都市オペラハウス~旧友新友~..
私はワンちゃんとともに陸路でゆっくりと都市オペラハウスを目指していた。そして道中の野宿で私はまた彼女にお呼ばれする。
最近、毎日世界樹マナの木の下でエメリアとマナの御姉様二人と会話を行っている。夢で女子会をするような状態だ。
そう…………マナが私たちを夢に呼ぶのである。私の問いに満足したあと。彼女は今度、友達を求めるようになった。妖精やエルフは友達になろうとしても避けられて寂しい想いをしているらしい。
「今日はどんなお話を私にしてくださるの? この前はトキヤさんとの出会いから女になるまででした」
「ええ」
「トキヤさんは素晴らしく逞しい方ですね」
「うん。ふふ、だって私の旦那様よ。並大抵の事は出来る筈!!」
世界樹マナの笑い方は本当に私の知るドリアードに似ていた。そして、知りたいと思う気持ちはどこか子供みたいな感じであり。微笑ましい。
「エメリア姉さまも旦那さまいるのですか?」
「…………」
「マナ姉さん。いないんですよ実は」
「あっ………はい。ですよね」
「ですよね!? 『ですよね』って言った!? あなただっていないないでしょう!! いないでしょう!!」
「……………はい」
スゴく落ち込む。まぁその既婚者は私だけでちょっと優越感があり。口に出さないまでも「ヨシ」と心で叫ぶ。
「生き物は多いですが………語りかけてくれる。話し相手いないですし…………皆さんが言う種子からの子が羨ましいです。私には………」
「私がいるよ~夢でしかまだ会えないけど。今、向かってる!! それに………親に言えないことを言い合える仲は親友だって旦那様は教えてくれました」
「そうです!! 愛の女神の友達なんて素晴らしく珍しいですよ?」
「……………」
私はジトーとした目で女神エメリアを見つめた。美しい破廉恥な女神が私を睨む。
「わかる………バカにしてるでしょ?」
「だって。友達いないでしょ?」
「えっ!?」
「いないでしょ?」
エメリア姉の顔がみるみる泣き顔になる。
「ネフィア………友達じゃないの?」
「エメリア姉!? 私の事を友達と思ってたんですか!?」
「うあああああああん!! ひどいです!!」
女神が泣き出してしまう。私はあわあわしてしまう。隣の世界樹がクスクス笑い。なぜか嬉しそうだ。
「私と同じですねエメリア姉さん」
「うぅうう!! あなたにはネフィアと言う友達いるもん!!」
女神が拗ねてしまった。私は腕を組んで悩んでしまう。
「エメリア姉さま。ひとつ聞いてもいいですか?」
「………ぐすん。うん」
「私は信教者の一人じゃないのです?」
「信教者だけど………こんなにも親身になってくれるのあなただけです。愚かなほど物怖じせず。誰に対しても平等ですし」
「それは……………あれです!! トキヤが一番でそれ以外は下です。信教者となったのもトキヤを癒したい一心でしたから。愛が重いと言われればそれまでですが。それが私ですから………まぁその。変人です」
私の内なる心情。トキヤ絶対至上主義者である。
「見てたらわかる」
「聞いていてもわかります。お話の主役………旦那様ですよね?」
「はい。旦那様視点です」
「それで自分の事を『世界一綺麗なお姫様』て言うのは痛い」
「ごめんなさい。それトキヤさんが言った言葉です。枕元で」
彼も愛は深い。そんなことよりも。
「エメリア姉さま。友達居ないんですか?」
「………昔は沢山いたような気がしますがそれはただ恵みを享受しようとする人で友達と言えるかどうか………わからないです」
「それ。喋るお財布と思われてます」
「………知ってました」
「エメリア姉さん。マナが友達になってあげるよ‼」
「いいの!?」
「いいですよ~」
「やった!! どうだぁ~ネフィア!! 友達ですよ!!」
ドヤる女神の顔は晴れやかだ。
「おめでとう!! では私も友達ですね」
「えっ? ネフィア?」
「今更ながら女神の一人や二人ぐらい友達でもいいと思いますし。いろいろと感謝してます。今も夢でしか会えないのはきっとトキヤの近くに………」
