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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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フライングシップ、無事起動?

 花山さん、初敗北です。ヴェント谷にはゲームと違う所がありました……これをリアルに再現したら十八禁ゲームになっちゃうけど。

(グ、グロ過ぎる。それにこの臭い……鼻が曲がりそうだ)


 ゲームでのヴェント谷は、小鳥達が舞う緑豊かな美しい渓谷だった。実際のヴェント谷も緑が豊かで、風光明媚な場所だ……余計なオプションさえなければ、心が洗われたと思う。

「ガァガァーガギャー‼」

 見上げると上空を旋回するヘルクロウ。横を見るとゴブリンの死体をついばみまくっているデスコンドル……ヴェント谷にいたのは可愛い子鳥ではなく、迫力満点な恐鳥さん達でした。


「死者の森やイグニス荒野と違って、随分とゴブリンの死体が目につきますすね」

 冒険者に必要なのは魔石であり、素材の取れないゴブリンの死体がそこら中に放置されている。その所為で、腐臭と死臭が混じり合ったえげつない臭いがしていた。


「死者の森で死んだ魔物はアンデッドになるんですよ。イグニス荒野の魔物は肉も食べますが、恐鳥類は内臓を主に食べるので、死体が残るのです。私としては、気候があまり変わらないヴェント谷とイグニス荒野で植生が違う事の方が気になりますね」

 サンダ先生の言う通り、ヴェント谷とイグニス荒野の気候に殆んど変わりはない。でも、丈の短い草しか生えていなかったイグニス荒野と違い、ヴェント谷の草木は鬱蒼と生い茂っている。


「イグニス荒野には火を吐く魔物が多いから、丈の高い草や木は燃えてしまうんですよ。結果、丈の低い草が多く生き残ったんじゃないでしょうか?それとヴェント谷には雑食性の魔物が多く住んでいると聞きます。魔物は知らず知らずのうちに、植物の種を運んでいるんでしょうね」

 あの魔物の死体はやがて朽ち土へと還っていく。そこには新たな植物が芽吹くのだろう。戦う力を持たない植物だが、したたかに魔物を利用して生き残っていた。ちなみにリーズンから聞いた話によると、イグニアには前時代の遺跡と思われる地下水路があるそうだ。水源は地下水脈だそうで、最終的にはイグニス荒野へと流れていくらしい。


「二人共、頭が痛くなるような考察はその辺にして、フライングシップを探しに行くぞ」

 ちなみにカカリさんは安全を考慮してサンダ先生のローブに潜んでいる。ローブから顔だけ出す妖精。字面にすると萌える要素しかないのに、現実は非情である。オークプラスおっさん妖精では、かなりのマニア以外は萌えないと思う。

(ここはハーピーに期待しよう。不謹慎だけど俺にも癒しは必要なのだ)

 たまには目の保養をしても罰は当たらない筈。それに魔物相手なら、ガン見しても問題ないと思う。


「分かりました。ジョージ様は弓を使うのですね。それなら私達の後に付いて来て下さい」


「その前にカラスと一戦交える必要があるみたいだぜ」

 ボルフ先生の視線を辿ると、さっきまで上空を飛んでいたデスクロウが俺達の頭上を旋回していた。


(カラスも一メートル越すと化け物にしか見えないな。それに、あの鋭いクチバシは反則だろ)

 あんなクチバシで突かれた人間の皮膚なんてひとたまりもないだろう。


「風向きは右下で角度は八十五度。風力は七の強風。標的はデスクロウ……喰らえ‼コントロールウィンド……そこだっ」

 デスクロウは突風をもろに浴びて地面に叩きつけられる。空を飛んでいたら狙いが付け辛いが、地面に落ちたら狙いを付けるのは余裕だ。新魔法は成功と言って良いだろう。どや顔で先生達を見ると、そこには無情な光景が展開されていた。


