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都市ヘルカイト⑭ ..


 私は本の世界から帰ってきたが、現実時間で1周間ほど寝ていたらしい。献身的なトキヤの世話でなんとか体は維持できていたらしく、鈍ったような感じはない。


 何故、すぐに迎えに行かなかったを聞くと入れなかったと言う。私が思い出すまで無理だったのだろう。


 それよりも時期のズレが辛い。1周間前の話を聞いても一ヶ月前の話に聞こえるし。本の世界は真夏だった。もっと言うなら便利な世界だった。「いつかこの世界もあんだけ便利になればいいなぁ」と思う。


「ちょっとギルドにお前が起きたこと報告行ってくるわ」


 ソファから立ち上がって玄関へ向かう。ブーツを履いてナイフを剣帯する。大きい剣は邪魔らしい。魔法使えるし別にいいのだろう。


「んん? なんでギルドに報告を? 別に気を失ってただけですよ?」


「…………俺以外に心配する奴が多いんだ。ネフィア、昔のように一人ぼっちじゃないんだよ」


「えっと、うれしい!! ああ、うれしいですね。心配してくださってたんですね‼」


「ああう………まぁそうだな。ああ、かわいい。笑うとかわええな」


 トキヤが顔をそらした。久しぶりの反応で嬉しくなる。


「ねぇ、トキヤ。トキヤって特殊能力とかないの? こう!! 指を『ぱちん』とならせば真っ二つとか!!」


「そんなトンデモ超人の能力はない。精々魔法が使えるのが能力だな」


「そっか………おかしいなぁ~」


「何が?」


「だって………転生者でしょ?」


「てんせいしゃ? なんだそれ?」


「あっ……ええっと」


 そう、私が思っていることと彼が思っていることが合わない。伝わらないもどかしさを久しぶりに感じる。昔は愛が伝わらなかった。あれのような感覚。


「能力者みたいな者!!」


「ふむ…………あっ!! あるぞ!! 能力!!」


「えっ!? なになに!! 気になる気になる!!」


「ネフィアを喜ばす能力」


「…………………へぇ~」


「の、ノリが悪いな」


「だってぇ~喜ばすってねぇ~。そんなすぐに喜ばないよ。チョロくない」


「………ネフィア。愛してる」


「うぅ!? うん!! 私も愛してる」


 久しぶりの愛の告白で胸がときめいた。やっぱり言葉で言い合うのは大事。


「なぁ………満面の笑みで可愛いけど。喜こんでるよな?」


「!?」


 私は口を両手で塞ぐ。しまった。チョロい。


「もごもご!!」


「ああ、もう。手を塞いでたらダメだろ」


「そうだった喋っられ………むぐぅ!?」


 手を離した瞬間。別の方法で塞がれる。固い唇……たくましい。


「ごめんな。もう行かなくちゃいけない。話は帰ってからでいいだろ。いってきます」


「い、行ってらっしゃい………」


 トキヤがギルドに向かう。玄関の戸がしまった瞬間女の子座りでヘタっと座る。唇を触れるとまだ熱がある。


「…………キャァアアアアアアアア!!」


 頬を両手で挟んで恥ずかしがる。身構えなかったのもあるが久しぶりのキスといきなりの行為に体が反応するのが遅れてしまった。


「本の世界より!! ずっとずっと甘かったです!!」


 そういえばトキヤは積極的だった。




「ただいま」


「おかえり!! ここたま!!」


「………ごめん。実は人が来ていて」


 私はハグを断られた。


「こんにちはネフィアさん」


「こんにちは。ネフィア姉~大丈夫ですか?」


「こんにちは!! リディアにランス!! もう大丈夫~ちょっと夢の世界で遊びすぎちゃっただけよ」


 蜘蛛姫と皇子の夫婦が尋ねて来たのだ。見ると心配していてくれたのだろう。


「えっと!! 上がって!! お茶でも出しますよ」


「お邪魔しまーす!!」


「あっ!! リディア!! 足拭いて!!」


 みんなを連れてリビングへ。私は魔力炉でお湯を沸かし紅茶を淹れる。香り高い美味しい茶葉等はやはり本の世界よりこっちの方だ。


