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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ノンデレミューエ?

 目的地も近くなったので、飛行モードから航行モードに変えて進んでいる。今回の目的地はレオパルド領の領都ズィーガー。フェルゼン最大の港町で、帝国海軍の基地があるそうだ。

 普段なら絶対に近付きたくない町である。ミューエプラス海軍なんて、俺からしたら即死コンボみたいなものだ。

(サメに囲まれたフグって、こんな気持ちなんだろうな)

 ちなみに俺の警戒心はパンパンに膨れ上がり、今にも張り裂けそうだ。でも、おかしい。これも黒幕の仕業なんだろうか?


「ジョージ様、朝食をお持ちしまた。スピードが上がっていませんが、何かありましたか?」

 振り返ると、トレイを持ったオデットさんが立っていた。トレイには、焼き立てのトーストと、並々とお茶が注がれたカップが乗っている。ちなみに足音も気配も皆無です。俺もアサシンの修行をして、気配察知には自信があったけど全然気付かなかった。


「オデットさん、これを見て下さい」

 パネルの一つを指さして、オデットさんに見てもらう。オデットさんは、トレーに乗ったお茶を一滴もこぼさずに、モニターを覗き込んだ……バランス感覚もチートなんですね。


「中心に緑の点があり、周囲に赤い点が五個ありますね。これは、なんですか?」

 赤い点は緑の点を囲むように動いている。この緑の点が、俺の警戒心を刺激しているのだ。


「これはレーダーって道具なんですけど、緑はこの船、赤いのは近くにいる船を現しています」

 オデットさんはレーダーを再確認すると、外に視線を移した。目視で確認出来るギリギリの所に数隻の船が見えている。


「商船や漁船に偽装していますが、フェルゼンの軍人が乗っていますね。望遠鏡でこちらを見ています……何時からですか?」

 オデットさん、目視で確認したんですか?もし、オデットさんがゲームに登場したら、バランスブレイカーキャラとしてネットを騒がせていただろう。


「レオパルド家の領海に入ってからずっとですよ」

 最初はただの偶然かと思ったが、数隻の船が入れ替わり立ち代わりずっと付いて来ているのだ。余りにも、しつこくて俺には獰猛なサメにしか見なくなっていた。


「おかしいですね。イリス様の件は、まだフェルゼンから公表されておりません。このタイミングで、他国の船を圧迫するのは、愚策でしかありません」

 オデットさんの言う通り、船に他国のお偉いさんが乗っていたらクレームがつくような行為である。


「恐らく黒幕が『イリス様は、他国にかどわかされた。これ以上、被害が出ないように最大限の警戒をするべきだ』とか煽ったんでしょうね」

 でも、そうなるとシャルルさんが黙っているとは思えない。何とかミューエの力を借りて裏付けをとらなくては……警戒されまくって、最悪な状況なんだけどね。


 ◇

 もう少しで港に着くというタイミングで、一隻の船が航路に横入りしてきた。これが帆船だったら、確実に衝突していただろう。まあ、どう見ても普通の船じゃないから、警戒されていたって話もあるんだけど。

(両手を上げて、そのまま停まれってか。随分と無茶するな)

 艦内一斉放送のボタンを押して、マイクを握る。


「予想より早かったですけど、向こうが動きました。ホートー様とラフィンヌ様は、入り口付近で待機していて頂けますか?サンダ先生、ボルフ先生、オデットさんはいざって時に備えて下さい……ヴェルデ、行くぞ」

 ホートーとラフィンヌさんは、奥の手だ。俺とヴェルデで乗り切れれば、不幸中の幸いである。

 正に命懸けの場と言って良いだろう。昔の俺ならビビって何も出来なかっただろう。でも、転生してから幾つもの難局を乗り越えてきた。いざ、修羅場に突入だ‼

 ……あれ?コクピットを仕切っているカーテンを開けると、そこには何故か母さんがいた。


「あれ、母さんなんでここに?」


「私は副代表である貴方の保護者よ。いない方がおかしいでしょ」

 それはそうだけど……母さんの出番を作らなきゃ良いんだ。甲板に続くドアを開けたら、フェルゼンの兵士が橋を渡していた。


「緊急時に付き船内を改めさせてもらう」

 緊急時だからか、はたまた愛国心が高ぶったせいなのか、フェルゼンの兵士は命令口調で話し掛けて来た。母さんの口が一瞬だけニヤリと緩んだのが見えた。


「この船の所有者が誰なのか知っての行いですか?この船は爵位がないとは言え、ボーブルで領主をしている我が息子ジョージ・アコーギの船です。つまり船上は、ボーブルの領地と同じ、許可もなく踏み込んで良いとお思いですか?」