「おっ、お前も上手く倒したみてえだな」

 投げナイフを使い、殆んどノールックでデスクロウを撃ち落としていくボルフ先生。


「また新しい魔法を創ったのですね。さすがジョージ様です。」

 棍棒のように太い杖で次々とデスクロウを叩き落としていくサンダ先生。俺のどや顔は一瞬で引き攣った笑顔に変わりました。

 最初は地面に落とした魔物に後方からも風を浴びせて、カウンターで攻撃する予定だった。でも狭い場所で使うと足を風にすくわれて転倒する危険性があるので、この形にしたんだけども……オデットさん、折角改良してくれた新魔法ですが、同行者がチート過ぎて一瞬でかすんでしまいました。

 ◇

 異世界には萌えで溢れている。そう思っていた時期が俺にもありました。でも、現実は違ったのです。


「あれがハーピー?マジッすっか」

 そこにいたのは枯草を草冠にして頭に乗せているハゲ鷹。草は意外と長く、まるでかつらを被っているかのように見える。

 萌えの要素なんて一切なく、その姿は邪悪としか言いようがない。血走っている目が半端じゃなく怖いです。


「ええ、私達妖精はウィッグイーグルとも呼びますが」

 すぐさまレコルト基礎にアクセス:ハーピー、別名ウィッグイーグル。ウィッグイーグルはハゲ鷹の一種で、マンドラゴラの葉を触媒にして幻術を使う。魅力的な女性や雌に姿を変えて、人や魔物の雄を誘惑するのだ。そして隙をついて襲って餌にしている。頭に被っているマンドラゴラの草冠を大切にしており、触れただけでも怒るので注意が必要。

 まあ、確かに鳥なのに歯を持っているとか、何でハーピーが人間の好みを分かっているんだとか疑問に思っていたけど、これは詐欺すぎるだろ。日本に戻れても、この事実だけは封印しておこう。

 ちなみに片目を瞑って見たら、ポニーテールの元気っ娘タイプだった。


「来るぞ‼油断するんじゃねえぞ」

 弓を引き絞って身構えていると、一羽のハーピーが俺に向かってきた。 

 ……怖えーよ。ハーピーは幻術が無効になっているとは知らずに、チャームダンスを使ってきたのだ。尻尾を左右に愛らしく振る……目の血走っているハゲ鷹。

(主人公はこれに魅了されたのかよ。こんなのがばれたら、苦情もんだぞ……待てよ、あれだけ長い草ならストーキングウィンドが使えるな)

 ケイオスの髪と同じように、草冠をハーピーの顔に絡ませれば、攻撃がしやすくなる筈。


「風力は七、強風。気流の中心地はハーピーの草冠。(ストーキング)わり付く・(ウインド)」  

 風の渦がハーピーを包み込む。荒れ狂う強風により、草冠がバラバラになってしまった。   


(あれ枯草を使っていたんだよな。そりゃ壊れるか)

 ハーピーはバラバラになった草冠が信じられないらしく、呆然としている。敵とは言え非常に気まずい。ハーピーの目は潤んでおり、今にでも泣き出しそうだ。


「その……ごめん。ほら、たまには地肌に風を当てないと、蒸れると思ってさ」

 取りあえず誠心誠意謝ってみる。


「ギャ……ギャスッー‼ギャー、ギャーギャー」

 ハーピーさん、激おこです。敵に大切なかつらをズタズタにされたら、そりゃ怒るよな。 

 ハーピーが俺に向けて飛び掛かろうとした瞬間、バサリと崩れ落ちた。


「この馬鹿野郎 ‼お前は策を弄し過ぎなんだよ。魔法を使う暇があったら、弓を射れただろうが」

 ボルフ先生の言う通り、石橋を叩いていたら敵が先に渡って来たなんて洒落にもならない。特に今回は時間との勝負だ。先手、先手で攻めて行こう。

 ◇

 怪しい、滅茶苦茶怪しい。向こうの方から三人の少女が俺達の方に向かって歩いて来ているんだけど、怪しさ満点である。今いる場所はヴェント谷の中間地点になるから、それなりに強い魔物も現れる。それにも関わらず、三人の少女の服装は普段着で、まるで町に遊びに行くような気軽さなのだ。

 三人との距離が縮まり、一人一人の顔が判別出来る距離になった。

(あれはフーマ三姉妹……まじかよ?)

