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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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狸小僧も成長しました?

 爺ちゃん達が王城から帰って来るまで、ある程度時間に余裕が出来る。俺はその間、少し休ませてもらおう。体力も限界に近いが精神的な疲れもマックスで、今直ぐにでもベッドにダイブしたい。

 城に向かおうとしたら、誰かに肩を掴まれた。


「ジョージ、どこへ行く?お前も王城に行くんだぞ」

 俺の肩を掴んだのは爺ちゃんだった。冗談だよねと言おうとしたが、その目は全く笑っていない。ガチなんすね。


「一休みしてからじゃ、駄目かな。さすがに疲れたし……爵位のない俺が何回も王城に行くのは、あまり良くないんじゃないかなかと」

 この状態で王様に会ったら、緊張とストレスで気絶しかねない。それにこの展開は、絶対に重大な任務を任せられる流れだ。俺はフライングシップの操船者で勘弁して欲しい。


「緊急時だ。何より時間がない。ゴーレム馬車を使うぞ」

 緊急時なら王城に行かないで、このまま出発すりゃ良いじゃん……まあ、俺がフライングシップを、手に入れる確証なんてどこにもなかった。事が事だけに、確実に物事を進めたいんだろう。

 そしてそのまま有無を言わせず、コーカツ家のゴーレム馬車に放り込まれた。しかも両脇をコーカツ家の騎士ががっちりとガードしている。


「小僧、有事だ。つべこべ言うな。馬車の中でフェルゼン行きの計画を練っておけ」

 イジワール公爵、俺を買い被り過ぎていませんか?今までは前世の知識を使えたから、何とか誤魔化せていただけで、今回の事件を円満に解決する自信なんて全くないんですけど。


「ジョージ、王城に着いたら直ぐに対策会議を開くぞ」

 このままだと確実に会議に出席するはめになる。会議の参加者は爺ちゃんやイジワール公爵みたいな現役バリバリの為政者ばかりだろう。

 どう考えても、俺の出る幕じゃない。お茶くみや資料配りくらいしか出番はないと思う。しかし、会議に出ておいて何も対案を出さないのは、それはそれで不味い。六十点くらいの案を出して、お茶を濁してやる……百点満点の回答なんて出せないけど。

(一番の問題はフライングシップが目立ち過ぎるって事だ。最低でも、何かに偽装しなきゃ不味いか。フェルゼンに行くお題目がありゃ良いんだよな)

 お約束だけど商船に偽装するのが、無難だと思う。ギリアム商会なら、フェルゼンとの取引があるし融通も利く。

(ヴェルデには内緒にしないとな。あいつ変に義理堅いところあるし)

 今回は、一歩間違えば死刑台に招待されかねない事案だ。わざわざ才能ある若者をき込む必要はない……凡才(おれ)はがっつりと巻き込まれているけど。

 ◇

 不味い、太ももでもつねっていないと、プレッシャーで意識が飛んでしまいそうだ。

(オリゾンオールスター大集合かよ⁉)

 国際問題だけに会議の出席者は、物凄い顔ぶれだった。

 オリゾン王アヴニール・オリゾン、オリゾン第一王子シェーン・オリゾン、王族ホートー・オリゾン、ハイドロ教教皇リップル・ウォーッテク、コーカツ公爵家当主ローレン・コーカツ、イジワール公爵家当主キョーユー・イジワール、どの人もオリゾン有数の政治家だ。俺の場違い感が半端じゃない。

 ゴルド公爵やナイテック家が呼ばれていないのは、今回の黒幕が確定していないからだろう。


「ホートー、頼む」

 爺ちゃんから聞いた話によると、ホートー様は王様の懐刀的存在らしい。遊び人のふりをしながら、怪しい場所や気になる人物を探っているそうだ。ボーブルに娼館を建てさせたのは、外国の要人を接待する為との事。そして、ついでに俺の人となりを探っていたらしい。でも、娼館で遊びまくっているのも事実だったりする。


「はい、皆さまご存じの通り、先日ジョージ殿がルーナ家の商館で奴隷にされていたイリス・ファルコ様を保護されました。コーカツ卿とイジワール卿の調査の結果、イリス様を商館に売った男が王都からゴルド公爵領へと向かった事が分かりました。このままでは遅くても二週間後には、ファルコ伯爵の耳に入るでしょう」

