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商人の木..


 年始が明けた数日後。私たち二人は旅の準備を行った。そして準備中に忘れていた事を思い出したのだ。思い出したきっかけは冒険者ギルドでギルド長とブタ鼻の屈強な商人のオークが言い争いをしていたことで思い出す。


「あっ!! 送金!! 送金忘れてた!!」


「ネフィア。忘れてたのか? 俺はてっきりもっと貯めてからと思ってたけど」


「もう十分貯まったよ‼ 一括支払い出来る!!」


 賞金首に感謝してる。ありがとう、命を、お金をくれて。そのお金を商人に渡して送るのを依頼しないといけない。ヘルカイトに借金しているのを返さないといけないのだ。


「にしても、何を言い争ってるんだ?」


「音拾い」


 耳を済ませて二人で音を拾う。


「何故だ!! 誰かいないのか‼」


「庭師を呼べ!! 庭の木なんか冒険者でどうこう出来るわけがばいだろ!! 庭師がいるだろ!!」


「庭師が無理だって言うんだ!! だから、なんとか出来るのを探せ!!」


「アホか!! 木なんか知るか!!」


「金なら出す!!」


「無理なもんは無理だ‼」


 なんとも、水平線の口論だ。ただ、あのオークに何故か。小さな光を感じ、その必死さからか私は彼に近付いた。背伸びをしてオークの肩を叩く。


「ん?………あんた。魔王さんか? 人違いならすまない」


「ご、ご存知で。正解です」


 バレバレなのは仕方ないがこう、なんとも有名人すぎじゃないかな。


「ああ、やはり。商人ではもう噂が出回ってる。『魔王城を追い出された愚かな魔王がいる』てな」


「そうそう愚かな魔王です。そんなことよりも揉めているようでしたけども?」


 ギルド長に目線をやった。肩を透かしながら説明してくれる。


「はぁ、こいつが庭師を探してるんだ。全く、ここは冒険者の集う場所。そうそう、いるわけないだろ?」


「彼、庭師」


「ネフィア!?」


「なに!? 彼が!!」


「…………ああ、いたなそういえば。後は任せた」


 ギルド長がやっかい者を押し付けて姿を消す。私は、一応希望を持つ勇者に頼むことにした。何とかしてトキヤと手を合わせて念を送る。


「ネフィア!! 嘘もたいがいに………」


「君!! お願いだ!! お金は幾らでも払う!! 頼む!! 頼む!!」


「はは……はは……やっべー断りづらい」


 オークがトキヤの両手をつかんで懇願する。そう、まるで藁をつかんだらかのような喜びようにトキヤが頭を抱える。


「トキヤ、ちょっと呼んでいる気がするから。付き合ってあげて」


「ネフィア………ああ、わかりました。庭を見せてください‼」


「ああ!! ついてきてくれ!!」


 オークに連れられ私は酒場を後にした。





 オークの名前は「豚屋」と言う。豚屋とはそこそこの商売人として成功者の一人だったが最近は仕事をしていないのだと言う。仕事内容は流通らしい。流通とは商品の横流しを円滑に行う仕事だそうだ。開発等も追々やっていきたいとも言っているが今はやる気が出ないとも言う。理由はわからない。


「ここです。私の家だ」


 小さな一軒家。隣も同じような作りの家が立ち並ぶ。しかし、違いが見てとれる事があった。小さな庭に一本の木が生えているからだ。


 立派な小さな庭から出てしまっているが普通の木。枯れてしまったのか、冬のためなのか葉を見せない。


「依頼の木はこれですね」


「ええ。一年間ずっと葉を持っていた木だったんです…………彼女と別れてから、枯れだしたんですよ」


 彼女とはいったい誰だろうと思ったが……その表情に愛しい人を想う気持ちが現れていた。オークという種族は愛深いのかもしれない。


「そうですか………」


「お願いします‼ この木をお願いします‼」


「わかった。俺でいいなら見よう」


 トキヤと私が近付く。トキヤが見たこともないような魔方陣。赤黒い魔方陣を書き。見つめた。


「…………魂はある。生きているな」


「そ、そうですか!!」


 オークが嬉しそうにする。私はふと、聞いてみようと思った。


「強い思い入れがあるんですね?」


 もちろんといったような表情で語ってくれる。


「ああ、ある。豚屋として名前を変えたとき……いいや、ずっとここで住んでいるときからこの木を気に入っていたんだ。色々あったよ。しかしさ、彼女が出来てから目が離れていたんだ………きっと神様がお怒りになったのさ。彼女に振られ、この木も失いそうなんだ。苦楽を共にしたってのにさ」


 話を聞いた瞬間。私はなぜ呼ばれたのか理解する。


「トキヤ。魂がある木は夢を見るでしょうか?」


「わからない。しかし、本当に弱っている。だが………魂は熱いな。力強い……」


「トキヤ。夢渡りで少し、気を失います。任せました」


「えっ!? ちょっと待て!! おい!!」


「夢渡り」


 私は彼の制止を無視して、フッと暗闇に落ちるのだった。





 







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