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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ジョージとヅラ

 この世界に転生して、はや13年。何とか異世界での生活にも慣れてきた。

 でも、未だに貴族の生活だけは慣れていない。例えばオリゾンの貴族では男性でも長髪が良しとされている。軍役に就いてる貴族用のカツラ専門店がある位だ。勇者ブレイブ・アイデックが長髪のイケメンだったのも関係があるのかも知れない。

 そして服は金糸や銀糸をふんだんに使った派手な服が好まれ、パンツは半ズボンがデフォである。この辺は中世ヨーロッパと同じで、貴族は非生産階級だから労働には向かない格好をするのが普通との事。

 むしろ俺みたく額に汗して働くのは異端で、それこそ貴族の沽券に関わるらしい。配下が働いているのを見ながら、優雅にお茶を飲むのが貴族の勤めだと言う人もいる位だ。

 でも、俺は根っからの貧乏性でお仕事大好き人間…いや、仕事が大好きと言えば語弊がある。仕事をしていないと不安になってしまうのだ。


「あのジョージ様、本当に宜しいのですか?」

 床屋のおじさんの顔色が何処と無く青い。この世界の常識からすると、俺の依頼はかなり非常識な事になるから仕方がないと思う。


「ああ、丸坊主で頼む。切った髪は使うんで捨てないでくれ」

 俺は男の長髪を否定する気はない。似合えば問題ないし、男の長髪を否定したらゲーム業界からハブられてしまう。あの人達はファッションで伸ばしてるって言うより髪を切りに行く時間があれば、趣味の時間に回す人達だったけど。

 そして俺は長髪が悲しい程、似合わない。長髪のカツラを被ってた事があるが、どう見ても売れない昭和のフォークシンガーだった。そう、俺の長髪姿は壊滅的にダサいのだ。ドン○西に見つかったらお説教確定だと思う。


「分かりました…でもジョージ様、坊主頭は女性に人気がないんですよ」

 俺は元から女子に人気がないから、坊主頭にしても好感度に変化はないと思う。貴族の女子からは変わり者扱いされているし、庶民の女子からは身分の違いから恋愛対象として見られていないそうだ。

 クラスの女子は俺の守備範囲から大きく逸脱してるから悲しくはない…モテないのにも馴れてるし。期待をするから落胆をするのであって、最初から期待をしてなければ落ち込む事を回避出来るのだ。


「必要だから坊主にするんですよ。それに髪は放っておけば伸びてきますし」

 そして出来上がったのが、見事なまでのジャガイモ男子。頬のそばかすがジャガイモらしさをアップさせている。無理矢理誉めれば素朴な少年、はっきり言えば垢抜けていない田舎者だ。


「ジョージ様、ハンマー様が来ました。ジ、ジョージ様!?」

 ハンマー父娘の到着を知らせてくれたサンダ先生が俺の頭を見て驚きの声をあげた。口をあんぐりと開きっ放しにして、唖然としている。


「分かりました。それと、床屋への支払いをお願いします」

 ちなみにハンマー父娘を連れて来てくれたボルフ先生は腹を抱えて大笑いをした。


「髪を植え付けたヘルメットですか…」

 ハンマー父娘の視線も俺の頭に釘付けになっている。リリルに至っては目が点になっていた。


「ええ、俺の髪を使って足りない分は動物の毛でも使って下さい」

 俺がハンマー父娘に頼んだのは獣耳着きヘルメットカツラ。この世界に普通のヘルメットもあるんだけど、厚みがあるので獣耳を着けると不自然になってしまう。それだと俺の目的を果たせなくなってしまうのだ。


「カツラヘルメットかー。どうしてもー防御力が落ちちゃうけど良いのー」

 リリルの言う通り、不自然さを解消するにはヘルメットを薄くしないといけない。


「ああ、頼む。獣耳は獅子人の形にして、出来るだけリアルに作ってくれ。納期は二週間で頼む」

 ハンマー父は俺の頭の型をとり、それを参考にしてヘルメットを作ってくれるとの事。リリルは俺の坊主頭を触りまくり親父さんに怒られていた。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ハンマー父娘が帰ったのを見計らって、ロッコーさんとギリルさんを執務室に呼んだ。


「まず、こちらを見て下さい。右がボーンタ・オッニゾリーがパーティーに出席した日で、左がうちで襲撃事件が起きた日になります」

 俺はパソコンを手に入れてから、色んなデータを打ち込んで管理している。嘆願書の筆跡からボーンタが怪しいと睨んで、データを整理したら面白い結果が得れたのだ。


「事件が起きた日にボーンタはボーブル近くで開催されているパーティーに出席していますね。でも、これではオッニゾリー家に訴えても難癖にしかなりませんよ」

 サンダ先生の言う通り、ボーンタにはアリバイがある。そう、ボーンタにはあるのだ。


「ええ、そしてボーンタはパーティーに自分の仲間を連れて来ています。一人はエルフのタンラ・ウォーテルス、もう一人は猿人のリーゼン・ライテル。パーティーを開催した家に確認した所、事件が起きた日のパーティでは、タンラかリーゼンのどちらかがパーティーを中座しています」

