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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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毎度、三河〇です

一難去ってまた一難……いや、一難乗り越えた二難三難が待っていました。ファルコ伯爵がボーブルに滞在するとなったら、休み返上でお相手をしなくちゃいけない。開港準備で、猫の手も借りたい程忙しい時にこれは痛過ぎる。しかも、相手は伯爵様で、俺から誘ったので文句なんて言えるが訳ない。

 そしてアーシック領の作物が全滅したって話。アーシック領はここ数年作物が不作で、うちからも去年一昨年と無料援助をしている。まあ、無料の名の下に人材をスカウトしまくったから、トータルでみたらプラスなんだけど。

でも、これ以上ドワーフだけが増えていくのは避けたい。政治的バランスに配慮が必要になってきたのだ。

何しろボーブルにあるドワーフの町ニューウッドは、領都ボーブル(仮)に次ぐ大きな町になっている。つまり、ボーブルにプチアーシック領が出来つつあるのだ。今もアーシック領からの移転希望が後を絶たず、今期の募集は締め切りましたとお茶を濁している状態である。

 アーシック領の問題は会議に掛けるとして、先に解決しなきゃいけない問題が発生してしまった。ある意味、今までで一番のピンチかも知れない。

(もう直ぐトナーのインクが切れてしまう……それにA4のコピー用紙も残りが僅かだ)

 このままじゃ、パソコンをいじれる時間が激減してしまう。俺しか書類の原本を印刷出来ないから、パソコンをいじっていても何も言われなかった。仕事中に関係ないプログラムを組んでも大丈夫だったのに。

 ……ここは困った時の神使(ミケ)頼みか。

 今回準備するのは牛乳と鶏もも肉。そして、それにそれぞれを描いたカード。


「俺のターン。神牛より絞られしホワイトポーションと空を飛べぬ鳥の足を生贄にして、神使歌を唄う(ミケ)を召喚‼」

 パズルは組み立ていないけど、もう一人の自分が俺に中にいるかもしれないから召喚出来る筈。


「それは最近映画になったばかりなんやからやめい。それと儂はグルメなにゃんこちゃんなんやで。きちんと調理してからお供えせえい。……それで、今日はなんの用や?」

 猫に人の食べ物をあげるのは塩分が強すぎて、危険だって聞いたから生肉のままお供えにしたのに。


「プリンターのインクとA4の紙が切れそうなんだ。無茶な頼みだってのは分かっている。どうにかして、新しい物が手に入らないか?」

 前は俺の私物だから、転移も出来たけど新品だと窃盗罪になってしまう。でも、インクもコピー用紙も大量に欲しい。販売店にしたら、大迷惑な話だ。


「安心せい。そろそろ切れる頃やと思うて先に準備しといたで」

 ミケはそう言うとしたり顔で静かに笑った。


「まじか?何を準備すれば良い?魔石か?」

 異世界物のお約束なら、現地で手に入る魔石で買えたりする。でも、あれってどこで円に変えているんだろう。


「魔石?そんな物で買える訳がないやろ。必要なのは金や。金言うてもストーンやないで。日本円やで」

 見ると、ミケは親指と人差し指で輪っかを作っていた。いや、確かにそれが一番手っ取り早いんだろうけどさ。


「円って言われても、手持ちがないぞ。転生した時に何も持って来なかったし」


「儂に抜かりはあらへん。これを使うんや」

 ミケが見せてきたのは見覚えのあるカード。でも、何でお前がそれを持っているんだ。


「それ、俺のクレジットカードだろ⁉」

 確かに俺のクレジットカードがあれば日本で買い物が出来る。でも、そうなると使える金額にも上限が出来てしまう。日本に帰れても、預金がゼロになっていたら悲惨過ぎる。家賃滞納して住む所も無くなっていたら、人生が詰んでしまう。


「お前の物を買うんやから、当たり前やろ。ちょっと準備してくるから、待っとれ」

 ミケはそう言うと姿を消した。そして反論出来ないくらいの正論です。


(えっと残高は九十万くらいだよな。転生した時と同じ時間に戻れなかったら、解雇されるかもしれない。そうなると使える金額は多くないな)

 家賃や光熱費は三カ月分余裕を見ておこう。でも、三カ月も姿が見えなかったら、失踪届けを出されないか。今からどこに行っていたか言い訳を考えておかなくては……誰も探していてくれなかったら、どうしよう。


(しかし、ミケの奴遅いな。多分、あいつの事だから、ニャマゾンとかくだらないボケをかましてくるかもな)


「毎度、三河ニャです。ご用を聞きに来たで」


「そっちかよ⁉」

 ミケは半纏と前掛けを身に着けて戻ってきた。芸が細かいと言うか何と言うか。


「今回入り用なのは、インクとコピー用紙やったな。ちなみに、手数料は高級キャットフードやで。しかし、お前の国のキャットフードは、ほんまにうまいの。にゃんこまっしぐらは嘘やないで」

 いつの間に、キャットフードを買ったんだ?第一、ミケは円なんて持ってないと思うんだけど。待てよ……『なに、ちょっとお前の記憶で必要になった物があったんや。直接、会わんと正確な数字が分からんからの』……このリアル泥棒猫‼


