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みんな大好きB11

 いきなり発生したイレギュラーに、心臓が早鐘のように脈打つ。


「おやっさん! シドウ少尉たちを出すのはまずい! ここは俺が偵察しますから、グラディオスは現宙域から離脱をするよう艦長に進言してください!」


『クソッ! そうするしかねぇか! 待ってろ!』


 こうしてドローンカメラをリモート操縦するというアイデアは、原作にはなかった。


 これまで原作にはないアイデアを出したり、発生するであろうイベントのスパンを早めたりした影響だろうか。


 艦内限定で進めていたはずなのに、ついに想定外のツケの支払いが艦の外で発生するとは。


 ドローンカメラはあと3機。同時には操れない。どれかひとつを選択して追従させたり、ハルモニに協力してもらって操縦した。今回も操縦を2番に切り替え3番を追従。4番のハルモニに託し、ランダム回避運動をしながら敵影を探る。


「くうっ!」


『メカニック・エース。4番が大破。続いて3番が大破しました』


「マジで正確な狙撃だな。このままじゃこれも撃たれる。射角から敵の位置を割り出せ!」


『イェス』


 ところが、待てども待てども、ハルモニは結果を出さない。高性能AIであったとしても難しい………違う。遠いのか。


 そして3番と4番がほぼ同時に狙撃されたというのに、俺が駆る2番はいつまで経っても無事だったことにも気付く。


「撃ってこない? ハルモニ。敵は」


『前です』


「なに!?」


 やられた。


 と思った時には、すでにドローンカメラ2番は、本来戦う予定であったアンノウンCタイプの射程にいて、ギリギリで回避を試みるも、突き出された巨大な前足が掠め、カメラこそ無事だったものの後方の推進器の半分が潰される。


「っ………おやっさん!」


『どうやら、敵さんも知恵を付けたってことかよ。わーった。進言を取りやめ、シドウたちを出す!』


 一転二転する進言に苦言を呈することなく、現場の意見を尊重するカイドウは、俺の合図でパイロットたちの出撃シークエンスを開始した。


 カタパルトで続々と射出されるガリウスFとGナンバーズ。


 姿勢制御もできず、右に回転しながら戦線から離れていく2番のカメラから、ミチザネ隊とアンノウンCタイプの編隊が衝突した。それもグラディオスに近い場所で。辛うじてこちらの数が優っているが、敵に後軍が控えているなら、対象が難しい。


「………光った?」


 ゆっくりと右に回転するカメラで、一瞬だけ捉えた映像から、アンノウンが現れたと思しき宙域でキラッとなにかが光った。またそこまで回転して確認するも、もう消滅していた。


『エース! 5番の準備に5分かかるから、お前は一旦休め!』


 もう2番は使えない。カイドウは新しいドローンカメラをすでに準備させていた。


 プロトタイプガリウスGのコクピットのモニターが、宇宙空間からドッグに切り替わる。


「っは………!」


『メカニック・エースの脈拍上昇。呼吸に乱れあり。バイタルチェック───』


「………黙ってろ、ハルモニ」


 戦場から解放されたことで、ストレスが体を蝕んだ。スナイパーから逃げて、Cタイプとかいう18メートルの敵から殴られた。それをはっきりと視覚から認知した瞬間、俺は息ができなくなるほどの緊張に襲われた。


 体が死を錯覚した影響だろう。目が回る。強引に再開させた呼吸のせいで肺が痛い。血を吐きそうだった。ハルモニがレイシア辺りにナースコールしたらたまったもんじゃない。強引に閉じて黙らせた。


 呼吸を荒げていると、バシュッと空気が弾ける音がして、ハッチが開く。イリスが飛び込んだ。


「大丈夫か、エース!」


「あー、イリス………大丈夫。俺なら大丈夫だから」


「なわけあるか! おやっさんがエースがヤベェことになってるかもしれないって言うから来てみれば、案の定だな!」


「うる、せぇ」


 コンディションが最悪なのは確かだ。隠しようがない。


「イリス。敵は………」


「問題ない。シドウ少尉たちが食い止めてる。今日も勝つさ」


 艦に近いとはいえ、防衛線は強固だ。狙撃タイプがいたとしても、ガリウスGの装甲なら一撃は耐えられるはず。そこからハーモンのタイタンジャケットを装着した四号機が囮となり、射角を割り出したシェリーが狙撃を返す。理想的な報復だ。


「はぁ………今日は、結構疲れたな………」


「落ち着いたのはいいけど、疲れが戻ってきたようだね。本調子でもないのに無茶するから」


「はは………これでも整備士兼パイロットだからなぁ。どっちも限定的だけどよ」


「そもそも兼任するのが頭がおかしいんだ。………そろそろ5番も出る。エース、準備はいいかい?」


「ああ。疲れてるけど、やれる───え?」


 できればヘルメットを取って汗を拭いたいが、隔壁が開閉していて、なによりコクピットのハッチが開いているため、それをすれば命取りになりかねない。


 どこぞのロボットアニメの、宇宙空間でヘルメットのバイザーを開けて叫び出す頭のおかしい主人公じゃないんだから。意識が飛びかけるどころじゃ済まない。眼球が蒸発しかねない。


 汗が鼻筋を伝う不快感を忘れようと、視線をイリスから外してより奥へと向けた時だった。


「いざって時のために七号機を起動しておくか?」


「シドウ少尉を乗せるためってか? 馬鹿言え。ガリウスFはまだ健在だろ」


「でも、Cタイプを相手にどこまでやれるか」


「少尉なら大丈夫だって」


 名もなき整備士たちの、何気ない会話を聞いた。


 その瞬間、俺は血の気が引きそうになった。



 ふざけんな、と。



 今、ここでか?


 その会話は覚えている。第6話Bパート終盤。最後の戦闘の前に発生した。


 あの事件の前触れとなった、まさにフラグ的な。


 また、その予兆は立て続けに俺を揺さぶるのだった。



『敵が増えた!』



『落ち着け! 冷静に対処するんだ!』



 プロトタイプガリウスGのスピーカーから、シェリーとシドウの声が響く。



『テメェら聞きやがれ! ここは俺が守ってやる。なにが来ようが1匹も通さねえ! だからテメェら、俺が止めたら確実にぶっ殺せ! グラディオスを守れェッ!』



 ハーモンの絶叫。


 ミチザネ隊が真の連携を手に入れた。視聴した時は興奮した。


 しかしすべてを知っている俺は、絶望した。


 戦闘前に発生したはずの会話が戦闘中に発生し、俺がまだ実証実験を終えていないのに本番が始まってしまった。


 早い。いや、それとも俺が遅かったのか?


「みんなすごいな………ん? どうしたエース。俺の手なんか掴んで」


「聞いてくれイリス。お前にしかできないんだ。………頼みがある」


 俺にはもう、他の手段なんて上等なものは残されていなかった。


リアクションありがとうございます!

ロボットものの小説書いてて、主人公が整備士ってのもなんですかね。主人公だったら機体に乗せて暴れ散らかすってのをやらせたいところなのですが…

さて、やっと動き出しました。助けられるんですかね、これ。でもついに…

次回は12時頃に更新します! 目指せ今日も7回更新! 皆様の応援を楽しみにして、モチベにしながら書き続けます!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!

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