「ごめんなさい。実はユグドラシルちゃんとか都市の女性陣にお任せしてます。私はもうこっちにいます。なのでわかりません」
「あら手が滑って剣が抜けました」
「ネフィア!?」
「女神は何処を切れば痛いですか? なに勝手に留守にしてるんですか!!」
「滑ってないね!? 故意だよね!?」
「余は頼んだろう。『任せる』と。我が伴侶を蔑ろにする愚かな女神なぞ切り伏せてやる」
「マナ!!」
「エメリア姉さま。約束破ったらだめです」
「ごめん!!」
「………はぁ。まぁ正直に話したので許しましょう。で、いまはどこです?」
「ネフィアの中」
「切腹!! ぐふぅううう」
「夢だからってやめてぇ!!」
クスクスと世界樹は笑う。楽しそうに。嬉しそうに。寂しさを埋めるように。
*
私は懐かしい都市の壁を見上げる。ワンちゃんも同じように見上げある一点に注がれる。4本の蜘蛛のような足で壁の上に鎮座し空に砲身を向けるゴブリンの放火砲。都市を守り続けてきた魔法具を私たちは見つめながら都市に入った。
トキヤと来たときと変わらず。煌めく宝石等の出店にゴブリンの騎士。衛兵。仮面売りに色んな種族が仮面を被りながら大通りを歩く。私はフードを深く被り仮面を買おうと思う。ワンちゃんはドレイクの姿で私の後ろについていく。
「おっ!? 姉さん仮面は? 買っていく?」
仮面売りの出店の前に立ち仮面を吟味する。
「姉さん旅のものだね。てっネフィアお嬢!?」
「えっ?」
店長のゴブリンが私を指差す。バレる以上に反応の大きさに私も驚いた。
「ど、どどどど!? どうしてここに!?」
「えっと!! 観光です!!」
あまりの大きな声に行き交う人が足を止める。そして一部の人が私を囲む。
「ネフィアお嬢!? うわ!? 本物」
「ネフィア様よ!!」
「ネフィアお嬢!! お帰りなさいませ!!」
「すいません!! 馴れ馴れしく声をかけてしまって………仮面好きなのお持ちください」
「ええっと」
「ネフィア嬢だってよ!!」
人が人を呼ぶ。私はあまりの状況にオロオロしながら裾を引っ張るワンちゃんによって落ち着きを取り戻す。
「ネフィア様、ここは逃げるべきですね。背に」
「う、うん」
仮面を一枚取り。店主に金貨を投げて会計を終える。そしてドレイクに股がり人だがりを跳んで屋根に登った。そこから走りだし大通りから離れる。誰もついてくる気配はない。しかし、音を拾い聞けば皆が私がいることを広めていく。その速さは異常で瞬く間に広まりきってしまった。声が声を呼び声を伝える。
「………なぜ?」
「ネフィア様は有名ですから。演劇で」
「一時期やってただけで………ここまで有名なの?」
「わかりません」
ブワッ!!
目の前に青色の炎の玉がうち上がった。私はその炎に見覚えがありワンちゃんをそちらに行くようにお願いする。
炎の上がった場所に私は屋根から降りる。大きな道ではない路地裏。そこに親友の一人が立っていた。黄色いフカフカした尻尾の獣人。東方の国から遥々渡ってきた狐の女性。ヨウコ・タマモ・クリストが立っていた。過去に出会ったオペラ座の大女優。傾国の魔物である親友の一人。彼女が仮面をつけながら人払いを行ってくれていた。
「お久し振りなのじゃ。ネフィア」
「お久し振り。ありがとう………人が集まって困ったよ」
「仕方ないのじゃ。今はちとな、広まってしまってるの~」
「広まる? 私が演劇してたことが?」
「それもじゃが。台本作者兼主演男優エリック・クリスト」
「ヨウコの旦那様が台本を?」
「そうじゃ………タイトルはオペラ座の怪人。内容は冒険者として身を隠しながら依頼され壇上へ上がった奇才ネフィアとネフィアへの愛を囁くエリック。エリックに育てられ成長した私の三角関係の実話を基に描き。そして講演しエリックは仮面を外して引退をする予定じゃった。まぁ………そういうわけで皆がお主を知っておる」
私は頭を抱える。昔に一人、ファンがサインを願った事があり有り難いと思ったが、困った。有名になればなるだけここでの滞在は大変だ。
「勝手に講演して………エリックさんは? ぶん殴ります」