 お約束だけど、男はローブを目深に被っており、容姿が分からなかったそうだ。ついでに王都で名乗っていた名前も偽名との事。


「幸い、孫のジョージがフライングシップを手に入れたので、今から出発すれば十分間に合うかと。しかしフライングシップの操船はジョージにしか出来ないようなので、操船は孫に行わせます」

 爺ちゃん、余り俺の名前を出さないで。俺はあくまで操船手、政治的な事に介入する気は一切ない。


「イリス嬢をファルコ伯爵の所へお連れしても、疑惑は解けないのではないですか?確かにフライングシップがあれば早く着けますが、港で怪しまれるかと。無事に入港出来たとしても、我々の話を聞いてくれる者がいなければ意味がありません。イリス嬢には隷属の首輪が付いたままだと聞いております。何より我々にはフェルゼンとの私的な交渉窓口がありません」

 どうやらリップルさんは俺が関わる事が不安らしい。そりゃそうだ、知らない人からしたらただの中坊なんだし。


「ジョージ卿、説明を頼む」

 イジワール公爵から避けようのないキラーパスが飛んできた。普段は小僧呼ばわりしている癖に、ここで卿付けはずるいと思います。


「フェルゼンとの交渉は私の配下サンダ・チュウローの大学時代の友人にお願いする事にしました。フライングシップはギリアム商会に協力を依頼し、商船の名目で入港しようと思っております。実際に荷物を積めば怪しまれないでしょう。それと隷属の首輪は、敢えて付けたままにしておりますので」

 そのまま話を終えようとしたが、爺ちゃんとイジワール公爵がネタばらしをしろと、目で訴えている。仕方なく説明をすると、リップルさんも納得してくれたようだ。ああ、どんどん深みにはまっていく。


「それではフェルゼン行きのメンバーを告げる。代表者はホートー・オリゾン、副代表はジョージ・アコーギ、随伴員は内情に詳しいジョージに任せる」

 王様、俺が副代表って冗談ですよね?確かに何かあっても、国に及ぼす被害が少ないのは俺だけど。


「王様、副代表をお受けするのには、一つだけ条件があります。それを聞いてもらえますか?」

 みんなの目が空気を読めって言っているが、ここは自分の意見を貫き通す。これが通らなきゃ、俺はフライングシップを動かさない。


「なんだ?申してみよ」


「私にもしもの事があったら、ボーブルをコーカツ公爵の領地に編入して下さいませんか。ご存知かと思いますが、我がボーブルには様々な人種が暮らしております。しかし、父アランは生粋の猿人至上主義者。とてもボーブルの民の暮らしを任せられません」


「分かった。ローレン、良いな」

 これは前から考えていた事だ。俺は未だになんでレコルトに転生したのかが分からない。逆に言えば、いつ日本に戻っても不思議はないって事だ。本当のジョージがゲーム通りの人物だったとしても、爺ちゃんならうまく操ってくれるだろう。

 ◇

 ギリアム商会には、会議の後直ぐに命令を送ったそうだ。今はギリアム商会からの返事とホートーの準備を待っている。

(随伴員は誰にすっかな。サンダ先生は確定だし、ボルフ先生も護衛として付いて来てほしい。問題はホートーとイリスさんの身の回りの世話をする人間だな。イリスさんの世話をするのは女性じゃなきゃ駄目だけど、ホートーの遊び癖を考えるとな)

 高級娼婦を連れて行けば良いんだけど、イリスさんの事を考えると得策には思えない。ホートーの食指が伸びないベテランメイドさんを連れて行くのがベストか。


「ホートー様、今年の夏は(わたくし)と過ごしてくれると、仰られたではないですか?」

 思案に耽っていると、少女の叫び声が聞こえたきた。ここは王城だ、出来るだけ私語を慎むのがマナーである。

(ホートーの奴、デートの約束をおじゃんにしたのか)

 でも、同情はしない。これは大事な仕事なのだ。遊び人なのにモテまくる王族なんかには同情する気はない。


「ラフィンヌ殿、先ほども言ったように、王から勅命が下りまして」

 ホートーが、見知らぬ少女に詰め寄られ困り果てていた。十代後半と思われる少女は、高価なドレスに身を包んでおり、身分の高さが窺い知れる。腰まであるプラチナブロンドの髪が艶々と輝いていた。

(綺麗な顔をしているけど、随分と気の強い娘だな。見た事がない顔だけど、誰だろう?)

