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 襲ってきた兵隊さんを返り討ちにしながら階段を上ることしばし、ようやく居なくなって無事に学園から脱出することができた。

 途中王族っぽいのがいたけれど、襲ってこなかったので放置した。

 これで状況は伝わってくれることだろう。


 で、王都を後にしてニゲル――の前にフラーウスも良いかな――に行こうかなと思ったのだけれど、何やらルルスが言いたげな様子なので少しばかり付き合うことにした。


「僕が彼女たちに肩入れしたのが気になりますか?」

「はい。あそこまで肩入れする必要は、なかったのではないでしょうか」

「確かに必要はなかったですね。兵士の相手も僕がする必要もなかったでしょうし」

「それならどうしてですか?」


 なんだか気になったと言わんばかりにルルスが尋ねてくる。

 何だろう。神としての資質でも問われているのだろうか。ルルスは僕の監視役としてつけられたという説は、未だに無くなっていないし。


「ルルスが知っているか、気づいていたのかはわかりませんが、あの2人の内の小さいほう居たじゃないですか。

 あっちはこの世界に来て唯一、通山の話をちゃんと聞いてくれたクラスメイトなんですよ」

「なるほど。確かにいましたね。だから助けたわけですか」

「だから、って程じゃないですよ。それがあって助けたのは通山の方です。

 僕が今回助けたのは、せっかく助けた人が死んでしまったら、助けた意味がなかったかなと思わなくもなかったからです。

 通山時代の自分の意思をくみ取った感じでしょうか?」


 それを肩入れと言うのであれば、そうなのだろうけれど。

 あともう1つあるか。


「それにこの世界において、個人的に唯一悪しからず思っている人ではありますからね」

「もう1人についてはどう思っているんですか?」

「別に何とも思ってませんよ。知り合いだった人みたいな感じです。

 元々親しかったわけでもないですしね」


 親しかったらまた別なのかもしれないけれど、あいにく僕は元々ボッチだったので、親しい人などいやしない。

 悲しい現実。

 何より悲しいのはたぶん親しい人がいたら、神様に拾われなかったであろうこと。


 死んでから思う友達の重要性(歪)。


「なるほど、ありがとうございます」

「これくらいなら別に構いませんよ」

「それなら、後2つ聞いても良いですか?」

「はいはい、何ですか?」


 ルルスがこんなに質問するなんて珍しいな。

 別に答えるけれど。むしろ、今までは聞きたいことがあっても我慢していたのだろうか?

 今でこそルルスに助けられることもあって多少気を許しているけれど、昔はそうではなかったので許してほしい。


「願いを叶える権利を渡したのはなぜですか?」

「単純な話です。今回の精霊回収って誰の手柄だと思いますか?」

「それはあの二人だと思いますが……それだけですか?」

「別に叶えたい願いはないですし、何と言うか気まぐれに気に入った人に施しをするって、神様っぽくないですか?」


 僕の中だとそう言うイメージだし、神様見ていてもそう言うイメージは払しょくされない。

 ルルス的にも思い当たる節はあるらしく、苦笑いを浮かべている。


「後はアレです。せっかく助けたのに、という話に戻りますが、権利を与えなかったらたぶん、無茶してでも救う方法を探しそうだなと思いまして」

「つまり願いを叶えるから、好き勝手に動くなってことですか?」

「そうですね。できれば世界の崩壊のその時まで大人しく過ごしていただいて、崩壊後に自由に生きてほしいわけです。

 どこぞで召喚された勇者がどれくらい強いかもわかりませんしね。

 ということで、もう1つの質問は何ですか?」


 これ以上話すこともないので、話を促す。


「この国の国王には会いに行くんでしょうか? 今までは顔を出していたと思うんですけれど」

「あー、どうしましょうか? 今までは何と言うか、世界崩壊まで20年くらいあるし、余生を平穏に送る機会を与えても良いのかなと思っていたんですよ」

「そのようなことを考えていたんですね」

「他にも何となく楽しそうとかありましたけどね。あとは自分たちのせいで世界が崩壊するんだ、と心に刻んでほしかったってのもあります。

 ですが、もう余生なんて言っていられるほどの時間もなさそうですし、今この話を持っていくと精霊は解放するから助けてくれ、なんて言いかねないんですよね」


 見える被害が出て初めて動く、全員が全員そうだとは言わないけれど、特に大きな組織になるとそんな傾向が強くなる気がする。

 元一学生なのでイメージでしかないけれど。


「だから、今回は行くの止めておきましょう」

「わかりました」


 ルルスは物分かりが良くて助かる。

 皆これくらい物分かりが良ければ、僕が亜神にされることもなかったのに。と言うか、勇者召喚自体が行われていないだろう。

 でも、神様って勇者召喚は別に禁止していなかったんだっけ?


 精霊がいれば大丈夫な計算だったのだろうか?


 そんな風に神様の事を考えていたせいか『(ぼく)も1つ質問して良いかな?』と神様から通話が入った。

 こんな時にリンリンリンと着信音を鳴らしてほしかったのだけれど。


『たぶん鳴らしたら鳴らしたで、フィー君はツッコむだろう?』

『ツッコみますね。ですので諦めてください』

『ははは、相変わらずだね』

『それで用件は何ですか?』

『さっきも言ったけど質問があるのと、一応伝えておいたほうがよさそうなことがあってね』

『先に伝えておきたいという方を聞いていいですか?』

『別に構わないよ。単に魔王が出たかもってだけだから』

『わーお』


 やっぱり神様は急にぶっ込んでくるなー。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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― 新着の感想 ―
わーお。まさかのここで魔王登場(?) 世界崩壊待った無し! 魔王って何なのかは今後判明するのか気になります!
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