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嫌われ者始めました〜転生リーマンの領地運営物語〜  作者: くま太郎


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ジョージの引っ越し

 テーブルの上には所狭しと、ご馳走が並らべられていた。寿司に鶏の唐揚げふろふき大根、どれも俺の好物ばかりだ。


「明日から丈治は東京か…しっかり勉強して母さんを安心させるんだぞ」

 父さんの目が軽く潤んでいる。父さん?でも、アランじゃない…ああ、これは夢だ。それも前世の夢…多分、高校を卒業して東京に出て行く前の晩だと思う。


「お父さん¨明日は丈治の好きな食べ物を作る¨って昨日から頑張っていたのよ」

 父親は料理に手間暇を惜しまない人だった。あの頃は何も分からなかったけど、あれこそが本当のご馳走なんだと思う。二人ともゲームでは遊ばない人だったけど、俺が携わったゲームはプレイしてくれたらしい。母さんはエンディングのスタッフロールに俺の名前を見つけて大泣きしたそうだ。両親に対する感謝と恩返しを出来なかった反省、春の日の様な暖かさと胸を締め付ける懐かしさ…色んな感情が去来し思わず涙が溢れだす。


「父さん、母さんありが…ぬぅおっ」

 夢の中の両親に礼を言おうとしたが、そこにいたのは両親ではなく巨大な(ミケ)。どうやら、夢から覚めたらしい。


「なんや?おとんとおかんの夢か。親の夢で涙を流すなんて、可愛い所があるやないか」

 ミケはそう言うと、訳知り顔をしながら頷く。腕を組ながら、尻尾をゆっくりと動かしている。言外に儂はわかっとるで言ってるのが伝わってくる。


「年を取ると涙脆くなるって、本当なんだな。それで神使様は何のご用事ですか?引っ越しを手伝いに来てくれたんですか」

 俺は今日、アコーギ城からボーブル城へと引っ越す。大きな荷物は既にボーブル城に運び終えているが、(みけ)の手を借りたくなる位に忙しくなると思う。


「なんで儂が引っ越しを手伝わなあかんのや。儂はぷりてぃな三毛猫ちゃん、地味な黒猫やないんやで…お前が元の世界に戻る方法が分かったんや」

 これからボーブルには移住者も増えてくるから運送屋が必要になると思う。名前は黒猫ヤ○トならぬ三毛猫ニャマトにしよう。


「マジか!!それで、どうすれば良いんだ?」


「魔王級の魔物が落とす魔石を触媒に使うんや。そうすれば、帰れるで」

 

「無理だって!!お前、馬鹿じゃねえの?魔王ゴライアスがどれだけ強いか分かってんのか?俺なんて瞬殺だぞ」

 魔王ゴライアスは、キミテのラスボスだ。ラスボスだけあり、とんでもなく強い。普段の身長は3m、変身すると5mになるという物理法則ガン無視な存在だ。

 補助魔法を打ち消す技(決して凍てつ○波動ではない) や石化(生物が石になるのはおかしいとか、心臓が石になれば即死します等の苦情は受け付けておりません) も使ってくる。


「それでもシュジンコー達は倒したんやろ。ならお前にも出来る筈や」


「あんなドラゴンやヴァンパイヤに平然と勝てる奴等と一緒にするな。(ジョージ)はトロルにも勝てないんだぞ」

 あんなオーガの一撃を盾で防いだり、ドラゴンのブレスを浴びても平然としてるチートさん達と一緒にしないで欲しい。よく考えれば勇者パーティーも物理法則を無視しまくりだよな。もっと体がマッチョになってなきゃおかしい…ヒロインが全員マッチョなゲームなんて売れないけど。でも、大丈夫。キミテの世界には物理法則を捻じ曲げる理屈があるのだ。


「お前のマナの保持量はかなり高めなんやで。ドラゴンにも勝てる筈や…多分。最悪、シュジンコー達が魔王を倒したら横取りすればええやないか」

 神使が横取りをアドバイスして大丈夫なんだろうか?

 ちなみにマナの保持量が高ければ魔力も高くなるし、攻撃力も高くなる。腕が細いヒロインでも一撃で、アイアンゴーレムを倒せるのだ。

 だから、主人公パーティーは崖や高い塔から落ちても平気だったんだろうか?そんな、とんでも理論が俺に通用するとは思えないけど。


「筈ってなんだよ…でも、俺は魔王と戦えないぞ。魔王城まで行く足がないからか」

 魔王城に空を飛んで行かなければならない。そこで登場するのがフライング・シップ。太古の昔に滅んだ文明の遺産(オーパーツ)で近未来的な形をしている(決して西洋帆船ではない。西洋帆船はFの飛空艇を連想させて危険なのだ)。ちなみにジョージもフライング・シップを持っている。

 ただし、大きさは2m程度木造船で動力は人力(オール)。真ん中に小さな小屋があるだけの貧相なフライング・シップである。当然、移動能力は低い。だから魔王城に行く時は、主人公パーティーのフライング・シップに勝手に鎖を付けて着いてくる。


「フライング・シップか…また懐かしい物が必要なんやな」


「魔王級って事は、魔王でなくても大丈夫なんだろう?例えばマナプラントに魔石を採算度外視で与えれば作れるんじゃないか?」

 日本に戻る為に死んでしまったら元も子もない。それに大怪我をしたらジョージに身体を返せなくなってしまう。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ボーブル城には母さんも付いてくる。俺が心配なのもあるんだろうが、城に来てくれた女性客の持て成しをしてもらう必要があるのだ。本来なら領主の正妻がする仕事なんだけど小学生の俺には奥さんなんていない。婚約者(マリーナ)も小学生だし、第一マリーナは俺に協力してくれないと思う。