 ホートーと対等に話せる人間は限られているけど、あの少女は一度も見た事がない。高貴な女性なのは確実だから、鑑定もし辛い。


「ジョージ様、あのお方はランドル共和国の公爵令嬢ラフィンヌ・ランドル様ですよ。ホートー様の婚約者でございますよ」


「ヴェルデ、何でここにいるんだ?」

 俺に声を掛けてきたのは狸小僧(ヴェルデ)だった。普段でも王城に入れないこいつが、緊急時にいるのはおかしい。


「呼ばれたからに決まっているじゃないですか。ギリアム商会におけるジョージ様の担当は僕ですよ。それなのに父や兄が同行したら怪しまれます。なにより、多くのお偉方に顔を覚えていただけるこのチャンスを逃す訳にはいきませんよ……これはこれはラフィンヌお嬢様、お久し振りでございます。この間、お納めさせていただいただドライヤーの調子はどうでしょうか?」

 ヴェルデはそう言うと、揉み手をしながらラフィンヌさんに近付いていく。ラパンさんが相手だと顔を真っ赤にして一言も話せない癖にランドルの公爵令嬢には臆する気配すら見せない。


「あら、ヴェルデ君お久し振りね。私は髪が長いからドライヤーは重宝してるわよ」


「それはお役に立てて嬉しい限りでございます。少し、ホートー様をお借りしてもよろしいでしょうか?」

 そう言ってヴェルデはホートーを隅っこの方に連れて行った。


「おい、狸小僧どうしたんだよ……いやいや、勘弁してくれ……そりゃそうだけど……分かったよ」


「ラフィンヌ様、これから私達とフェルゼン帝国に行きませんか?ここにいるジョージ・アコーギ様が伝説のフライングシップを手に入れたんですよ。詳しい話はホートー様からお聞きになって下さい」

 おいおい、この子狸は何を言っているんだ?フェルゼンに加えてランドルとの仲も悪化しちまうぞ。


「おい、ヴェルデ‼何を考えているんだ?」

 確かにラフィンヌさんがいればホートーの悪癖を抑える事が出来る。でもラフィンヌさんに何かあったら、大問題だ。


「商人が考えているのは、利益だけですよ。オリゾンとランドルの王族が乗っていれば、フェルゼンも迂闊には手出しは出来ません。何よりラフィンヌ様が証人なってくれますし……僕みたいな三男坊がなり上がるには、多少の博打は必要なんですよ」

 そう言うヴェルデの顔は驚く程、大人びていた。男子三日会わざれば括目して見よってか。それに比べて(おじさん)は成長してないよな。


(確かに交易の船に王族(ホートー)が乗っていたら不自然だ。それにカーテンか何かで区切って、ラフィンヌさんが寝室として使っていると言えばフェルゼンも迂闊には踏み込めない……これでイリスさんの存在も隠せるな)


「それで積荷は何にしたんだ?」

 この子狸の事だ。この件でちゃっかりと利益を上げるだろう。


「積荷は何でも良いんですよ。ギリアム商会が、ホートー様とラフィンヌ様の極秘婚前旅行に協力しているって形にしたいので。でも、イリス様の事を考えると同年代の女子に乗って欲しいですね」

 そうは言っても一般人を面倒事に巻き込む訳にいかない……ここはヴェルデの弱点を突いて有耶無耶にしておくか。


「それじゃ、ラパンさんを呼ぶか?確かお前の所でバイトしてるんだろ?セリューには俺から言っておくし」


「ふぇっ‼何でコニーさんが出て来るんですか?」

 顔を真っ赤にしてテンパりまくるヴェルデ。おじさん、なんか安心したよ……ラパンさんじゃなく、コニーさんね。旅でいじってやろ。


活動報告に書籍化についての追記がいくつかあります

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