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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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夏休みは遠い昔?

 ようやくパーティーが終わると思ったら、誰かに肩を掴まれた。誰かと勘違いしているんだと思い軽く肩を動かして振り解こうとしてみたが、結構な力で掴んでいるらしくピクリともしない。

 恐る恐る振り向くとそこにいたのは、ホートーとラフィンヌさん。正直、余り嬉しくない組み合わせである。


「き、今日はありがとうございました。お陰でつつがなくパーティーを楽しむ事が出来ました。それではもう夜も遅いので、お先に失礼致します。ホートー様とラフィンヌ様もお疲れを残さないようにして下さい」

 サラリーマン時代の習慣なのか、テンパりながらもご苦労様でしたって言葉は出て来なかった。


「そう焦らなくても良いだろ?……それにここからが本番だ。我々は、王から預かった親書を皇帝陛下にお渡しなくてはいけないのだ」

 しまった、ここはフランクにお先にドロンしますの方が正解だったんだろうか。


「我々とおっしゃいますとホートー様とラフィンヌ様、それに私の母でございましょうか?それでしたら、私は一人で戻れますので、どうぞお気遣いなく」

 国の代表に混じって話し合いなんて冗談じゃない。下っ端は二次会の方が楽しみなんだぞ。


「お前が一番事情に詳しいんだ。さあ、行くぞ」

 ホートーの顔が全く笑っていないのを見て諦めがついた。

(詳しいって言われても前世の事を言う訳にいかないし、ミケの事も伏せて置きたいんだよな)

 そうなると使えるカードは、マエストロ・グライツァーやフーマ三姉妹に会った事くらいだ。ここは魔族と思わしき者を見かけましたで通すか。

 人間とは思えねえ魔力、あれは絶対に魔族だ。オラ本当に見たんだよ……これじゃ、UFOを目撃したアメリカの農夫だよな。


「カリナ、悪いけどちょっとの間だけジョージ君を借りて行くわね。もし、悪い虫が寄ってきても魔法で追っ払っておくから安心して」

 聞いた話ではラフィンヌさんは一流の魔法使いらしい。共和国制であるランドルでは爵位より才能が重要視されるとの事。ランドルの貴族は地位を確保する為に、必死で修練するそうだ。


「ラ、ラフィンヌ様‼ジョージしゃまは、あたいのもんじゃにゃいです」

 ラフィンヌさんは、顔を赤らめながら噛みまくるカリナを見てニヤニヤと笑っている。種族も地位も違う二人だけど親しい友人になれたようだ。ランドルでは家族もライバルと言うらしい。気を使わずに会話を楽しめる関係が、ラフィンヌさんは楽しいんだと思う。

 軍人に案内されて着いたのは、飾り気のない部屋。王様の部屋ってより作戦本部と言った方がしっくりくる。


「皇帝陛下、オリゾン王より預かって参りました親書にございます。どうか、お納めください」

 ホートーが、うやうやしく差し出した親書を一読すると、皇帝は深い溜め息をついた。その顔には悲壮感が漂っている。


「先刻、アルメー様より命令が下された。魔王軍、再出現の兆しあり。軍備を整えよとの事だ。オリゾン・ランドル・フェルゼン三国の同盟強化が必要だ。オリゾン・ランドルに対し親書したためるので、しばし待て……オリゾンはロカ・ペタロの処断に何か希望はあるか?」

 他国との戦を扇動したんだ。普通なら死罪が妥当だと思う……でも問題はペタロ領がグルウベと隣接しているって事だ。

(ロカに死罪が言い渡されたら、ブリスコラはペタロ伯爵を離反させてグルウベに組み入れるだろうな)

 今回の事でペタロ家は国内に多くの敵を作ってしまった。まずは孫イリスを奴隷にされたファルコ伯爵、次男ベガルが大恥をかかされたコルエシオン公爵。俺でもジンガは敵に回したくないと思った。だからフェルゼンの貴族でペタロ家に味方する人は皆無だと思う。それに警戒態勢を取った事による経済的損害も大きい。

 ペタロ伯爵が離反を決意する可能性は十分にあると思う。問題はペタロ領がフェルゼンの首都と一本の道で繋がっているって事だ。つまりペタロ領を取られたら、フェルゼンは首元にナイフを突きつけられた感じになる。

(さて、ホートーはどんな答えを出すんだろうな)