 ちなみにタンラはドンガに吹っ飛ばされた先輩で、リーゼンはカミラに蹴り飛ばされた先輩だった。そしてタンラの髪の色は水色で、リーゼンの髪の色は茶髪。


「つまり、どちらかがパーティーから抜け出して襲撃事件を起こしてる可能性が高いと。しかし、ウォーテルスとライテルですか…微妙な家柄ですね」

 ロッコーさんの話によると、ウォーテルスは水のウォーテック家の遠戚で、ライテルは光のライテック家のとの事。ちなみにタンラの父親はボーンタ領にあるハイドーロ教会の神官、ライテル家は大分前に本家(ライテック)を見限り、オッニゾリー子爵に仕えているそうだ。


「確実な証拠がなければオッニゾリー子爵どころかウォーテック家やライテック家も黙ってませんね…ジョージ様、下手に動けばマリーナ様との仲に亀裂がはいりますよ」

 ギリルさんが心配そうに声を掛けてくれたけど、マリーナと俺の仲は亀裂どころか真っ二つに別れている…いや、その前に近づいてもいないけど。襲撃事件への見舞いの手紙すら届いてないし。


「証拠がなければ作ればいいんですよ。二週間後にボーブル近くで開かれるパーティーにボーンタも呼ばれています…ギリルさん、その日に騎士団を総動員してもらえますか?」

 家臣に表立った指示を出すのはギリルさんに任せている。何より騎士団長から未だに子供扱いされている俺が総動員の指示を出しても、不平が出るだけだ。 


「大丈夫ですけど、騎士団を総動員したら警戒して事件を起こさないと思いますが」

 ギリルさんの言う通り、まだ中学生のタンラとリーゼンが大勢の騎士を見たらびびってしまうだろう。でも、中学生の頃は大人や社会を舐めている時代である。


「ええ、だから一ヶ所わざと隙を作ります。そこで獣人に扮した俺がうろつくんですよ」

 騎士団総動員は罠に追い込む為の仕掛けで、犯人を罠に誘い込む(おとり)が俺なのだ。でも痛い思いをしたくないから、カツラヘルメットを被らせてもらう。


「いけません。もし、ジョージ様に何か御座いましたらローレン様に申し訳がたちません。それにジョージ様が気絶したら誰が犯人を捕まえるのですか?」


「騎士団の一部を伏兵にします。ロッコーさんに騎士団に同道してもらって、何かあったら回復魔法を掛けてもらえる様にしますよ」

 アサシンギルドばかり活躍させたら騎士団の面目がたたないので、ここらで騎士団に活躍をさせておきたい。何よりアサシンギルドのメンバーは表立った場所に出てこれないし。


「しかし、ジョージ様自ら囮になる必要はないのでは」

 俺を赤ん坊の頃から見てきてくれたギリルさんにして見れば、みすみす危険に晒す事は避けたいんだと思う。ましてやギリルさんの家は代々コーカツ家に仕えてきたそうだ。


「あいつ等が標的にしてるのは、女性や子供の様な弱い人間ばかりです。だからって、家臣の家族には頼めないでしょ。それに俺が襲われれば貴族間の問題に持っていけます」

 少なくとも襲撃事件を止める事が出来る。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 作戦当日、ボーブル騎士団は気合いが入りまくっていた。そりゃそうだ、町の安全を守る騎士団にしてみれば 、襲撃事件は面子を潰された様な物。ましてや領主自ら囮になるのだ、気合いが入ってなきゃ俺が悲しい。

 ちなみに俺の獣耳姿は萌える訳もなく、我ながら気持ち悪かった。ちなみに服は安い麻の服を着ています。騎士団の団長に、そんな服を着てもらってすいませんと言われたが、これ俺の私服っす。


「それじゃギリルさんは騎士団の指示をお願いします。ボルフ先生はアサシンギルドと連携してあいつ等の動きを見張って下さい。サンダ先生とロッコーさんは伏兵と一緒に動いて下さい」

 サンダ先生は貴族間の法律に基づき、その場で罪状を述べてもらう。

 日が暮れてボーブルに夜が訪れる。娼館が出来てから、ボーブルは夜でも活気に満ちており人通りが減る事はない。酔っ払いの大声と吟遊詩人の歌声が混じり合い、猥雑で活気ある雰囲気を作り上げていた。

 そして木炭で焼かれた肉の臭いが鼻孔をくすぐる。


(ビ、ビールが飲みたい…焼き肉とビールなんて無敵の組み合わせなんだぞ)

 少しだけなら、飲んでも問題ない筈。いや、むしろ酔っ払っていた方が、確実に食い付いてくれると思う。


(これは市場調査だ。市場調査は領主の大切な仕事です)


「すいません、焼き肉とビ」「ジョージ、タンラ・ウォーテルスがボーブルに入ったぞ。緑色のヅラを被ってるが間違いねえ…お前、まさかビールを飲むつもりじゃねえだろうな」

 ボルフ先生、ナイスタイミングすぎます。でも、本気(マジ)睨みの先生に言える訳がない。アサシンの本気睨みは胃に来る事は分かった。


「いや、領主として市場調査を…」


「ごちゃごちゃ言ってないで、早く動け…騎士団を総動員しといてビールを飲む領主(バカ)がいるか!!」

 市場調査失敗です。喉は既にビールなんだけど…。


「はい、はい動きますよ」

 囮領主様はキリキリ動きますよ…売られた喧嘩は倍にして返してやる。

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