ジョージの悩み?
お食事中の方は避けて下さい
自治権を得たら好き勝手出来ると、夢想してた時期がありました…実際、自治権を得てみると貴族間のお付き合いが大変です。
「ジョージ様、またパーティーの招待状が届いております。今回はモデスト男爵からダンスパーティーへの招待です」
王様から直接自治権を与えられたと言う話は瞬く間にオリゾンに広まったらしく、城には貴族や商人からダンスパーティーやお茶会への招待状が連日届いてる。
「モデスト男爵ですか…確かゴルド公爵一派ですよね…準備が忙しいので今回は遠慮しますって、断りの手紙を送ってもらえますか」
ゴルド公爵は爺ちゃんと敵対関係にある貴族で、猿人至上主義の奴隷推進派。モデスト男爵は俺を取り込む事で、ゴルド公爵の歓心を買いたいんだと思う。
「良いのか?下手すりゃゴルド公爵に睨まれるぞ」
自治権をもらったとは言え、俺には爵位がない。社交界に置ける立場は底辺に近い。
「時間に余裕がないのは事実なんですよ。それにダンスパーティーならパートナーが必要になるじゃないですか」
まじで寝る間がない位に忙しいのだ。何より俺はまだダンスがうまく踊れない。もし、マリーナを誘えたしても恥を掻かせて更に関係を悪化させてしまうだろう。
「思ったより、これって奴が応募して来てないしな。労働条件を見直したらどうだ?」
ボルフ先生の言う通り新規職員応募は芳しくない。オリゾンは識字率が高くないから、読み書きが出来るだけで仕事に困らないのだ。
「それをしたら今いる職員から不満が出てきます。応募してきた人数を聞いた時は嬉しかったんですけどね」
応募の大半が採用の判断に悩む人だった。一番多いのが他領の息が掛かったスパイ。これはアサシンギルドの調査で弾く事が出来た。ちなみに一番多かったのがナイテック家関係者。
「他領の文官を引き抜くのは不味いですしね」
スパイの次に多かったのが、現役の文官。オリゾンはアランの様に、文官より騎士等の武官を重んじる領主が少くなく一定数の応募があった。しかし、領政の機密を知っているかも知れない現役文官を大量に引き抜くのは不味いだろう。下手に他領から不興を買って、取引先を無くしたら元も子もない。
「こればっかりは、焦っても仕方ないですよ。ギリアム商会から二次募集の結果が集まったって、連絡がありましたし。何より解決しなきゃいけない問題は他にもありますので」
下手な奴を入れて職場の空気が悪くなったら最悪だ。仲良し職場にするつもりはないが、ギスギスした人間関係は胃に来る。
「解決しなきゃいけないのは、ゴブリン問題に軍備の再編成。貴族との付き合いも増えるしな」
軍備の再編成。前はアコーギ騎士団に参加すれば良かったが、これからは補給からなにから自領で行う必要がある。今は騎士団の出番は少ないが、魔王が現れたら騎士団は大忙しになるだろう。その時、形骸化して動けませんでしたなんて洒落にならない。
「でも下手に軍備を強化したら怪しまれますよ。魔王が現れると言う確証がありませんから、税金を注ぎ込む大義名分がないと民に不満が出て来る危険性がありますし」
サンダ先生の危惧はワカル。ボーブルには魔物がいない。それは利点なんだが、今は少数の騎士団で間に合っている。
「要は騎士団が無用の長物にしなきゃ良いんですよ。女性を楽しませる施設の建設。それにボーブルに学校を作らなきゃいけないですし」
人が増えたらゴミ処理や排泄物の処理も問題になるだろう。病院も必要になるだろうし、ボーブル城でパーティーを開く必要も出て来ると思う‥都合良く、在野に埋もれた天才が応募して来てくれないかな。
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放課後、俺はギリアム商会に二次募集の履歴書を受け取りに来ていた。
「ジョージ様、こちらが履歴書になります。今回はうちでも身元を調査したので、安心して下さい…その所為で大分少なくなりましたけど」
そう良いながらヴェルデが手渡してくれたのは、十数枚の履歴書。早速、履歴書をチェックしてみるとみんな喉から手が出る程欲しい人物ばかりだ。
(ギリアム商会の手前、書類選考では落とせないな…俺が面接し人物鑑定するしかないな)
「いや助かるよ。うちが募集すると、どうしても応募者が猿人に偏るからな。その点、ギリアム商会を通すと多種多様な人材が集まってくれる…セリュー・ラパン?この人はもしかしなくてもラパンの親父さんか?しかし、この経歴は不味いだろ」
種族は兎人だし、家族欄にはコニー・ラパンと書いてある。兎耳が生えた親父さんか。余り想像したくはないな。