「すまない。ゴブリンの精鋭と一部の婬魔とともに魔城へ行っておる。エリックはの男優引退後婬魔やゴブリンとオペラ座のドワーフの合同族長をしておる。そうそう、男優をやめさせた元凶の女優ネフィア・ネロリリスは伝説になってしまったの」
「遠因はヨウコの劣情でしょうけどね!! 依頼受けなきゃよかった!! 殺されそうになったし!!」
「感謝してるのじゃ。エリックを手に入れられたしの。エリックも幸せにそうじゃ」
自慢げに指輪を見せる狐の獣人。昔に都市ごと消し去ろうとしたのに平和なもんだ。
「巻き込み反対」
「仕方なかろう。仮面を外す理由を皆が知りたがってのぉ………皆がみたいと言うことでの。1回きりの講演が数回しなくちゃいけなくなって……エリックはエリックしか演じられんし。エリックは忙しいし。くそ大変じゃ」
何故か普通に井戸端会議みたいに世間話を私たちはしてしまう。これも女の性かもしれない。
「エリック忙しい? 私の旦那は今、植物状態よ」
「ええのか!? 一人で来て!? もしかしてあの噂は本当じゃったか!?」
「噂?」
「帝国が先手で『次期魔王候補者を拉致した』と。しかし最近に『奪還された』と聞いたのじゃ」
「…………わ、わたしです」
何故こうも噂は速いのか。風より速い。
「まさかとは思うとったが………そうじゃったのじゃな………じゃぁ………あの噂も本当じゃったか………」
ヨウコが伏し目になり顔を背ける。そして……言葉を絞り出す。
「ネフィア………ワシはお主の味方じゃ。辛いじゃろうが。大丈夫じゃ………その………」
「流産ですね。大丈夫です…………なんとか。踏ん切りつきましたから」
「………そうかの。何も思い付かなくてすまん」
「いいえ。励まそうとしてくれたのは嬉しいです。でもなんでそんな噂が?」
世界には何万何千万の人がいる。魔族がいる。それの一人が妊振したなんて噂する必要があるだろう。
「ネフィア。お前が思っとる以上に皆がお前に期待してるじゃよ。ワシもの………」
「期待ですか?」
「うむ。ちょっと隠居が長すぎじゃ。こんなところで長話もなんじゃお茶でもどうかの?」
「はい!! いいですね!! 小倉ジャムありますよね‼」
「じゃぁあそこでいいの。ワン殿はどうするかのぉ~」
「店の前で寝ております」
「いいえ、宿を探して先に決めてそこで落ち合いましょう」
「わかったのじゃ。ではワシが案内しよう」
私たちはヨウコに連れられワンちゃんを預ける。そしていつもの喫茶へ向かった。
*
懐かしい紅茶の香り、渋味が強く。甘い物と食べると非常に甘さが際立ち美味しい。喫茶と言いながらも甘味の方が主流なお店なのだ。
「懐かしい」
「そうじゃろうの~」
「変わってないですね」
「変わっておらんのじゃ。いつもの2つ」
ゴブリンのマスターに小倉ジャムとトースターと紅茶を頼む。
「この店好き」
「そうじゃろのう………ここで滞在中ほぼここにおったもんの~」
「懐かしいねぇ~本当に懐かしい」
隠居する前に立ち寄った道草。道草を枯れるまで時間を過ごしてしまっていた。
「ネフィア、お茶を誘った理由じゃが。どこまで魔国を知っているかの?」
「知っている? どうこと?」
「情報。今の世」
「ええっと」
そういえば、私は今の魔国を知らない。トロールの住む場所が様変わりしていたのも知らなかった。数年で変わりすぎだと思っている。
「野菜が安くなりました?」
「そうそう。少し安くなって………ないわよ!!」
「えっ?」
「安くなってないわよ!!」
「私のところはすっごーく安く幅広く良くなりましたよ?」
「えっ………いいなぁ……………違う!!」
ヨウコ嬢がコロコロ表情を変える。くそ面白い。
「さすが女優。表情筋がゆたかねぇ~」
「ネフィア~あなたねぇ…………わかった。教えてあげるわ。いつも情報はトキヤ殿から貰ってたようじゃな。本当にトキヤ殿がおらんと無知な箱入り娘じゃの」
「へへへ~」
「照れるでない!! 喜ぶでない!! 貶してるのじゃ!!」
「ごめんなさい。トキヤの『情報収集能力すごい』と誉められたのと私には『トキヤがいないとダメですね』と言われてつい。嬉しいです」
