ジョージは今日も眠れない
久し振りの更新です 遅れた理由は活動報告を見て頂ければ
人には心の原風景って物がある。俺の原風景は日本、生まれ故郷の青森だと思う。
ワノ国に来たら、心の原風景が刺激されて泣いてしまんじゃないかって心配していた。
「リラックスできねー。日本のにの字もないじゃん」
今、窓から見えているのは巨大な鱗。そう、竜がとぐろを巻いてフライングシップを守ってくれているのだ。
目線を上げれば巨大な狐が周囲を警戒してくれている。でも、その目は血走っていて、殺気が駄々洩れ……どっちも滅茶苦茶怖いです。
「誰かさんが『安全な入り江があったら、教えて下さい』って言ったのが原因だろ?あの流れで、んな事言ったら竜も狐も本気でガードするに決まってんだろ」
ボルフ先生がジト目で突っ込んできた。確かにそうだけど、俺だけの責任なんでしょうか?
「あ、ある意味ワノ国で一番安全な場所ですよね……凜、鬼に詳しい人とか知っているか?」
なぜ、鬼は寒源の味方をするのか?鬼の強さ、弱点。好きな物はなにか。困っている事はないのか?そして仲間割れは可能なのか?
知りたい事は沢山ある。
「幕府の陰陽師、安部曇天殿が詳しいでござるよ」
なに、そのパチモン全開な名前は。
しかも、陰キャ確定だし。でも。絶対に仲良くなれると思う。
「ど、曇天様は風太郎様と仲が良いのか?」
キャラ的には仲が良いと思うんだけど、それだと鬼が寒源に味方する理由が分らない。
「兄上と曇天殿は竹馬の友でござる。良く二人で写経をしていたでござるよ」
陰陽師の代表は安倍晴明だ、そして晴明のライバルは芦屋道満。もしかして、寒源には、道満みたいな腹心がいるのでは?
そんなべたな展開はないと思うんだけど。
「寒源さんにも仲の良い陰陽師がいたりして……」
出来たらいないで欲しいな。寒源の方が担ぎやすいとか、そんな理由の方が嬉しいんだけど。
「寒源殿と仲が良い陰陽師は鰺名浪漫様でござる」
……なに、その地方銘菓みたいな名前。さらにパチモン臭が増したんですけど。
(鬼はその味名って陰陽師が関わっているんだろうな……鬼の件は、阿部さんに相談。次は風太郎さんとドンガの株上げだ)
「ドンガ、お前今回持ってきた苗の育て方分るか?」
今回の主役はドンガと凛。俺はあくまで引き立て役だ。
絶対に表舞台に乘らないんだからね。公爵様は自分のお仕事で手一杯なんです。
「そら、うちでも作っているから分かるだども」
脚気の対策の為に持って来た苗。これをワノ国に定着させなくてはいけない。
元は日本で買った苗だから風土はあっている筈。
「お前は凜と一緒に農作物の講師をしろ。ヘゥーボとリリルは、桐ダンス職人の所に行ってもらって……ヴェルデ、ワノ国にギリアム商会の支部ってあるのか?」
ドンガ一人の株を上げるより、仲間の株も上げた方が心証も良いと思う。これぞ仲間を盾にしちゃうぞ作戦だ。
おじさん、これ以上余計な名声とか得たくないんです。
「当然、ございます。ワノ国で義理を編み、お客様を幸せにするのが当商会の夢。そこから屋号は義理編夢商会と名乗らせて頂いております」
このちゃっかり狸め。日本人好みの屋号にしやがって……そういや一時期、俺や凛のワノ国の事を聞いていたもんな。
「後々、苗や薬の専売も頼みたいんだけど……」
「もちろんでございます。既に手筈は整っていますよ」
食い気味で返事してきやがった。まあ、上手くいけば莫大な利益が出るもんな。しかも、将軍のお墨付きさせ……なるんだし。
「後は各お歴々との会談か。サンダ先生、ミューエさん頼みましたよ」
よし、この流れなら完全にパスを出す事が出来る。腐っても公爵様なんだぜ。
「ジョージ、今回の代表は誰なのかしら?お母さんに聞かせてちょうだい?カリナちゃんは知っているかしら?」
上手くいったと思ったのも束の間。そうは問屋が卸してくれなかった。
待って。ここには友達や部下、嫁までいるんだぞ。母親の駄目出しは恥ずかしいのです。
「はい、お義母さん。今回の代表はジョージです。まったく、いい加減腹括りなよ」
しかも、速攻嫁に裏切られて詰められました。何時の間にかお義母様からお義母さんになっているし。
「サンダさん、ミューエさん、ジョージの補佐をお願いしますね」
凜の為に母さんを連れて来たのが裏目に出るとは。でも、まだだ。挽回する手はある筈。
「それでは俺が夜警をしますでの、皆さんは休んで下さい……ジョージ、お前も部屋に戻れ」
策を発動しようとした瞬間、ボルフ先生に遮られた。
母さん、ボルフ先生のコンビプレイに敵う筈もなく、俺は自室に……ちなみに、カリナは母さんの護衛兼話相手の為一人寝です。
まあ、竜や狐がガン見していたら、浪漫も糞もないんですが。
◇
妖狐さん、物凄く頑張ってくれたらしい。日の出と共に、ワノ国の役人が小舟でやって来ました。
何より竜や狐がフライングシップを守っていたのが、大きいと思う。絶対に陸地からも見えていただろうし。
「アコウギ殿、夜襲があったとは誠でございますか?」
役人さん、顔が真っ青です。そりゃ国賓が襲われたなんて、国の面子が丸潰れだもんな。
俺はイリスさんが奴隷として売られている事が分った時は、吐きそうになったもん。
「ええ、でも誰も怪我はなかったので」
あえてお茶を濁しておく。寒源と鬼が手を組んでいる事をおくびにも出さない。
だって、その方が噂が噂を呼んでくれるし。
「ま、誠にもう訳ございません。それで姫はご無事なのでしょうか?」
今日凜は久し振りに両親と再会する。だから、無事の確認をしたかったのだろう。
でも、それは悪手だぞ。
「凜は無事ですよ。しかし、夜襲の恐怖で眠れなかった者もいまして」
寝れなかったのは、俺だ。だって、竜がずっとこっちを見ているんだもん。不安なのは分かるけど、怖くて眠れませんでした。
「で、ですよね。今夜から我が国の総力をあげてお守りいたしますので」
昨日は総力上げていなかったの?っていじりたくなる。
でも、それは我慢。全部、寒源とその仲間に押し付けてやる。
「期待しております。凜様は一刻も早くご両親に会いたがっておりますので……道中、城内、小石ほどの不安のない様に頼みますよ……ああ、昨夜は竜神様、天狐様、妖狐様が守ってくれていました」
あえて妖狐の事も話しておく。もしも、寒源が襲撃犯は妖狐だとか言ったら、そこでアウト。それは黒幕しか知らない事実だ。
(さて、これからワノ国でオリゾンの話題で持ちきりになる様に頑張っちゃうぞ)
まずは噂で寒源のイメージをダウンさせるのだ。
嫌われ者と書いている新作を主力 一次落ちの各作品はゆっくり書きます




