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 僕の言葉に鑑定士の男性が露骨に目を逸らす。


 今はステータスそのまま表示しているからね。

 何が見えたんだろうね。亜神は見えただろうし、4桁の数値も見えたと思う。

 ルルスの方も見ていたのであれば、驚異の不明の列が見えたことだろう。


 僕が近づくほどに、男性の顔色が悪くなっていく。

 見た目は悪くないと思うんだけどな、なんて彼にしてみればそれどころではないのだろうけれど。


「わたしのステータス、見ましたよね?」

「い……え、見てませ……」

()()()の問いに嘘をついていいとお思いですか?」


 そう言って、クスクスと笑ってみせる。

 亜神の身体は作りたい表情を簡単に作れて便利だなぁ……。

 何と言うか、今の状況楽しいのは楽しいとして、冷静に表情作ったりできる。


 まあ今は、見た目どおり結構楽しいのだけれど。


「み、見ました」

「別に見たからと言って何をするわけでもないですよ。

 ただわたしと言う存在がどういうものか、何となくは理解してもらえたと思います」

「は、はい」


 可哀そうに。怯えてしまって、声がちゃんと出せないらしい。

 亜神を暴いた報いだと思ってほしい。

 誰に「鑑定」を使おうとも、その能力は彼に与えられたもので、咎めるつもりはないけれど、見た結果どうなるかの責任もまた彼にあるというやつだ。


 やるのは勝手だけれど、やったうえでバレて暴力を振るわれる可能性だってある。

 人であれば細かいルールとかあるかもしれないけれど、(亜神)からすれば別にどちらが悪いという感じもしない。


「ですが当然、今日わたしがここに来てから出ていってしばらくするまでの事は、わたし以外のどんな存在にも伝えてはいけません。

 この約束、守ってもらえますか?」

「もちろんです。ですが、何故亜神様がこのようなところにいらっしゃるのでしょうか?

 まさか、この依頼について何か知っているんでしょうか?」


 妙に恭しいけれど、亜神を相手にしているならこんなものか。

 それだけ僕の存在を正しく見れているということでもある。

 それにしても、この依頼について知っていること、か。何となく読めてきたけれど、どうなるやら。


 とりあえず、鑑定士さんは()()()()()()()()()()()人だから鑑定したのではなく、()()()()()()()()()()()()()人だから鑑定したのかもしれない。

 


「何故って、精霊を回収しに来たからですよ。

 依頼については知らないです。楽そうだったので受けただけですから」

「精霊……ですか? おとぎ話の話だと思っていましたが、本当にいたんですね」

「やっぱり一般的にはその認識ですか」


 そうなると、果たして購入した魔力で機械を動かし続けるだけの量に足るのか、という問題になりそうだ。

 足りなければ最悪暴動とかまで行くかもしれない。予想でしかないけれど。


「と言いますか、隣のこの子は鑑定していないんですね」

「フィーニス様、何をおっしゃっているんですか?」


 ルルスを売りに出してみたら、ジトっとした目でガチトーンで言われた。


 おいおい、ルルスちゃんよ。ここでは僕のことはお姉様とお呼びなさい。


 なんてコントをやっていると、鑑定士の彼はスキルを使ってしまったらしく、また絶句している。

 さて揶揄うのもこの程度にしておいて、証明書を貰って帰りましょう。

 僕たちについては、契約しているから大丈夫。


 さてさて、この依頼がどう転ぶのやら。何があるのかは想像出来ても、どう決着がつくかは僕にはわからない。

 とりあえず、コレギウムの職員の中に他の人よりも質が良いものを身に着けている人がいたことを明記しておこう。





 報酬の受け取りは後日、何か問題があれば証明書を持って依頼人のところに行くわけだけれど、普通ならコレギウムで受け取れる。

 で、受取予定日に行ってみると、受付さんと一緒になんか()()()()()()女の人が一緒にいた。

 女の人と言うか、女の子? 今の僕の見た目年齢と同じ年齢で、釣り目をさらに吊り上げて周りを威嚇している。


「なんか嫌な予感がしますね」

「そうですか? わたしは大体の事情が呑み込めたんですけど。

 厄介事なのは間違いないですね」

「私には事情は分かりませんが、それを嫌な予感と言いませんか?」


 どちらかと言えば、退屈なので何か起こってほしいと思っているので、よほどのことではない限り()()()()にならないだけだけれど。

 未来予知が使えるわけではないので、予想外のことが起こることもあり得るけれど。


 離れて観察していたかったのだけれど、受付さんに見つかってしまったので、そちらに向かう。

 そうしたら一緒にいた女の子が「ふん」と鼻を鳴らした。


「あんたね、この偽の鱗を持ってきたって言うのは」

「本物ですよ」

「信じられないわよ。何か証拠でもあるって言うの?」


 良いところのお嬢さんかと思ったら、そうでもないらしい。

 丁寧な口調とはまるで違う、気の強い町娘みたいな話し方をしている。


 渡したはずの古代竜の鱗を握りしめて、下手したら割れそうなものだけれど、さすがは古代竜さんまるで割れる気配がない。

 あと証拠なら持ってる。


「ここに証明書がありますけど」

「何よそれ」

「それが本物だって言う証明書です」


 女の子は証明書を受け取り、それを眺めていたかと思ったら、思いっきり破り捨てた。

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本作が「第一回スターダストノベル大賞」で優秀賞を受賞し電子書籍化が決定しました。
最終第5巻が2023年9月7日より配信開始です。
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