「さてと、行きますか」

 物が運ばれてガランとした部屋は、不思議なほど広く見える。今まではアランの扶養だったから働く必要がなかったけど、これからは稼がないと食えなくなる。それにアランに税収の二割を納めなきゃいけないし、ボーブル城で働く人達に給料を掛けなきゃいけない。早い話が、頑張らなきゃならんのだ。

 第一の目標は、ボーブルを発展させて税収を増やす事だ。これから嫌でも金は必要になる。何だかんだ綺麗事を言っても金の力は強いのだ。産業を発展させて輸出入を拡大していきたい。

 第二の目標は、魔王や六魔枢に対する備えを始める事。俺が関わらない様にしても、巻き込まれる確率は少なくない。貴族には魔王軍との軍役もあるだろうし、闇と風の六魔枢との戦いは避けられないだろう。

 ガランとした部屋で考え事に耽っていると、可愛らしい声が聞こえてきた。


「お兄様、行かれるんですね」

 アミの目は既に潤んでおり、その威力は絶大である。思わず、引っ越しの延期を考えてしまった。


「ああ、そうは言っても同じ領内にいるんだぜ。永遠の別れじゃないんだから、何時でも会えるよ」


「何時でもじゃありません…決めました!!私も来年王都の中学校に通います」

 かなり嬉しい決断であるが、アミは思春期を迎えてもお兄様大好きっ娘でいてくれるんだろうか?¨兄貴?ないない。そばかすがキモいもん¨とか¨お兄様、恋人が出来ました¨なんて言われたら自棄酒確定である。


「それじゃ、中学校に行ってもアミが自慢出来るお兄様を目指すよ」

 第三の目標が出来た。…いや、これが一番かもしれない。それはアミを始めとする周りの人達との絆をより強固にする事だ。モテなくてもいい、仲間や領民を大切にしてボーブルの結束を高めるのだ…モテなくてもいいけど、一人位は彼女が欲しい。だってマリーナに振られるのは目に見えてるし。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 俺達の見送りは盛大な物となった。流石のアランとアデリーヌも見送りに来ている。


「ジョージ、アコーギ家の名を汚さぬ様に努力を怠るな」


「はい、父上。お言葉を肝に命じて粉骨砕身努力致します」

 親子とは思えない白々しいやり取りが続く。


「優秀なジョージの事ですから、私達からの贈り物は必要ありませんね」

 アデリーヌは相変わらず厚化粧でド派手な格好をしている。ちなみに下手に風下に立つと濃密な香水の臭いで、酸欠になるから注意が必要だ。


「はい、お婆様と父上から返しても返しきれぬ程の恩をもらいましたので」

 そう、能力の高い文官や騎士をスカウトさせてもらった恩があるのだ。身分に関係なく能力のある人をスカウトしたから、アランの配下はスカスカである。

 ボーブルとの領地までは馬で移動、ボーブルからはゴーレムバスとゴーレムトラックに乗り替える。文官、騎士に兵士、ジョージメイド隊も付いて来てくれる。さらにはその家族を連れ行くので、かなりの人数だ。

 ガラリと音をたてて馬車の車輪が動き出す。きっと、俺の運命も本格的に動き出すんだろう。


 ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄

 ボーブル城はアコーギ城の倍近い大きさに建てた。理由は簡単、有事に防災拠点としたいからだ。周囲を堀で囲み城壁も高くしている。最終的には城塞都市にするつもりだ。

 高さは三階建て、華美さは求めず防衛機能と快適な住環境に心を砕いた。俺の執務室は二階の中央に位置しており、俺の私室と寝室が隣接している。私室のドアを開けたら一分で仕事場に行けるのだ。


「お前領主なんやろ?もう少し広い部屋に住もうと思わんのか?」

 ちなみに寝室の広さは六畳、私室は八畳、執務室は十畳(半分は書類棚が占めている)の大きさである。執務室にはパソコンを置いているので、限られた人しか入室を許可していない。母さんの部屋は三十畳でアミの部屋は二十畳の大きさにした。


「無駄に広い部屋は落ち着かないからな。その代わり応接室や貴賓室は広くて豪華だぜ」

 商人から貰ったお祝いの装飾品や絵画は応接室と貴賓室に飾っている。ちなみに俺の部屋に飾っているのは、アミからの手紙やアミが書いてくれたお兄様の似顔絵である。


「しかし、部下の部屋より狭いと示しがつかんやろ」


「部屋なんて寛げれば充分なんだよ。それに服とかは、ホームキーパー部門に一任してるし」

 ジョージメイド隊はボーブル城ホームキーパー部門に名称を変更した。制服もスカートを廃止し、動きやすいパンツスタイルに変えた。主な仕事が清掃や洗濯になるので、この方が効率が良いのだ。


「ホームキーパーって、給仕はさせないのか?」


「そっちの仕事は社食部門のウェイターとウェイトレスの仕事になる。社食はセルフの食券形式。ウェイターやウェイトレスさんは、来客の時にのみ対応してもらう」

 でも母さんのメイドさん達には、そのままの形式で働いてもらっている。


「お前も社食で食べるんか?」


「上司が一緒だとリラックスして食えないだろ。俺は執務室に出前をしてもらうさ」

 ちなみに三食出前で済ませようとしたら、母さんにめっちゃ怒られた。とりあえず三日に一回は母さんの部屋で晩飯を食べる事になっている。社食は今後民間の食堂にも参入してもらい、朝昼晩のローテションを組んでもらう予定だ。


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