 母さんの一喝が甲板に響く。さすがのフェルゼンの兵士もたじろいでしまう。


「しかし、これは役目でして……」


「息子ジョージはオリゾンの王家からある大役を仰せつかっております。これは私の父ローレン・コーカツも承知してのお役目です。つまりこの船に無断で入り込むのは、ローレン・コーカツの顔に泥を塗るのと変わりません。貴方にそれだけの権限があるのですか?」

 兵士さん涙目です。怪しい船に踏み込んだら、同盟国の貴族が乗っていたなんて運が悪過ぎだろ。ちょっとだけ同情してしまう。そういや母さん、俺が爺ちゃんの所で、政務の勉強をしている時、色んな勉強をしたって言ってたもんな。 


「じ、上官に報告だけさせて下さい。それとフェルゼンは今色々取り込んでおりますので、あまり派手に動かないでもらえますか?」

 さっきまでの強気な態度は、どこへやら兵士は母さんに懇願してきた。本来なら、あの兵士は母さんに話し掛ける権限さえないのだ。多分、母さんは兵士の強気な態度を見て手玉に取れると踏んだのだろう。だから一瞬、口を緩めたのか。そう嬉しくて、思わず緩んでしまったのだ……さすがローレン・コーカツの娘である。


「取り込み?何か困っておいでなら、協力いたしますわよ」

 何も知りませんわって感じで、しれっと言う母さんが怖い。


「な、なんでも御座いません。ようこそフェルゼン帝国へ、ごゆっくりしていって下さい」

 全部が終わったら、あの兵士に何かあげよう。胃に優しい食べ物が良いと思う。

 ◇

 港には何艘もの軍船が停泊しており、物々しい雰囲気を放っている。

 王族と貴族が四人も乗っていたお陰か、入国手続きは簡単に済んだ。

 そして今はギリアム商会ズィーガー支店を通じてミューエに連絡を取ってもらっている。

 ボーッと海を眺めていたら、港に軍靴の音が響いてきた。現れたのは総勢三十人程の女性の集団である。全員軍服と軍帽を身に付けており、全員物々しい雰囲気を放っている。集団はフライングシップの前で立ち止まったかと思うと、一人の女性が歩み出てきた。


「自分の名はミューエ・レオパルド。ジョージ・アコーギはいるか?」

 ミューエは鋭い眼光でフライングシップを睨み付けている……マジで怖いっす。でも、指名されたからには顔を出さない訳にいかない。


「ジョージ、あいつがミューエか。しかし、愛想のあの字もねーな。サンダってドМなのか?」

 いつの間にか後ろに立っていたボルフ先生がポツリと呟く。

 ゲームにも似たような展開があった。ミューエは女性中心にパーティーを組んでいる主人公に対して辛辣な態度を取る。その所為か、ミューエはパーティー内で孤立していく。それを見かねたヴァネッサが『そんなに怖い顔をしているから、皆に避けられるんだよ。もう少し笑顔で話してみなよ』と提案されるのだ。

 しかしミューエは「軍人に愛想も笑顔も不要だ。女だからと言って、笑顔で媚びる必要はない」とにべもなく拒否する。その後、都合良くイベントが起きて、人間関係は改善されていく……ちなみに、俺は相手が誰であろうと、愛想良く接する。愛想も言葉も元手は掛からない。無料でトラブルを避けられるのなら、いくらでも媚びへつらう。