「何処にそんな言葉を見いだすのじゃ!? 恐ろしいほどポジティブじゃのぉ~!!」
「良く言われます。これでもずーと沈んでたんですよ~………………あれ以外で辛いことは絶対ないですから」
あれとは勿論。流産から拐われた事の一連だ。真面目な顔で私は言ってしまったのかヨウコの表情も固くなる。
「………心情お察しするのじゃ」
「ごめん。ちょっと真面目な空気やめる」
「好きにするのじゃ」
「まぁそれよりも情報頂戴~」
「ええじゃろ………魔王が死んだのは知っておるの?」
「知ってます」
偽物トキヤが倒したのだろうきっと。
「次期魔王については?」
「知らない」
「次期魔王はの、魔王有力者は皆、死んでしもうとる。故に族長の誰かじゃが………全く見当ついておらんのじゃ。皆が兵を持ち出し蜂起出来る状態で睨んでおる。魔国に族長が集まっての勢力争い中じゃ」
「ふーん。族長領地ごと喧嘩しないだけいいね」
「するかもしれんの。旦那が言っておった…………魔国は分裂し諸外国となって戦乱が起きるとな」
「都市ヘルカイトを国ヘルカイトに出来るチャンス!! まぁしませんけど」
領主ヘルカイトが勝手にやるだけで住んでいる私は関係ないだろう。徴兵されるかもしれないが。
「ふぅそうじゃの。都市ヘルカイトのような屈強な場所は関係ないじゃろうの。しかし、弱小な族は淘汰されるじゃろう。どんどん大きい族長の下へ奴隷になるじゃろうて」
「自然の流れです」
「無慈悲じゃがそうじゃな」
「そんなつまらない話より。聞きたいことがあります」
「なんじゃ?」
私は店頭に置いてあるオペラ座の講演予定表を開く。気になったヨウコの言っていたオペラ座の怪人はない。主役が不在だからだろう。
「オペラ座の怪人で私役は誰ですか?」
「…………ワシじゃ」
「まぁ!? 一人で2役!?」
私は口を押さえる。予想外な私役でビックリした。指差す。
「だって………主役の3角関係………」
「そうじゃの。本来ワシが振られた奴を奪うんじゃが…………それは誰でも演じれるのじゃ。だが、お主を演じれるのがおらんからワシだけなんじゃよ。旦那が惚れるレベルは逸脱しててのぉ………うん。わしでもギリギリじゃし旦那はアドリブで口説いて来るし………たいへんじゃぞ」
「心情お察しします」
何故、好んで恋敵を演じなければならない。私なら嫌だ。結ばれる方がいい。
「まぁ………この都市でお主はすでに有名人じゃ。今も客の一部がチラチラ見ておるの」
「はぁ………目立たない服と思うんですけどね」
「何処に白金の鎧を着て歩き回るバカがいるのじゃ………ここにおった」
「言わないで。わかってるんです。忍ぶのが下手くそなのは………だって!! トキヤがくれたもんですよ‼ 着なくちゃ!!」
「やっぱりそうじゃったの………」
「お客様どうぞ」
店員が注文した物をテーブルに用意してくれる。カップに手を出し香りを私は楽しむ。
「鎧着て喫茶来てるの間違いですね」
「そうじゃろうが他に服ないのじゃろ?」
「下着しかないです………忘れました」
「やっぱお主はトキヤ殿がおらんといかんのぉ~」
呆れられながらもヨウコ嬢との会話は盛り上がり。夜遅くまで話し込んでしまうのだった。
*
世界樹が見える根っこの上で私は腰掛け今日あったことを話す。夢の中で世界樹が私の隣に座る。
「都市オペラハウスですか?」
「そう。オペラ座があり………演劇や舞踏会やまぁきらびやかな都市。娯楽が多いかな?」
行ったことはないがカジノもあると言う。妖精の羽を持った種族が良く出入りしているらしい。
「ネフィアさんは本当に物知りですね」
「ふふ、トキヤが私を色んな所へ連れてってくれたからいっぱい知ることが出来たの。そう、旦那様のおかげ」
「まぁーたトキヤ、トキヤ言ってる。言わないと死んじゃう? ネフィア」
「死んじゃいます。それより愛の女神らしからぬ発言ですね!!」
「お腹いっぱいなんです。過食気味です」
愛を喰うのかこの破廉恥。
「自分で恋愛せず他人の恋愛で腹を満たすなんて………可愛そうなエメリア姉様」