「お前、人の頭から暗証番号を盗んだな⁉」


「きちんと試験運用してからやないと、お披露目出来んやろ。それに異世界に渡るのは、手続きが面倒なんやで。時間制限も厳しいし、これくらいの役得があってもええやろ」

 マジで御用聞きじゃないか。きちんと金は払っているから、窃盗罪にはならないから良しとしておくか。


「ちなみに三河ニャに制限はあるのか?」

 キャットフードが買えるなら、調味料も買える筈。それが無理ならインスタントラーメンか缶詰めを買って来て欲しい。


「そりゃ、あるに決まっているやろ。基本お前のクレジットカードで買える物だけやで。そして食い物は儂等が住んでいる神界までやしか持ち込めへん事になったんや」

 ……マジで?リヤンに改造してもらわなきゃ電化製品は動かない。それなら足漕ぎミシンやモーターはオッケーなんだろうか?


「その条件さえクリアすれば何を買っても良いんだな」

 麹菌は食い物じゃないし、物の作り方が収められたDVDを買ってもらえば、色んな物が製造出来るようになる。足漕ぎミシンなら、電気がなくても動くから大儲けが出来ると思う。


「言い忘れとったたが、三河ニャで取り扱えるのは二種類までんなんや。つまり、お前が買えるのは、インクとコピー用紙のみや」

 こいつ、絶対にわざと後出しにしただろ。確かにインクとコピー用紙より欲しい物があるかって言われたら、即答は出来ないけど。


「分かったぞ。俺が活躍すれば取り扱える品も増えるんだろ?」

 これぞ異世界転生物の王道パターンだ。そうだと信じたい。


「増える訳ないやろ‼お前が色んな技術を導入したせいで、他の神使から苦情がきてるんやぞ」

 ミケの話によると、俺が照明器具を大量生産した所為で、ランプやロウソクの守護を担当していた神使が閑職に追い込まれてしまったそうだ。神界も世知辛いんだな。


「分かった。取り敢えず、インクとコピー用紙を、それぞれ三万円分買って来てくれ」


「毎度あり‼三万円分なら高級キャットフード五千円分が手数料になるで。さーて、今度は舌平目を食うてみよ」

 人の足元を見てぼったくりやがって。しかし、いくら金を積んでも、レコルトでインクやコピー用紙は手に入らない。

 ロッコーさんが、アーシック領の作物が全滅した事を重要視したのには、訳がある。今年のオリゾンは少雨傾向で、どこの領地も作物の実りがよくない。不幸中の幸いなのが殆どの領地で、自領で消費する分は収穫できそうだって事くらいだ。豊作になりそうなのは、溜め池があるボーブルとルラキ湖があるウォーテック領くらいらしい。


「まず手元に配られた資料2を見て下さい。そこには各地の貧民街に新たに移ってきた人種と職種のデータが書いています。これを見て何か気付く事はありますか?」

 帰って来て早々だが、緊急会議を開いている。


「どの貧民街でも、ドワーフが増えていますね。特に今年は農家の方が多いようです」


「サンダ先輩、ボーブルではいつもこんなに詳細な資料を使って会議をなされているのですか?」

 きちんと色分けした円グラフを使ってあるから、グラフ類を初めて見るミューエさんでも一目で分かるのだ。


「ええ、全てジョージ様がお作りになっているんですよ」

 ミューエさんは領主自ら資料を作っている事に驚いているが、こっちの方が俺の本業に近いんだし。入力した数値を各グラフに反映させるプログラムなんて朝飯前である。


「次に資料3に目を通して下さい。ここ数年のアーシック領での職業別人口が書いています」


「農家が激減し、冒険者や兵士が増えていますね。農家で収入を得られらなくなった者が転職したのでしょうね」

 ロッコーさんは既にグラフを使った資料に馴染んでおり、数値から背景を導き出せるようになっていった。


「ええ、テッラ台地でも魔物が増えており、それに比例して土の魔石の輸出額が増えています。外国から食料を輸入しても赤字にはならないでしょうね」

 ただし、今年はとつけなければならない。


「それで地の魔石の相場が下がってきているんだな。市場にだぶついているって事か……このままじゃ、アーシック領の財政が苦しくなるって事か」

 ボルフ先生に至っては、推測もしてくれるようになった。


「そうなれば魔族につけいられる隙が生まれてきます。それにアーシック領に人材はいますから、多分今年も食料の無償援助を頼まれるでしょうね」

 バックに爺ちゃんがいるとはいえ、俺は爵位がない弱小領主。あまり、アーシック家には逆らえない。


「それじゃ、イリス様を救った功績で爵位をもらうのか?」


「今回の功績じゃ男爵止まりだと思います。それに爵位をもらっても、領地は増えません。むしろ、体裁を整える為に出費が増えてしまいます。何より問題の解決になりません。そこで俺は王様に公共事業を提案したいと思います。詳しい内容は別添の資料に書いています」

 国に予算を付けてもらって、アーシック領の農地改革をしてやる。これでボーブルに住んでいるドワーフからの支持率もアップ間違いなし。



活動報告で、カバーイラストとミケのイラストを公開しました。

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