悪僕が連れて行けばいいですね」


 全力で移動するということもないように思うし。

 ちょっとフラーウスとニゲルの様子を見に行くときくらいだろうか。

 月1回くらいで見に行けば、タイミングを逃すこともないだろう。


 その時に別にルルスを連れていく必要はないはずだ。

 お目付け役だから、連れて行かないと怒られるかな?

 でもついてくるのがお目付け役の仕事で、別に僕の仕事はルルスを連れ歩くことではないので怒られる筋合いはない。Q.E.D.


 あと確認しておかないといけないことは何だっけ?


「ルルスは神様に僕のことどれくらい聞いてるんですか?」

「フィーニス様のことは大体知っていますよ。

 もともと召喚された勇者で、マコトツヤマという名前の男性だったことも、マコト様が死に至るまでの経緯も。

 神様に聞いたことはマコト様が亜神フィーニスになったということくらいです」

「知ってたんですね」

「はい。とは言っても大まかなことしかわかりませんでしたけれど。

 城の中であれば何とかぼんやりわかる、と言ったところでしたね」


 それなら説明する手間がなくていい。

 なんて気軽に思っていたら、ルルスが真面目な顔をして足を止めた。


「私はマコト様の選択が正しかったのかどうかは分かりません。

 ですが、マコト様は報われてほしいと、そう思っていました」

「そうですか。何だかそう言われるのはくすぐったいですね」


 それを今言われても、とは思う。

 だからこれだけ話して、黙ってくれたのは好印象。変に同情されても困るし。

 僕が通山真だった存在でこの世界の常識をあまり知らないということさえ知っていてくれたら、それでいいや。


「ところでフィーニス様。どのように国境を越えるつもりなんですか?

 冒険者にはなっているのかもしれませんが、ランクはそこまで高くないですよね?」

「ルルスはそんなことも知っているんですね」

「城でも話題になることはありますから。

 それに捕らえられる前は世界のあちらこちらに行けましたからね。

 だいぶ変わってしまったと思いますが、それでも通じる部分はあるでしょう」


 そういうもんか。常識については、僕が1人よりもマシって感じなのだろう。

 城にいるのは大体が貴族。貴族の常識は、平民の非常識なんて言うかはわからないけれど、違う部分は間違いなくあるだろう。逆もまた同じ。


 それでどうやって国境を越えるかだっけ。


「関所を迂回して行きますよ」

「冒険者にはなっているんですよね?」

「なってますよ。最初は冒険者として正攻法で行こうと思ったんですけど、正直言って面倒くさそうなので密入国します。気が付いたんですけど、森の中とか通っていけば普通に国から出られますよね」


 国境を越えようと思うと関所があって壁で遮られているけれど、何も国全体を壁が囲んでいるわけじゃない。

 高ランクの魔物が出てくる森とか、渡るのが困難な川とかが国境になっているところも少なくない。

 普通だったら命がけなので、関所を通る。

 当然、密入国がバレれば大変だけれど、A級の魔物が出る森の奥を監視していることはまず無い。


 仮に国全体が壁で囲われていたとしても、壁を越えて行けばいいだけだし。


「人が定めた区切りに従わなくても良いかなと思いまして。

 考えてみたら、城に不法侵入していますし、それよりも迷惑はかけないでしょう」

「確かに人の決まりを無理に守る必要はないとは思いますが、人々の中に紛れますよね?

 国境を越えた後、どのように町に入るのかは決めていますか?」

「フィーニスとして地上に来た時に経験しているので、大丈夫ですよ」


 大丈夫、大丈夫。ちゃんとルルスのことも絡めた設定を考えるから。

 語りの初めは「天才魔法使いのルルスちゃんは」なんてどうだろうか。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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