「マナ!?」
「ああ。そう考えたら可哀想………愛の女神の癖に恋愛したことなさそう」
「うっさい!! うっさい!! うっさい!! うっさい!!」
女神エメリアが駄々こねる。破廉恥な女神はあまりに威厳が感じられないが私とマナはクスクスと笑い会う。エメリアがしょんぼりするが私は信じてる。いつかいい人に出会えることを。
「それよりもワンちゃんに私、会いたいです」
世界樹マナが手を合わせてお願いする。
「ネフィア。夢を引っ張ってこれないの?」
「出来ると思います。ちょっと待っていて下さい」
私は根っこから立ち上がり。根っこを渡って広い地面に降り立つ。
「ワンちゃん呼びます」
「やった!! ワンちゃんに会えるんですね‼」
喜ぶ世界樹。私は魔方陣を描く。夢だから思ったことが出来るらしく。なにもせずに魔方陣が浮かび上がった。
「余が呼ぶは地の。永遠なる龍。エルダードラゴン。その比類なき地を這う者の。大地の王、ワン・グランドよ。我の呼びに答えよ!!」
「格好いい!!」
「すごい!! 格好いい!!」
魔方陣が光だして魔力を流し演出。そして…………何も起こらない。
「………ワンちゃんは?」
「ネフィア失敗?」
「……………ごめん。今ただ格好良く詠唱したかっただけで呼ぶ気が無かったの。ビックリした?」
「ワンちゃん………」
「ネフィア!! はやく!!」
「…………反応薄い。まぁうん」
私は指を鳴らす。パチンと。
バッシャーン!! バシャバシャ!!
湖に何かが落ちる音がした。世界樹が立ち上がり湖を見る。水飛沫がいっぱい上がっている。
「ワンちゃん来た!!」
「ネフィア、やれば出来るならすぐに出せばいいのに」
「そうだね。まぁ湖の上に落ちちゃったけど………ワンちゃ~ん。こっち!!」
「ガボガボガボ…………」
シーン
水飛沫がしなくなった。あまりのリアルな夢だが流石に溺れてるなんて………ワンちゃんが沈んでいく。
「…………溺れてる?」
「ネフィア!! 溺れてる!!」
「うん!! どうしよ!! 溺れてる!! 夢だけど!?」
驚くがもう、沈みきってしまっていた。焦りながら世界樹を見ると彼女が手を振りあげる。その瞬間根っこが動き。一匹のドレイクを引き上げ、地面に置く。
「ゲホゲホ…………ネフィア様………これは? ゲホゲホ」
「えっと……夢だよワンちゃん」
「夢ですか………現実のような感じですよ。ゲホゲ…………溺れてる瞬間本当に現実でした」
「ワンちゃん………びじょぬれ」
「ネフィア。乾かしてあげなさい」
「エメリア姉。少しは自分でやりなさいよ」
「ネフィア……私なーんも出来ない」
「………」
火玉を手に産み出し近付けて乾かす。
「ワンちゃん大丈夫?」
「はい、ユグドラシル。なんとか…………」
「ワンちゃん。私はユグドラシルじゃないよ。マナて言うの」
「マナ…………世界樹ですか!?」
ワンちゃんが私を見つめる。勿論頷いた。
「そうです」
「ネフィア様がそう言うならそうなのでしょう!! 流石に瓜二つですね」
「ユグドラシルちゃんが私の種子なのはわかるけど似てる?」
「似てます。間違えるほどに……で呼ばれた理由は?」
「ワンちゃんに会いたいと言われたの」
「マナさんが?」
「はい!! 大きくなったワンちゃん抱き締めさせて」
「ええ。どうぞ」
体が膨張し翼が生える。そのワンちゃんの顔にマナが体を寄せて抱き締める。
「ワンちゃん………いい土の匂い」
「地龍ですから」
「ワンちゃん、ワンちゃん」
「なんでしょうか? マナさん」
ユグドラシルちゃんで慣れているのか彼はしっかり対応してくれる。
「背乗ってもいい? 飛んでほしい」
「ええ、いいですよ」
マナを背中に乗せて羽ばたき舞い上がる。
「ネフィア………ドリアードはワンちゃん好き多いのかも」
「エメリア姉さま。そう思いますよね?私もです」
二人で空に飛んで行くのを見て。本当にリアルな夢に凄いと思いながら。ワンちゃん貸すのだった。
結局、起きるまで。ワンちゃんの背に世界樹の精霊が乗り。楽しんだようだった。




