表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
173/197

136

 早速検証開始といきたかったのだけれど、ズィゴスさんはこしゃくにも初手でトパーシオン王女を狙ってきた。

 速さはそこそこ、スキルなしの市成以上、スキルありの市成以下って感じだろうか。

 余裕で追いつくし、余裕で守れる。


 ついでに相手の観察もするか、くらいの気持ちで王女の盾になりに行ったのだけれど、迫る大剣を作った剣で受け止めようとしたら、僕の前にルルスがバリアを張って割り込んできた。

 バリアと大剣がぶつからず、ルルスをスルーして地面を砕く。

 それを驚いた様子で見ていたズィゴスさんが、別の剣を取り出して薙払う。


 今度はバリアと大剣がぶつかり、威力に負けたルルスが弾き飛ばされた。

 ちらっと様子を確認したけれど、すぐに消滅するとかはなさそうなので大丈夫だろう。

 もののついでに、魔法で風の刃を作り出して攻撃してみたけれど、ズィゴスに当たったところで霧散した。


 これはかなり厄介な奴だなぁ……。


 とりあえず、何とか出来ないか考えてはみるけれど、時間はほしい。

 ここにトパーシオン王女を置いておいても邪魔なので、隣にいた従者と一緒に雑につかんでルルスのところまで連れていく。


「業腹だとは思いますが、これをしばらく守っておいてください」

「フィーニス様。お言葉ですが、あの存在への相手はフィーニス様でも手に余るかと。いえ、フィーニス様だからこそ手に余るかと思います」

「そうでしょうねぇ……。ですが、ルルスでも勝てる見込みはないんじゃないですか?」

「……こう言ったときのためにお側にいたのですが、力不足で申し訳有りません」

「そうだったんですね。てっきり僕への牽制だと思っていました」

「いかに私がこの世界からはずれた存在だと言っても、フィーニス様をどうにかできるほどの力はないと、分かっておられたのではないですか?」


 確かにそうなのだけれど、一度神様のところに行っているし……。


「何か隠し玉でも有るんじゃないかなって思っていました」

「残念ながら」

「まぁ、何とか頑張ってみますので、休んでいてください。

 王女もさすがに状況は分かっていると思うので、おとなしくしていてください」


 王女は「分かっているわ」と話すけれど、何となく信用ならないので魔法具を壊しておこう。

 今王女の懐にある奴で、鑑定したら引っかかった奴。

 簡単に言えば、精霊を捕らえていた檻の簡易版。


 中に精霊がいないなら、ちょいっと使用不能にすることは難しくない。


 さて、やることはやったし、律儀に待ってくれているズィゴスさんのところに行きますか。


「王女を守る騎士ってところかな?」

「止めてくださいよ。どちらかと言えば、アレの敵側なんですから」

「その割には守ったけれど」

「ズィゴスさんがカエルレウスを徹底的につぶしたみたいに、わたしにも彼女には個人的な恨みがあるんですよ」

「あー、なるほどね。その気持ちは分からなくもないかな」

「ですから、引いてくれませんか?」


 どうだ、美少女の笑顔を食らえ。

 なんてしょうもないことを考えたせいかどうかは知らないけれど、ズィゴスさんはまるで引いてくれる気はなさそうだ。

 それとも、僕がトパーシオン王女を直接どうにかする気がないことを悟られたかな?


「絶対に勝てるという確証があるのに引いてあげるほど優しくはないかな」

「そりゃそうですね」


 逆に言えば、こちらに勝ち目が出てくれば引いてくれると。

 彼の存在意義は八つ当たり。もっと苦しめた方が良いよ、なんてことよりも目の前のストレスを発散させることの方が重要だろうし説得も難しそうだ。


 そうこうしている内に、ズィゴスさんがこちらに迫ってくる。

 大剣による範囲攻撃。

 要するに大振りなわけだけれど、木とか岩とか関係なく消し飛ばしている。

 こちらも魔法で応戦してみるけれど、やっぱり彼に当たった瞬間にダメージを与えることなく霧散している。


 風はもちろん、岩をぶつけてみても、氷をぶつけてみても、炎で燃やしてみても、水で溺れさせようとしても、雷を落としても、まあ当然の権利のように無効化してくださる。

 勇者達が僕に感じていたのはこんな気持ちだったのだろうか?


 いや、それはないかな。

 勇者達の顔は、今の僕ほど余裕はなさそうだったし。


 こちらの攻撃は効かないけれど、向こうの攻撃も当たらない。


 だからといって戦況は絶対に安心だとは言えない。

 ズィゴスさん、何というか普通に強いんだよね。

 勇者達はスキルと濃密ながらも短期間の戦闘経験による付け焼き刃な部分があったのに対して、この人は普通に達人とかそう言った類の人なのだ。


 剣速は僕にしてみれば遅いのに、避けにくい攻撃をたびたび混ぜてくるので気を抜けない。「勇者」を使えば話は別だろうけれど、ものすごく長期戦の予感しかないので、曲がりなりにも時間制限があるスキルは使いたくない。

 使えなくなった瞬間負けそうだし。


 魔法攻撃は全く無意味。

 武器で攻撃するにも、僕の魔法で作ったものはもちろん、その辺の石を投げてもダメージはなさそうだった。

 だとしたら、可能性として何とかなりそうなのは肉弾戦。


 徒手空拳とか言った方がかっこいいだろうか?


 要するに拳で殴るのだ。

 相手に近づく上に、間合いはこちらの方が狭いので負けに行くようなものだけれど、残念ながらほかに手がない。

 その前に、効果のほどを調べるのが先か。


 だから隙をついて、一発殴ってみる。

 とりあえずお腹あたり。急に殴られたことでズィゴスさんは驚いていたけれど、ぜんぜん痛くなさそう。

 手応えとしては、1ダメージ与えた、みたいな感じ。


 永久に繰り返せばそのうち勝てるだろう。

 このまま持久戦とか本当に止めてほしいのだけれど、早々に諦めてくれないだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
mgfn4kzzfs7y4migblzdwd2gt6w_1cq8_hm_ow_58iu.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