「一応、私が艦長をしておりますジョージ・アコーギです。オリゾンにあるボーブルという小さな町で領主をしております」

 愛想笑いを浮かべながら、ミューエにペコペコと頭を下げてみせる。


「ミューエ様に無礼だろう。きちんと爵位を述べよ」

 情けない態度が気に入らなかったんだろうか。ミューエの後ろにいた少女が俺を怒鳴りつけてきた。吾輩は貴族である。爵位はまだない……このネタは異世界で通じないか。


「お前がジョージ・アコーギか?自分はお前のような卑怯者が嫌いだ」

 まさか初対面で、その台詞を言われるとは思いませんでした。気合を入れて心を強く保つ。


「あの、身に覚えがないんですけど」

 少なくとも、マリーナを束縛した事はない。放置し過ぎだって、ホートーに突っ込まれたけど。


「嘘を付くな‼権力を使って、サンダ先輩のビロードのように美しい体毛をモフったんだろう。そして、膝に乗ってナデナデしてもらったのだろう。うらやま……けしからん‼」

 ……えーと、あの人は何を言っているんだろうか?ミューエは余程悔しいのか、地団駄を踏んでいる。


「ジョージ、サンダを呼んで来るぞ……厄介なのが増えそうだな」

 ボルフ先生は乾いた笑いを浮かべながら、船内に戻っていった。ミューエはケモナーでしたって、オチは勘弁して欲しい。


「何を根拠にそんな事を言うのですか?」


「貴様は、サンダ先輩の魅力に気付かないのか?海のように深く広い心。猿人の男なんか比べ物にならない強靭な体。それでいてオリゾン有数の頭脳の持ち主なんだぞ。しかも、硬派で真面目な性格。あれほど優れた男せ……人材が他にいると思うのか?自分がサンダ先輩を配下に加えていちゃモフライフを送りたかったのに‼」

 拳を握りしめてサンダ先生の魅力を語るミューエさん。確かにサンダ先生は優れた人物だ。しかし、大恩がある俺でも、あそこまで熱弁を出来ないぞ。


「ミューエ‼久し振りですね。元気にしていましたか」

 ボルフ先生に呼ばれてきたサンダ先生がミューエを見つけて声を掛ける。ミューエの熱量と違い、こちらは平常運転である。


「醜いオークがミューエ様を呼び捨てだと」

 さっきの少女が今度はサンダ先生に向かって怒声を上げた。すると何故か後ろにいた女性達が少女との距離を取りだした。全員、顔を青くして何かに怯えている。


「サ、サンダ先輩もズィーガーにいらしたのですか?仰っていただけたら、お迎えにあがりましたのに……貴様、今サンダ先輩を醜いと言ったな⁉覚悟は出来ているんだろうな」

 ミューエの目がやばい。殺気全開で、例の少女を睨み付けている。つうか、さっきの乙女モード全開のミューエはなんだったんだ。


「ギリアム商会に連絡を頼んだのですが、行き違いになったかも知れませんね。猿人の女性から見たら私は醜いオークです。その娘を責めるのは可哀想ですよ……それよりミューエにお願いがあります。こっちに来て頂けますか?」


「はい、喜んで……お前達は、そこで待機していろ」

 ミ、ミューエがでれている。あれか、サンダ先生を好きだから、誰にもデレなかったのか。そして女性である事を否定し、優秀な軍人であり続ければ政略結婚させられる事もない。

 ◇

 杞憂ってこういう事を言うのかも知れない。ミューエは敬愛するサンダ先輩の話なら無条件で信じてしまうようで、こちらの話を微塵も疑わなかった。そして無事にイリスさんとの面会も終了。一番警戒していたミューエが味方になってくれて、ようやく一息つけた。


「ミューエさん、最近シャルル様に接した怪しい人物はいないですか?」

 ちなみにミューエさんは、サンダ先生の隣をちゃっかりとキープしている。


「……イリス嬢の件は自分も色々と調査している。一番怪しいのはシャルル嬢の婚約者であるロカ・ペタロだな。ロカはグルウベから来た人物を師と仰ぐようになってから、人が変わってしまった」

 ペタロ家の爵位は伯爵で領地がグルウベと隣り合っている関係から、ある程度の交流があるそうだ。


「そいつの名前とかは分かりますか?」

 サンダ先生絡みの疑惑が解けてから、ミューエの態度がかなり軟化した。


「ブリース・コランドと名乗っているが、本名かどうかも怪しいな」

 魔王軍総司令ブリスコラ、異名は甘言のブリスコラ。もう少し上手い偽名はなかったのかよ。ミューエをクリアしたら、もっとたちの悪い伏兵が出てきました。まさかのリアン様の力で魔王軍とも縁が深くなったんじゃないよな。


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