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 さて、その後の話。

 コレギウムは騒がしいので近づいていないけれど、約束どおりにはなっているらしい。

 捕まった職員の私財が売られ僕の元に入ってきた。これから裁かれて奴隷落ちするだろうと言われている。


 裁かれるまでこの王都があると良いのだけれど。

 それもこれも、ここの国王がどういう選択をするかによる。


 今のままで良いのか、それとも精霊の力を求めるのか。

 精霊の代わりに魔力を代用し始めた政策は、はっきり言って上手くいっていない。

 町の機械の稼働時間を短くすると王城からお達しがあったので、間違いないだろう。


 王都民たちは当然がごとく不満たらたらだった。

 それでも上からのお達しということで、今は何も起きていない。

 このまま今の生活に順応していくのか、それとも以前の生活を求めるようになるのかと言ったところだろうか。


 王都の方はこんな感じで、町に入れないモニアは泣きながら森の中を彷徨っている。

 詳しいことは関知していない。

 万が一古代竜の鱗を持ってくることができても町には入れないままなので、その時には頑丈な家くらいは作ってあげよう。


 というところで、コレギウムのあれこれから1か月がたちました。

 火の精霊はすでに神様のところに送ってあります。

 彼なのか、彼女なのかにも思うところはあるだろうけれど、神様のところで力を貰ってきたルルスと比べると安全性に難がありそうだったので。


「今日の私は精霊としていけばいいんですよね?」

「そうなりますね。でも姿はそのままでもいいですよ」

「話が進むように精霊らしい格好をしておきます」


 ということは、球体の状態で他の人にも見えるようにするのかな?

 なんて考えていたら、思ったとおりの姿になった。

 いや、僕にはずっと見えているから、他の人にも見えるかはわからないけれど。


「僕以外にも見えるようになったんですよね?」

『はい。精霊と言えばこの姿ですから』

「別に力を奪われて弱っていたから、球体だったわけじゃないんですね」


 なんて話もそこそこに、王城を目指すことにした。





 王城について思い出す。そう言えば、僕はこの国の国王の顔を知らないと。

 おかげでちょっと回り道。

 偉そうな人について回って、ようやく国王を見つけることができた。

 何と言うか、頑固おやじって感じ。


 ドワーフなので背が低く、いかつい顔で、睨まれたら子供は泣くと思う。

 そしてお城を巡って分かったことは、想像以上に切羽詰まっているということ。

 単純に魔力を買うお金がどうのと言うだけではなくて、国王含めた鍛冶師のトップグループは精霊の炎を使って行っていたため、そちらも滞っているのだとか。


 おかげで国王がイライラしていて困ります、みたいな会話をしていた。

 お疲れ様です。ご愁傷さまです。


 あとはフラーウスが快進撃を続けているとか、その割に国内に戦力を残しているとか、そう言った話とか、今回の騒動はウィリディスの精霊の樹が無くなったことと関係しているのではないのだろうかとか。

 中にはこれが世界崩壊の前兆だと言って回っている人もいたけれど、誰も相手にしていなかった。

 精霊解放派かなとちょっと様子を見てみたけれど、単に混乱を起こしたいだけの人っぽかったので放っておいた。


 小声で「それは事実ですよ」と言ってもよかったけれど、予定が狂うとアレなので我慢した。


 そうして見つけた国王様は、前述のとおりいかつい親父。これがいらいらしているのだから、関係者はたまったものではないだろう。

 僕には関係ないけれど。


 では執務室に1人でいる、イライラ国王様に話しかけよう。


「こんにちは、国王様」

「賊か? 兵たちは何をしておる?」

「賊……まぁ貴方達の尺度だと賊かもしれませんね」


 一応こちらはこの世界のトップ公認だから、賊とは言わないと思うけれど。

 その辺は別にどう思われても構わない。

 それよりも、国王の右手が何かに触れようとしている方が気になる。ということで、一瞬で移動して、その首にナイフを当てた。


「変な動きはしないでくださいね」

「くそッ……何が望みだ?」

「実は国王様に選んでもらおうかと思いまして。

 ……精霊居なくなったんですよね?」


 意味ありげに問いかければ、国王の顔が真っ赤に染まる。

 あまり怒るのはよくないよ。頭の血管切れるよ?


「お前が犯人かああああぁぁぁ」


 叫び声とともに思いっきり拳を振り回してきたので、ナイフを持っていない方の手で受け止める。

 筋力のステータスが高めなだけあって、なかなかの威力だ。具体的には獣人のリーダーといい勝負ができそうなくらい。

 国王は楽々受け止められたことに驚いたらしく、目を丸くしている。


「はい。わたしが犯人です。実際にそこにいるのが見えますか?」


 ルルスの方を指させば、国王が食い入るように見つめる。


「何をしたい?」

「その前に約束してください。私との話で嘘はつかないと」

「……いいだろう」


 しぶしぶ国王が頷いたのは、僕が持つナイフのせいか、どうか。

 約束してくれたので、構わないのだけれど。


「では、この子を渡したらどうしますか?」

「……今までと変わらん。閉じ込めて使うに決まっているだろう」

「はい、アウトでーす」


 言いたい言葉とは違う言葉が出てきて驚いている国王の隣で、僕は手を叩いた。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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