「確かにセリューさんはゴルド公爵領地で働いていましたが、勤めていたのは小さな村の役場です。それに10年近く前の話ですし、今は日雇いの仕事をしていてゴルド公爵との繋がりは一切ありません…私意がないかと聞かれたら嘘になりますが」
ヴェルデはそう言うと顔を赤らめてモジモジし始めた。商人としては成長してる様だけど、恋愛は純情狸小僧のままの様だ。
「問題は何で家族持ちのセリューが安定した村役人の地位を捨てて、日雇いをしてるかだよ。獣人がゴルド公爵領で村役場に勤めるには、並大抵の苦労じゃないと思うぞ」
なにしろゴルド公爵は猿人至上主義で獣人に対しての差別が凄い。
「ラパン一家…ラパン一家やピーター君が生まれた村を治めていた騎士は獣人にも別け隔てなく接する人物だったそうです。しかし、それがゴルド公爵の逆鱗に触れて解雇されたそうです。そして村に住んでいた獣人の多くは奴隷にされたとの話ですよ…セリューさん達は命からがら王都に逃げて来たそうですが、ピーター君のお姉さんは捕まって奴隷にされたと聞きました」
ラパンの家でもピーターの家でもゴルド公爵領出身と言うのを隠していたらしいが、最近勘づかれたらしい。
「ピーターの糞真面目な正義感は、それが原因なのかもな…しかし、良いのか?お前が親父さんを推したとなると、ラパンの奴が引け目を感じるかも
知れないぞ」
もしヴェルデがラパンと付き合えたとしても、それが原因でギクシャクしかねない。その時、この純情狸小僧が耐えれるか心配だ。
「馬鹿にしないで下さい。このヴェルデ・ギリアム商人の誇りにかけて自信のある物以外はお売りしません。人もまた然り、セリュー・ラパンがボーブルに必要と思ったから、勧めているのです」
「分かった。さて、ここからは商売の話だ。近々、新規事業を立ち上げるから、ギリアム商会に一枚噛んで欲しい。それと新商品が売れるか見極めもらえるか。今度の日曜日ドンガ達と仕入れに行くから着いてくるか?」
「はい、喜んで‼」
俺の提案に笑顔で頷くヴェルデ。その笑顔が商品を見ても続けば良いのだが。
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今回の参加者は俺、ドンガ、ヴェルデ、ヘゥーボの四人。ちなみにボルフ先生には参加を拒否された。
「さて、全員揃ったな。ここからはこれに乗って行くぞ」
「これは新しいゴーレム車ですね‼しかし、後ろに付いてる箱はなんですか?鉄製で、やけに頑丈な造りをしてますが」
流石はマジックアイテム好きのヘゥーボ、食い付きが凄い。
「頑丈でないと困るんだよ…色々と」
「このホースはエンペラーエレファント製じゃないですか。鉄でも傷つかないから高値がつく品ですよ」
相変わらずヴェルデの目利きは確かだ。ちなみにエンペラーエレファントの皮は爺ちゃんに頼み込んで手に入れた。しかしコストを考えると、早くゴムを手にいれたい。
「ジョージ様、汚れても良い格好で来いって言っただが、どこに行くんだ?」
確実に汚れるし、確実にバハンさんに叱られるんだよね。
「タスク山だよ。ドラゴンにはもう話を通してる」
話を通したらドン引きされたけど。
修行の成果か、以前より楽にタスク山を登る事が出来た。ヴェルデとヘゥーボは、へたっていたが。
「領主様、お久し振りです。しかし、本当にあれを持ち帰るのですか?」
俺達を出迎えてくれたのはルビードラゴンのアカダマさん。アカダマさんは、紅い鱗を更に赤らめていた。
「ええ、是非とも譲って下さい。何なら魔石も支払いますよ」
「いえ、あれを売ったとなると族長に叱られます。持って行って頂けたら、むしろ助かりますし…こちらです」
アカダマさんに案内されたのは巨大な穴。穴の中からはかなり悪臭が漂ってきている。
「ジ、ジョージ様。ここはどこなんだか?」
鼻を摘まみながらドンガが尋ねてきた。ちなみに三人共、涙目になっている。
「トイレだよ。ドラゴンのト・イ・レ」
「領主様、我々の糞を何に使われるのですか?」
「少し前からボーブルでゴブリンが目撃され始めたんですよ。騎士を派遣するよりドラゴンの糞を土に混ぜた方が低コストで、ゴブリン避けになりますからね」
ゴブリンの嗅覚は鋭い。ドラゴンの臭いがしたら絶対に近づいない筈。
「し、商品にするんですか?」
流石のヴェルデも困惑してるらしい。
「とりあえず乾かしてみてだな。鶏糞ならぬ竜糞だよ」
畑に混ぜ込めば獣避けになるし、土壌も肥える筈。
「あの新しいゴーレム車はなんですか?」
ヘゥーボにしてみれば当然の疑問だ。オリゾンにはないものだし。
「人が増えたら、排泄物の処理が問題になる。あれで集めて処理するのさ」
ボーブル社特製バキュームゴーレム車なのだ。匂いが付こうが領主としては避けられない問題なのである。
お陰様で日刊二位になりざこを越しました