「特にありませんよ。多分、ロカ様は悪霊か何かに取り憑かれたのだと思います。もしくは幻聴が聞こえてくる病気に掛かられたのでしょう。しばらく政務から離れてお休みになるのをお勧めいたします」

 そうきたか。悪霊に取り憑かれたり、幻聴が聞こえるようになったりした者は政務から外されてしまう。早い話がロカを飼い殺しにしろって事だ。


「さすがはオリゾン王の懐刀と呼ばれるだけあるな。サージュ・ルーナはどうするつもりだ」

 サージュは騙されたと言っても過言ではない。黒幕のロカが殺されないなら、サージュも殺さないんだろうか?


「死罪ですよ。まあ、国が殺さなくてもナイテック家が処断しますからね。どうせ死ぬなら責任を取らせた方がましです。ただ、ルーナ商会を潰すのだけは、勘弁してもらえますか?」

 今サージュは国の牢屋に入っているから、ナイテック家も手を出せない。でも、牢屋から解放された瞬間から、常にアサシンに命を狙われてしまうのか……サージュ、牢屋から出たくないだろうな。


「ホートー殿は奴隷推進派なのか?」


「私はどの派にも属していませんよ。ただ、主がいない奴隷の処分が面倒なだけです。賠償金はサージュの私財から出させます」

 サージュ一人が死刑になれば、ルーナ商会の誰かが後を継ぐ。もし、ルーナ商会を潰してしまったら、奴隷の面倒は国が見なきゃいない。隷属の首輪を外すにしても、コストが莫大に掛かってしまう。何より奴隷の扱い方で、各派閥から不満が出てしまう。


「サージュに賠償金を払わせたら、その倍近い金をペタロ家が払わなくてはいけなくなるな……最後にシャルル・ファルコの扱いだがどうしたら良いと思う?」

 この皇帝さん、武断派かと思っていたが中々したたかだ。自国の民の処罰をホートーに決めさせて、怨みの矛先を変えるつもりだな。二人の会話は為政者として、大いに参考になる。


「ジョージ、お前はどう思う?」

 勉強しようと思っていたら、ホートーからキラーパスが飛んできました。ホートーの果断な処断と違う玉虫色の提案をしてやる。


「そうですね。三国以外の国に嫁がせてはどうでしょうか?出来ればフェルゼン帝国と国交があり、強力な海軍を持っている国が良いと思います」

 オリゾン・フェルゼン・ランドルのどの三国に嫁いでも、ロカの影が付きまとう。それなら、誰もシャルルさんを知らない国に嫁いだ方がましだ。何より強力な海軍を所有していれば、いざって時に援軍に期待出来る。


「しかし、そんな好条件な相手がいると思うか?外に聞こえてくるのは、都合の良い話だけだぞ」

 嫁いだは良いが、相手がろくでなしだったなんて笑えない。そうなるとシャルルさんは、ロカに固執してしまいフェルゼンとの仲が悪化しても良好にはならないだろう。


「私はギリアム商会と懇意にさせてもらっております。ギリアム商会に命じ、シャルル様にピッタリな相手を探させてはいかがでしょうか?」

 ギリアム商会は各国に支店があり、その国の内情にも詳しい。ついでにミケに頼んで良縁を授けてもらえば大丈夫だろう。


「ホートーがオリゾン王の懐刀だとすれば、ホートーの懐刀はジョージなのだな」

 いや、勘弁して下さい。この刀は、ストレスに弱くて案外脆いんですよ。切れ味も良くないし、不人気ブランドですからお勧め出来ません。


「ええ、中々使い勝手が良い奴です。ただ、私と一緒で世間の評判はあまり良くないですが……宜しかったら皇帝陛下もお目を掛けて頂けませんか?」

 こういうのは本人の意思も大事だと思います。赤衣の馬鹿息子と揶揄されるホートーの評判は余り良くない。特にマリーナみたいな真面目人間からは嫌われている。


「よろしくも何もアルメー様からも同じ事を命じられた。ジョージ・アコーギに目を掛けるようにとな」

 ……絶対にミケの仕業だ。これ以上仕事や軋轢が増えれば、ダウンしても知らないぞ。本物のジョージに謝っておこう。色々と面倒に巻き込まれているし、大好きなマリーナとの仲は最悪と言っていいくらいにこじれているけど、きちんとバトンを受け取ってね。