「いただきます」


「いただきまーす」


「でっ………ランス。話とは?」


「あっいえ……私ではなく相談があるのがリディアです」


「リディアさんが?」


「は、はい!! お姉さま………にその。聞いて貰おうと思います」


「な~に?」


 私は椅子に座り話を伺う。まぁ悩みは多いと思う。今まで魔物だったのだ。人に合わせるのは大変なこと。


「あの………服に関してなんです」


「ええ」


 今は白いワンピースを着ている。蜘蛛に乗っている姫みたいな出で立ちだ。


「これって? 服として意味を成してないと思うんですが………わかんなくって」


 彼女は背中の鞄から一枚の布を見せる。紫色の胸当て下着。布の面積は小さくそして大事な場所は隠せない。特に胸にある二つの物。場が凍る。


「お姉さま………私、わからないんです。薄くて透けますし裸でもいいのではないでしょうか?」


「えっと………これ………ここで出すべき物じゃないわね」


「ランス………おまえ………」


「ま、まってほしい僕はだな!! だめだ………擁護できる場面ではない。ぐっ潔く認めよう」


「ランスケベ」


「トキヤ………斬られたいか?」


「リディアお姉さまにこの服について助言を戴こうと思ってたんです!! なんなんですか? これ?」


 私はどうしようかと思いランスを見るが目線を逸らされてしまう。ムッツリスケベだこの人。


「ええっと。これはね………着たの?」


「はい!! ランスが喜んでくれました…………なんででしょうか?」


 ああ、無知って怖い。ランスも顔を押さえてるしトキヤも「私に早く話を終わらせろ」と指示を目で訴えて来るし…………仕方ない。


「男って女の私たちより遥かに変にこだわりがあるんです。これは、男を喜ばせる服ですね。私たちにはわからない魅力があるんですよ? 男は視覚でも楽しむ事が出来るんです。裸よりも好きなんですよ」


 実は私も持ってる。たまに着て一人で鏡でチェックしてる。


「だから…………私たちは着てあげるだけでいいんです。気にしなくてもいいんですよ」


「そういう服なんですねこれ!! 裸よりいいだなんて。さすが人です」


「いや、それな………うん………なんでもない。俺は黙っておこう」


「…………」


 ランスが意気消沈していた。そりゃー恥ずかしい事を見せつけられて普通に耐えられる訳がない。心中お察しします。


「ランスケ…………ランスケベ。大丈夫か」


「トキヤ……言いなおすなら。普通に呼んでほしい」


「ランスケベすまなかった」


「普通といったぞ僕は………」


 私はため息を吐きながら「仕方ないな」という感じで言葉を喋る。


「リディア。トキヤって………実は裸より騎士の服でいたすのも好きなんですよ。特に両手を天井に括ってお尻を突き出す体制がお好みです。男ってそんなのなんです」


「ネフィアお姉さま!? そ、それは………は、恥ずかしいですね」


「だから、その服も盛り上げる服ですよ」


 行為については恥ずかしいという気持ちがあるようだ。ならば話が早い。


「トキヤ!?」 


「おまえだけには引かれたくないが!! ネフィア!!」


「ふふ、これで二人ともお相子様です」


「ああ、畜生。俺の方が被害でかいだろ……」


「いいえ………自分も相当です」


「確かにショックでかい。あの………高貴な皇子がスケベだとは」


「リディアがかわいいのがいけないのです。それより………ええ。ちょっと。なにも言えないないですね」


「………くぅ……引かれるとは」


「リディア? ご飯は?」


「まだです」


「リディアのお家に行って手伝うよ。台所狭いの」


「あっ!! ありがとうございます」


 私は嬉しい。日常に帰って来たことを噛み締めながら。



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