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『時期的にはカエルレウスが勇者をどうこうした前後くらいかな』

『なるほど、それはそれとして神様が「魔王」とか呼んじゃっていいんですか?』

『フィー君に説明するうえで分かりやすくはあるからね』

『確かにそうですね。お気遣いありがとうございます。ですが一応他の呼び名をください』


 人々の間では「魔王」で通っているし、僕も元々日本人だったのもあってなじみ深いのは違いない。

 こっちに来る直前くらいだと、魔王=悪と言う図式が成り立たない作品も少なくなかったし、「その手の魔王か」で納得できる。

 とは言え、元々を考えると別の呼び名で呼んだほうが良いだろう。


(ぼく)達の間だと、ズィゴスと呼ばれることは多いね』

『わかりました。それでどうしてズィゴスが現れたと言えるんですか?

 確か僕の周りしか認識できないみたいなこと言っていましたよね?』

『全体の数値としては追えるからね。早い話が世界が崩壊するにしても、急すぎるというか、こちらの予想以上の進み方をしているんだよ』

『その原因がズィゴスの出現にあるというわけですね』

『崩壊しかけているとはいえ、普通の存在が世界の崩壊にそんなに簡単に干渉できるわけないからね』

『ズィゴスなら……まあ、あり得ますね』


 うへぇ……なんで今更魔王(ズィゴス)が出てくるんだよぉ……。

 世界壊れかけているときに出てきても意味ないだろう……。

 神と言う立場上こんなことを言ってはいけないんだろうけれど、勇者が倒してくれないかなぁ……。


 もしくは友好的なタイプならいいんだけど、タイミングを考えるにやけくそ気味に出てきた感じがするんだよね。

 目的は……たぶん僕とは競合しないだろうけれど、カエルレウスに行かれると少し面倒くさそうだ。

 でもカエルレウスには勇者が居るはずだし、そう簡単にどうにかなることもないか。


『わかりました。それから質問って何ですか?』

『世界崩壊まで生き残れたら助けるって言っていたけど、余波で死にかねないよね? どうする気なのかなと思ってね。

 全く考えていなかったみたいだけど』

『そう言われるとそうですね。とは言っても、僕は世界崩壊なんて初めてなんで、判断は任せます』

『はいはい。フィー君もそうなるのね』

『と言うことは、彼女たち助ける人を神様任せにしたんですね』

『別に構わないんだけどね。こっちは数値見て機械的に選ぶだけだから』

『まあ、日本で神様なんてそんな感じの扱いですからね。

 神様の言う通りなんて選び方はざらにありますから』


 どちらにしようかな、と日本では何度お世話になったかわからない。

 サイコロで決めればダイスの女神のせいにするし、困った時の運任せ、神頼みは多くの人が通ってきた道だと思う。

 本当に神に任せたのはなかなかやるなと思わなくもないけれど。


 神様がいなければ、あみだくじとかで決めたのかもしれない。


『実際それくらいの関与の方が良いのかもしれないね』

『人の欲望なんて、まずなくならないでしょうからね。与えても与えても、次をよこせって言ってくるんじゃないですか?』

『そうならないようにバランスを考えてはいたんだけれど、もっとシビアに考えたほうがよさそうだ』


 世界を作るというのはなんとも面倒くさそうな話だ。

 そうなると願いで安易に正式な神にしてほしいというのはやめたほうが良かったかもしれない。

 創造神にならないことを切に祈って、一応神様に尋ねておこう。


『そう言えば、魔王にあったらどうしたらいいですか?』

『どうしてくれても構わないよ。(ぼく)の関知するところではないからね。

 敵対する可能性は少ないけど、ないとはいえないからそこだけは注意かな。むしろ敵対するかもしれないけどね』

『「むしろ」って何ですか?』

『ほら、この世界って(ぼく)が助けなかったって見方も出来るからね』

『神様のせいじゃないですかぁ……。まあ、働きますけど……』


 絶対に倒すなって言われるよりは楽だし。

 やっぱり無関係でいてくれないかなぁ……。


『それじゃあ、がんばってね』

『了解しました』


 神様からの通信が途絶え、ルルスに簡単に説明する。

 話を聞いたルルスはなんだか、複雑そうな顔をしていた。


「魔王ですか……。何で人は世界をここまで追いつめてしまったんでしょうね」

「最初は楽のためでしょうね。結局人なんて、自分が生きている間が幸せだったら良いって人は少なくないでしょうから。

 あと集団で見た場合、割と目の前のことしか見えてません。せいぜい季節が数回回る間のことを考えられるくらいです。


 そうしているうちに、精霊を知る人が少なくなり、知っている人は今まで大丈夫だから大丈夫なんて、根拠のない自信でもって精霊の力を奪い続けたわけです。

 僕にしてみれば、元凶としてはかつての人々だとは思いますよ」

「そうなんでしょうね。そもそも私達を捕まえたのは、かつての勇者でしたね」

「あー、その話ですね。聞きます?」

「フィーニス様は事情を知らないのではなかったですか?」

「何と言いますか、いろいろ()()()()()()()()なりましたからね。

 それでも当時の状況からの予想でしかありませんから、確実ではありませんよ」


 それだけ神として適応してきたのか、体の調整然り、この世界であったことを思い出すこと然り、出来るようになってきた。

 前もぼんやりと分かることはたくさんあったけれど、それ以上という感じ。この世界で起こったことは、この世界の存在である限りは大雑把には分かる。


 さすがに個々人のことまでは分からないから、こういう流れでこの国とこの国が戦った、みたいなものだけれど。

 だからどうして今の状況になっているのかと言うのも、わからなくもない。

 この世界の存在ではない勇者達の事は分からないけれど、特に初代勇者の時はいろいろと大変だった分、記憶としてさかのぼるのは簡単だった。


 別にルルスが聞きたくないなら話さなくても良いかなと思っていたら、「良ければ、お話しください」と言ったので、話すことになった。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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― 新着の感想 ―
ズィゴス……なるほどわからん!!! それはそれとして初代勇者についても気になっていたものの大昔の人の意図が分かるはずもないと諦めていたので予想とはいえ当時の事情が分かるのが嬉しいです。
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