表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
171/197

134 ※市成視点

 ……ッ、クソ。クラスメイトを殺しても、ステータスが変わらないとかどんなズルだ。

 しかもオレが強くなった分、奴もまた強くなっているという事だ。

 オレの努力を奪い取っているようで、本当に気に食わない。


 だが、上質な経験値(クラスメイト)を殺したことで、オレのスキルもまた一段階強くなった。

 今のオレなら、たった3分程だがステータスを10倍にすることができる。

 先ほど上がったステータスから考えるに、10倍にしている間は確実にオレの方がステータスが高くなるだろう。


 土壇場で能力が覚醒する。どう考えても世界がオレに勝てと言っているようなものだ。

 寿命がどうだと言っていたが知ったことか。

 オレはフィーニス(通山)が気に食わない。だから殺す。

 生かしておくつもりは毛頭ない。


 とにかく細かいことは殺してから考えればいい。

 指輪はなくなった。オレの力があれば、誰も文句は言えないだろう。


 邪魔なのは目の前の此奴だけ。


 3分で殺せばいい。


「勇者」のスキルを発動。


 直後、オレの中に力が溢れる。

 今まで使ってきていた時以上の充実感。

 これなら勝てる。


 未だに余裕そうに突っ立ているフィーニスにぎゃふんと言わせてやる。

 不意打ち気味だが、戦いでぼさっとしている方が悪い。

 力いっぱい踏み込み、瞬きの間もかからない速さでフィーニスに近づき切りつける。


 今の動きが目で追える奴なんて存在しないだろう、そう思っていたのに、フィーニスはどこからか取り出した剣でオレの一撃を受け止めた。

 だが鍔迫り合いになり、力と力の勝負となって分かる。

 若干かもしれないが、オレの方が押している。これなら勝てる。


 転生してから剣ばかり使っていたのか、扱いが達者なので対応されてはいるが、スピードもオレの方が上だろう。

 攻撃を続けていると、決定的とはいえないまでも確実にダメージを通せている。


 あとは時間内に決定的な隙を見つけること。

 そうするだけで、オレの勝ちだ。

 ただしタイムリミットを考えると、多少無理をしてでも攻め込まないといけなさそうだ。


 幸いと言うか、速度が上がっている分、短い時間でできることも増えてはいる。

 そうなると案外3分というものは長いもので、打ち合いを初めて1分経ったくらいだろうか、オレの剣がフィーニスの剣を弾き飛ばした。


 このオレがその隙を見逃すはずもなく、拾わせる前に渾身の一撃を叩きこむ。

 切っ先がフィーニスの頭に届かんとしたとき、なぜだか奴と目が合ったような気がした。

 どことなく楽しそうな、そんな印象の目だった。


 直後金属同士がぶつかる高い音が鳴り響く。

 何かと思えば、いつの間にかフィーニスが新しい剣を持っていて、こちらの一撃を受け止めていた。

 再び力比べ。負けるはずがないと思っていたのに、なぜか押されている。

 とうとう弾き飛ばされた。


「なかなか楽しかったですが、まぁこんなものですね」


 冷めた目線を送ってくるフィーニスが癪で、再度走り出す。

 どこから攻撃するか分からないように、緩急を加えながら。それでも最大速度に近い速さで。


 フィーニスはまっすぐ前を見たまま、オレの動きについて行けていなさそうだ。

 そこだ!! と思ったら、フィーニスの姿が消えた。

 直後真横に現れたフィーニスに足を蹴られて転ばされる。


 何があった。なぜ追えなかった。

 何度試しても、地面に転ばされる。


「何しやがった」

「何って、わたしもスキルを使っただけですよ。

「勇者」は……と言うか、貴方達のスキルはすべて使えますから」


 待て、待て待て待て。

 勇者達全員のスキルが使えるって何だ?

「勇者」に限らず他にも使えるのか?


 つまり今までは手加減をしていて、ようやくスキルを使ったのか?


 待てよ、待てよ。勝てる訳ないだろ?

 そんなの許されるのか? オレは最強なんだぞ?

 なぜだ、なぜだなぜだなぜだ。


 ありえない、ありえない、ありえない。


「ぶっ殺してやるッ!!!」


 持てる力をすべて使って、辺り一帯のことなんて関係なしで、自爆覚悟で魔法を使う。

 手に集まった魔力を圧縮して、圧縮して、圧縮して。

 1つの国くらい破壊できそうな威力になったところで、解放する。


 光の玉として発現した魔法は、ふわふわと力なく地面に落ちたように見えるけれど、地面とふれた瞬間、近代兵器以上の威力の爆発が……起きなかった。


「危ないので、撤去させてもらいました。

 危ないのはわたしというか、トパーシオン王女でしたが」


 なぜだ、なぜだなぜだ。

 なぜ平然としている。なぜ魔法が発動しない。

 オレが、オレがあいつよりも弱いからか?


 ――勝てない。

 ――――勝てない、勝てない。


 勝てないオレに意味があるのか?

 最強でなければいけないのに、強さだけが存在意義だったのに。

 まるで勝てる気がしない。


「うわああああああぁぁぁぁぁ」


 頭が真っ白だ。どうしたらいいか分からない。

 分からない分からない。

 分からない、分からない、分からない、分からない。


 ドスッと言う音が聞こえ、ふと自分の胸を見ると大きな剣がオレの胸を貫いていた。






 どう言うわけか、痛みはなかった。

 いや、スキルの時間切れによる全身ひどい筋肉痛のような痛みはあるけれど、貫かれたことによる痛みはなかった。


 夢か? 幻覚か?


 そう思って、胸の剣に触れてみると、確かにそこに存在している。

 引き抜かれたけれど、やはり痛みはない。

 ただ、なにか。そう、なにかが抜けていくようなそんな感覚がオレを襲った。


 直後全身が重くなる。元々動けなかったとはいえ、それとは別に今までのように体を動かせそうにない。

 全身をだるさが襲う。常に重りを背負っているかのようだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。


本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
mgfn4kzzfs7y4migblzdwd2gt6w_1cq8_hm_ow_58iu.jpg
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