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「今の魔王(ズィゴス)の目的って何なんですか?」

「神の使いに邪魔をされるのは避けたいのじゃが」

「目的次第では、ここで話さなくても邪魔しますよ?

 それよりもここであらかた、話し合いをつけておいた方が建設的だと思いますが」

「……それもそうじゃな。魔王様ならいざ知らず、妾程度でどうにかなる相手ではなかろうよ」


 キャフィクス女王はそれだけ言うと、意味深に間を空ける。

 スキル使っておけば良かっただろうか?

 でも、まあ、この女王様が神の使いにうそをつくとも思えないからいいか。


「魔王様の目的はこの世界の破壊じゃ」

「世界崩壊しますけど」

「そうじゃな。だからより正確には、時間の許す限りこの世界の人を殺し続ける事よ」

「何というか、妥当ですね」


 出てきたタイミング的にも、それがしっくりくる。

 いわば()()()()()なのだろう。

 もしくは()()()()


 そもそも魔王(ズィゴス)とは人と敵対することが決まった存在ではない。


 世界が生み出した、世界を脅かす存在を排除するための調整役(バランサー)みたいなものだ。

 当然世界を脅かしているのが人であれば、その牙は人に剥く。

 過去に何度も現れた魔王(ズィゴス)の目的は()()()()()


 最初の魔王(ズィゴス)についてはまた少し違って、世界を管理するものを亡きものにした人々の殲滅。


 でも精霊を捕らえられてしまったせいで、優先目標がそちらになった。

 精霊さえ解放できれば、人が何をしようと一応は世界が安定しただろうから。

 人から殲滅すればいい気もするけれど、その辺はシステマチックなのだ。


 そう言うわけで、魔王(ズィゴス)の使徒たる魔族の悲願はおそらく精霊の解放、ひいては世界のバランスを整えること。

 それをたった今、僕が不可能だと伝えたわけだけれど。


 魔王(ズィゴス)の目的が世界の破壊に変わったと知った時点で、キャフィクス女王も勘づいていたはずだ。

 それを信じたくなかったから、僕に確認を取ったのだろう。

 世界はどう頑張っても崩壊してしまうのかどうかを。


「ということは、今の状況は意外と助かっていたりしますか?」

「そうじゃな。押されているのは歯がゆいが、着実に人を殺してもおる。

 世界が崩壊するなら、ここで生き残る意味もなし。妾らは最期の時まで人を苦しめ殺すことを是としておるよ」

「それは良かったです。この戦争はわたしが吹っかけたようなものですからね。

 困っていると言われたら、少しばかり心を痛めるところでした」


 吹っかけたといっても、実際に行動に移したのはフラーウスだし、僕が何もしなくてもフラーウスは戦争を始めただろうから、さほど責任があるとは思えないけれど。


「恨んではおらぬが、何ゆえ神の使いがそんなことをする?」

「フラーウスに勇者が召喚されたことは?」

「知っておる。奴らがおらねばより被害を与えられただろうに、口惜しいものよ」

「わたしはその中の1人だったんですよ。急にこの世界に連れてこられて、フラーウスの言いなりにならないように頑張っていたんですが、一緒に連れてこられた勇者に殺されました」

「……神の使い殿もなかなかに波乱万丈な経験をしておるの」


 あ、同情された。

 一国の女王に同情されるレベルなんだなー。

 確かに酷いとは思うけど。でも僕は満足して逝けたからまだましだと思う。

 世の中、満足できずに死んでしまう人の方が多いだろうから。


 いやでも、満足して逝ったせいで、生まれ変わってしまったのだから報われない。


「わたしの名前はフィーニスです。そう呼んでもらって構いませんよ」

「了解した。ところでフィーニス殿は魔王様と敵対するのかの?」

「どうでしょうかね? 魔王(ズィゴス)次第だと思います。基本的には対立したくはないですが、わたしの手で……というか、わたしの望む流れで決着してほしい人もいますから、そこがバッティングするとどうなるかわかりません」


 世界崩壊を見たいと言っていた老エルフもいたけれど、彼はどうなのだろうか?

 今現れる魔王(ズィゴス)はある意味で世界崩壊の象徴でその一環だと思うので、許してくれないだろうか?

 流石に狙われたとして、守りに行くのは手間がかかる。


「そればかりは、祈るしかないの。

 フィーニス殿はこれからどうするつもりなのじゃ?」

「とりあえず見学してますよ。今のところこの戦争に手を出すつもりはありません。

 ですが一応先に精霊の場所教えておいてくれませんか?」

「いいじゃろう。邪魔をせぬというのであれば、こちらも抵抗もすまい」


 そう言う女王の後について、歩き出す。


 ニゲルで勇者一行と相対するべきか考えてはいたのだけれど、ここが彼らの終わりになりそうなので会っておいても良いかなと思っている。

 最後の瞬間は間近で見ておきたいし。

 それに王女には無事にフラーウスに帰ってもらいたいから。ある種護衛のつもりでいても良いかなと思っている。


 でも僕は勇者達を殺さない。

 あくまでも1つのイベントとして相手をしよう。

 回避可能なイベント。ウィリディスやルベルの国王にやってきたのと同じようなもの。

 精霊を不要というのであれば黙って引くし、刃を向けなくても同じ。


 その前にすべてを話しても良いかもしれない。話をさせてくれればの話だけれど。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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― 新着の感想 ―
[一言] 今更ですけどフィーニスの一人称がいつの間にか『僕』から『わたし』になってますね。
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