小話
10日ほど前におもむろに書いたとある男の結末。
またの名を蛇足。
故ニゲル王都。荘厳だった王城があった場所。今となっては、崩れた城が廃墟のようになっている場所。
つい先ほどまで常人では何が起こっていたのかすら見ることができなかったであろう戦闘が行われていたそこは、今ではすっかり静かになっている。
派手な音が無くなったせいか、フラーウス軍の魔の手から逃れた魔族たちが集まってきた。
そこにあったのは、そこにいたのは1人のボロボロの人。
その悲惨な状況に最初誰だかわかる人はいなかったが、ついにある人が気が付いた。
彼こそフラーウス軍にて最も恐れるべき勇者の1人、そのトップに位置する人物であると。
その話が広まるのと同時、彼は捕らえられることになる。
その瞳はどこを見ているのか分からない、話しかけても何を言っているのか分からない。
それでも、自分たちを壊滅に追いやった存在であり、状況を見るに敬愛する女王を殺した張本人に違いない。
魔族達の悲願はすでに叶うことなく、代わりに用意された役目も、もう満足にこなすことはできない。今回の戦争で魔族の数は大きく減り、人を殺して回れるほどの余力がないどころか、あと何日暮らしていけるのかもわからないほどだ。
そうなった理由の多くはこの男にある。
世界は崩壊する。だから、ここで殺したところで、何かがどうにかなるわけではない。
近々自分たちも後を追うのに、殺したところで心が晴れるわけがない。
この男の扱いをどうするのか、生き残った魔族たちが出した結論は、世界が滅びるその時までこの無様な姿をさらすこと。
殺さぬ程度に痛め続けること。
自殺させぬように目を光らせること。
この世界で生き残る最後の一人にすること。
そうして男は王城があった場所で晒されることとなった。
生気が無くなり無様を晒している姿にわずかながらも、魔族たちの心は晴れた。
石を投げつければ何かを喚く。
このまま男は世界の終焉まで魔族たちのなぶりものにされる。
魔族達の思惑通り最後の一人になれたかどうかは、神のみぞ知るところとなった。