 ◇

 ようやくだ。ようやくオリゾンに帰れる。ズィーガーの港には、今回の旅で知り合った人たちが見送りに来てくれていた……俺の知り合いはファルコ伯爵だけだったりする。


「ジョージ殿、今回は本当にお世話になった。私に出来る事があったら、何時でも言ってくれ」

 それでしたら、俺がフェルゼンに滞在した痕跡を消して下さい。不気味な事にブリスコラは沈黙を保ったままだった。自分の企みを潰したのが誰か探っているのだろうか。俺の表向きの役割はホートーの付き添いだったから、見逃してくれたら嬉しいんだけど。


「そうだ。今度ボーブルに新しい店がオープンするんですよ。サユリさんって人がママをしてくれます。よろしかったら、来て下さいね。サキュバスなのに老けていますが、話が面白いからきっと気に入りますよ……昔の男に操を立てて他の男の精を吸わないなんて奇特ですよね」

 サユリママが長老に選ばれたのは指導力が高かったかららしい。年が一番上だからではないって力説していた。

「……今さらどんな顔をして会えと言うのだ。私は彼女を捨てて、家を取ったのだぞ」


「爺さんになった顔を見せればいいじゃないですか……きっと待っていますよ」

 ファルコ伯爵に店の情報をメモした紙を手渡す。そのまま踵を返して、フライングシップに向かうと、不安気な顔をしたサンダ先生とすれ違った。俺とすれ違った事に、気付かないくらいオロオロしている。


「お前、サンダにミューエが来る事を教えてないだろ?全く、悪趣味だよな」


「言ったら全力で反対されますからね。ミューエ・レオパルドの兵を指揮する力はボーブルに必要なんですよ……もっとも、彼女を一番必要にしているのはボーブルの真面目神官みたいですけど」

 ミューエさんがいれば軍事力がアップするだけでなく、働き過ぎなサンダ先生のストレスも解消されると思う。フェルゼンとの繋がりも出来るから良い事ずくめだ……問題はますます女性陣が強くなってしまう事。

 ちなみに、ミューエさんの荷物は昨夜の内に積み込んである。今は家族や部下と別れを惜しんでいる頃だと思う。


「ジョージ殿、お待たせした。ミューエ・レオパルド、皇帝陛下の命により、本日付でボーブルの軍事顧問となる」

 サンダ先生は余程、驚いたのか口をパクパクさせている。それを見て顔を赤らめるミューエさん。


「よろしくお願いします。詳しい事は内政担当のサンダ・チュウローと話して下さい……サンダ先生、お願いしますね。それじゃ、みんなしてボーブルに帰りますか」

 思ったより、早く解決出来たので夏休みを利用してワノ国に行ってやる。

「ジョージ、水道が壊れたよ」


「マジかよ、パッキンがいかれてやがる」

 ゴムのないオリゾンで、パッキンを再現するのは至難の業……ワノ国が遠のいた。


 ◇

 ボーブルに着くと、城の皆が笑顔で出迎えてくれた……特にロッコーさんとリーズンは最高の笑顔でした。


「不在中に溜まった書類とミューエ・レオパルドの雇用に関する書類。サキュバスが運営する娼館とスナック開業に関する書類。それと開港準備の書類です。頑張って下さい」

 リーズンが笑顔で書類を積んでいく。


「ジョージ殿、軍改正に関する書類だ。サンダ先輩とすり合わせて作ったから完璧だぞ」

 ドヤ顔で書類を見せるミューエさん。サンダ先輩の件は甘さ全開です。

 きっと本当の俺は小学校五年生で、これは夢なんだ。起きたらスイカを食べて、プールに行くんだ。そして好きな女の子の水着姿を見てドキドキして、夜は花火をする……そうだ、きっとそうなんだ。


「ジョージ、ファルコ伯爵が来週ボーブルに来るってよ」

 そして俺の現実逃避を木っ端みじんにしてくれるボルフ先生。今日もボーブルは賑やかです。


「決断早過ぎでしょ?俺の休みがまた潰れますよね」

 嘆いている俺にロッコーさんが近付いてきた。きっと事務処理を肩代わりしてくれるんだ。


「ジョージ様、溜め池の水があったお陰で、ボーブルの作物は無事に成長出来ております……ただ、アーシック領の作物は全滅のようです」

 夏休み返上で対策を練らなきゃ駄目かな。


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