 向こうから歩いて来ているのは、どこからどう見ても風の六魔枢オボロの副将フーマ三姉妹である。マエストロ・グラィツァー・ルストラに続きフーマ三姉妹と会うなんて運が悪過ぎだ。

 問題はあいつ等が何に化けているかだ。カカリさんのお陰で、今の俺は幻術を無効化出来ている。フーマ三姉妹が化けている姿に合わせたリアクションをとらなければ怪しまれてしまう。確認の為、片目をつぶる。

  (あいつ等、幻術を使ってないのか?いくら何でも油断し過ぎだろ)

 その後、何度も確認してみたが、幻術を使っていない事が分かった……お前のネタはばれているんだよって、どや顔したかったのに。

 そしてそのまま、何事も起きずにフーマ三姉妹とすれ違う。


紅葉姉(もみじねえ)、あの人僕に何回もウィンクしてきたよ。怖いよー」

 甘えん坊の末っ子牡丹が怯えた声で次女紅葉に泣きついた……なんか思いっきり勘違いされています。まあ、何回も片目をつぶっていたから、ウィンクしているように見えたんだろう。


「牡丹、大丈夫だ。何かあったら俺が守ってやる」

 ボーイッシュキャラの次女紅葉が牡丹をなだめる。主人公はその強さをフーマ三姉妹に警戒されたが、俺は変質者として警戒されたようだ。


「牡丹ちゃん紅葉ちゃん、目を合わせたら駄目よ。ああいう人は、何をするか分かんないからね」

 長女萩野が妹二人に警戒を促す……絶対に何もしません。

 アミ……お兄様は今無性にアミに会いたいです。

 フーマ三姉妹と十分に距離が離れたのを見計らって、ボルフ先生が口を開いた。


「今の奴らも六魔枢の関係者か?足運びに隙がなかったぞ」


「風の六魔枢オボロの副将フーマ三姉妹ですよ。不幸中の幸いで、怪しまれずにやり過ごせましたね」

 六魔枢関係の中で一番最初に戦うのが、フーマ三姉妹だ。多分、ボルフ先生達の方が強いと思う。でも、まともに戦ったら、かなりの時間のロスに繋がるのでスルーしてくれたのはラッキーだった。


「怪しまれずに?……変質者扱いされていた奴が何を言う」

 ボルフ先生の言う通り違う意味では怪しまれていたけど。


「まあ、何もなかったから良いじゃないですか?でも、ジョージ様、若い子と会話をする時は気を付けなくては駄目ですよ。こっちにその気がなくても、向こうが不快に感じたらセクハラに認定されるんですから。フライングシップまでもう少しです。頑張りましょう」

 カカリさんの言う通りだ。特に俺の周りは強い女性が多いんだし。まさか異世界でも冤罪対策を考える事になるとは……

 ◇

 カカリさんに案内されたのは崖の上だった。


「これがミケ様の仰っていたフライングシップでございます」

 ……まじかよ。それがフライングシップを初めて見た時の感想だった。

 崖の上には四メートルくらいの泥沼があり、そこの中央部に泥だらけの小汚いボートが置いてあった。ゲームでジョージが使っていたフライングシップ同様中央に小さな船室がある。船室と言うより掘っ建て小屋と言った方が正確だけど。


「あの、これ飛ぶんですか?」

 フライングシップ?の半分は泥沼に埋まっており、到底飛び立てるとは思えない。


「ええ、ミケ様の話では間違いなく飛べるそうですよ」

 まあ、ミケにも間違いはある。これが偽物ならミケにフェルゼンへ行ってもらおう。

(取りあえず鑑定してみるか)

 鑑定結果:可変型フライングシップタイプT。休止状態。

(休止状態?……まさか)

 居ても立っても居られなり船室に飛び込む。ゲームでは何も描かれていなかったが、俺の予想が正しければ何かがある筈。


「あった‼これで俺もチートの仲間入りが出来る筈」

 小屋の中に埃だらけのデスクが置かれていたのだ。積もりまくった埃を払い落とすと、コントロールパネルが姿を現した。真ん中にはディスプレイがあり、脇には数個のボタンが付いている。


「サンダ先生、ボルフ先生ちょっと来て下さい。なんとかなるかも知れません」

 これは天空の支配者ジョージ・アコーギの序章に過ぎない。このフライングシップがあればワの国に行けるだろう。そうしたら、夢にまで見た米と醤油が手に入るのだ。


「これは古代言語ですね。残念ながらオリゾン大陸にもこれを読める人はいないでしょう」


「大丈夫ですよ。俺にはレコルト言語翻訳機能があります」

 もう誰も知らないような古い言語でもバッチリ解読出来る。起動スイッチと書かれたボタンのカバーを外し、勢い良く押す。


「スイッチオン‼フライングシップ起動……あれ?」

 しかし、フライングシップはうんともすんとも言わない。


「ピクリとも動かねーな。マジで泥船に乗せられるとは、思わなかったぜ」

 ボルフ先生の視線が冷たいです。


「あー、私外を見張っていますね」

 カカリさんはそう言うと、外に飛び出して行った。上手く逃げて、ずるいじゃないか。

(でも、鑑定でフライングシップって出たよな。そういやミケが魔石で動くって言っていたよな……あった‼)

 床に魔石投入口と書かれた蓋があったのだ。蓋をこじ開け、ヴェント谷で手に入れた魔石を投入する。

 再度スイッチを押すと、コントロールパネルに明りが灯った。そしてディスプレイに文字が表示される。


「えっと……エンジンが停止しています。外部にあるオールを動かして、エンジンを起動させて下さい。また、故障等でエンジンが動かない場合はオールを使用して移動が出来ます。安全な場所までオールで移動し、お近くのディーラーにご連絡下さい」

 ……バイクの押しがけかよ。それにお近くのディーラーって、どこだよ。つまり、ゲームのジョージはエンジンが止まっている事が分からずに、非常時の移動手段を使っていたと。


「サンダ先生、ボルフ先生、外付けのオールがあるみたいなので、一緒に動かしてもらえますか?」

 船室から出ると甲板に古びたオールが置かれていた。いぶかしがる先生達に頼み込み、オールを動かそうとしたら、カカリさんが大慌てで飛んできた。


「ジョージ様、フーマ三姉妹が手下を連れて、こちらに向かってきています」

 見るとフーマ三姉妹が大勢のゲニンやクノイチを引き連れてこっちに向かって来ている。多勢に無勢、いくら先生達がチートでも敗北は確定だ。


「いくら手下を連れて来ても、空までは追って来られない。頼む、動いてくれ」

 オールを回すと、フライングシップが揺れだした。でも、揺れるだけで、全く浮上しない。そうこうしている間にもフーマ三姉妹はどんどん近付いてくる。


「ジョージ様、泥にはまって動かないみたいです」

 ……どんだけ、揚力のないフライングシップなんだ。


「オークと狼人を引き連れたソバカスだけが特徴の猿人……お前、ジョージ・アコーギだな。お前の首をとって、オボロ様に献上してやるぜ」

 紅葉が俺の目を見て宣言した。魔族の間でも俺の目印はソバカスなんだ。

(このままじゃ不味いな……そうだ‼泥を吹き飛ばせば良いんだ)


「風向きは真上。風力は七の強風。標的はフライングシップの船底。コントロールウィンド。あっ……」

 コントロールウィンドの力でフライングシップは無事に浮遊した。多量の泥を巻き上げながら……。


「もういやー、僕の服が泥だらけだよー」

 今日の服はお気に入りだったらしく、三女牡丹は涙目だ。


「ジョージ・アコーギ、卑怯だぞ。降りて来て牡丹に謝れ」

 近くにいた所為で頭から泥を被ってしまった次女紅葉が俺を睨んでいる。


「牡丹ちゃん、紅葉ちゃん、大丈夫?服を着替えに帰りましょう。ジョージ・アコーギ……クノイチを虚仮にした報い必ず受けてもらいます」

 巻き上げた泥は長女萩野にも降り注ぎ、フーマ三姉妹は仲良く泥だらけに……俺、悪くないよね。

  取りあえず、全力で逃げてやる‼


活動報告で重大な発表があります。良かったら見て下さい

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