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みんな大好きB06

 デーテルは誰かから相談を受ける立場も多いだろう。これでも副艦長だ。これでもな。


 俺の隣に座り、腕を組み、足も組み、じっと俺を見ていた。


 その視線が鬱陶しくて、ついラリアットをかましたくなったが、今は我慢。


「異性絡みとは厄介な。………相手は誰だ?」


「ヒナです」


「準天使か………いや、なんでもない」


 チッ。ロリコンかこいつ。


 磨き上げた爪をする汚ぇ指先で触れてみろ? ガリウスのスラスター近くに設置して熱で消毒してやる。


「そうだな。私ならもっと強気に出る。私の声を聞けば、誰だって昇天する。女ならなおのことな。押し倒し、服をゆっくりと脱がせ、そして白い肌に舌を這わせグフフ………」


「チッ。使えねえなコイツ」


「なにか言ったか?」


「いいえ。なにも。強気で出ればいいんですね。わかりました。ありがとうございます」


 危ねえ。つい声に出してしまった。デーテルが自分の世界に浸っていなければ、危うくいつもの流れになるところだった。


 強引にシャットアウトする。これ以上の絶対に叶わない妄言を耳にしたら、頭がイカれそうだった。


 どうしようかね。どうせなら使いようがないデーテルを利用してみるか。例えばシェリーの時みたく、襲わせて俺が助ければ信用が回復する───待て待て待て。そんな男目線でものを考えるのは一番やってはいけない。それではデーテルと同じだ。絶対に破綻する。


 じゃあ別のなにか。ヒナを抜きにして、俺の利益になりそうなこと………お。あるじゃん。


「じゃあ、もうひとつあるんですけど」


「図々しいぞ貴様。私とて暇ではないのだ」


「あ、そうですか。主砲について聞きたくて。おやっさんが見学させてくれるって聞いたんですけど、多忙らしくて目処が立たないんです。案内と説明をお願いできませんか?」


「貴様、耳が付いているのか? 暇ではないと言っただろうが!」


 ふたつ目は無理か。ならもう一度ヨイショしてみるか。


 いや、待て。もっと良い手段があるじゃないか。


「付き合っていられるか! 貴様の妄言など聞くに堪えん!」


「まぁそう言わずに。あ、デーテル副艦長殿。これ見てくださいよ。これをどう思います?」


 すごく大きいです。なんて答えは要求していない。


 端末からとある写真をモニターに出して、立ちあがろうとしたデーテルを釘付けにした。


「………罪深いゴキブリめ。盗撮など、恥を知れ………っ」


「とか言っちゃって。笑顔が隠せてないですよ? 副艦長殿?」


「だ、まれ………!」


 デーテルに見せたのはレイシアの写真だ。


 何度目かの診察でシドウの隠し撮りについてレクチャーを受け、端末を改造してもらい、無音カメラが完成。その記念すべき被写体に立候補したのだ。


 さすがは美女。どの角度からでも絵になる。ただ座っているだけでも完璧だ。


 そこで俺は斜め下かつ至近距離という、まるで抱き上げられる寸前の仔犬目線で撮影した。アングルも完璧。デーテルがそれを証明してくれた。


「あーあ。この写真、消しちゃおうかなぁ。暇すぎるから写真フォルダの整理をして、ついうっかり消しちゃいそうだなぁ。誰かが主砲の見学ツアーをしてくれたら、お礼になる写真をあげようとも思えるかもしれないなぁ」


「………」


 我ながら小賢しい悪党の演技。


 デーテルはレイシアの写真を消すと聞いて「そんな」とか「もったいない!」とか喚いて悶絶し、最後に自分のものになるかもしれないと知って、パァと顔を明るくした。


「元々クランド艦長が俺を案内しろって言ってたしなぁ。おやっさんより先にやれば、評価も上がるかもしれないなぁ」


「………くぞ」


「はい?」


「主砲の見学がしたいのだろう!? 行くぞ!」


 うは。チョロ。


「いいかゴキブリ! 余すことなく見せてやるから目に焼き付けろ! そしてすべてが叶った時、貴様が不要と称した写真を私に献上するのだ!」


「もちろんいいですとも。ふへへ、デーテル副艦長殿もお上手ですなぁ」


「貴様ほどではないわっ。ふん!」


 もう、照れてんのかキレてんのか、わかんなくなってきたな。


 けれど指摘して機嫌を損なうわけにもいかず、一歩下がったところでごま擦りし続ける。


 ガキ大将の傘下にいる狐みたいな気分だ。適当に相槌を打ち、重力制御区画を過ぎて無重力区画に入る。


「主砲は随分と遠いところにあるんですね。ドッグまで過ぎるとは思いもしませでした」


 デーテルとともに主砲の根幹となる区域に入った。ここにもカイドウの部下たちがいて、デーテルを見た際は露骨に嫌そうな顔をしたが、俺も発見することで意外そうな表情に変化した。


 デーテルがヘルメットを被る。俺も手渡されたので、ここは素直に受け取って被った。


「グラディオスが誇る最大の火力だ。まさかオペレーションルームや機関部の近くにあるはずがあるまい」


 あら不思議。適当に褒めてからだと、まともな会話になる。相変わらず偉そうなところに目をつむれば、デーテルは俺の質問になんでも答えてくれた。


 グラディオス最大の火力を誇る兵器たる主砲は、ガリウスの動力とほぼ同型であり、大型化した印象である。グラディオスだけではなく、何世代か前の宇宙戦艦にも同系統の主砲が備わっていた。


 その歴史は浅いが深みがある。


 実はガリウスが存在しなければ、この主砲は建造できなかったのだ。


 核動力以外の半永久機関の実現。アンノウンが襲来する前から宇宙に旅立った人類の助けとなるべく、ひとつのコロニーで、レイライトリアクターというコアが製造され、第二世代ガリウスBに試験的に実装した。


 第一世代ガリウスAはバッテリーを利用していたため出力コントロールと稼働時間の壁という難点があった。


 だがレイライトリアクターを本採用したガリウスBからは目覚ましい戦果を挙げ、そして戦艦にも技術をフィードバックできないかと議題があがり、レイライトリアクターを大型にすることで、巨大なビーム砲にしたのだ。


「撃てるんですか?」


「今すぐには不可能だ」


 知ってる。


 グラディオスはサフラビオロスにランデブーする前にアンノウンと一戦交え、シドウだけでは防衛が追いつかず、損傷を出してしまった。それがこの主砲なのである。


「貴様らを拾う前にアンノウンの攻撃を受け、3割ほど破壊された。ガリウスGの整備と同時進行で修復を行なっているが、まだ………2週間以上はかかるだろうな」


 順当な日数だ。


 俺もそう思う。


 デーテルはさらに進むので、俺もあとに続いた。


次回の更新は15時頃を予定しております!

まずいです。ストックがもう尽きかけてきました。でも皆様からの応援さえあれば、また筆も加速するはず。どうかよろしくお願いします!


作者からのお願いです。

この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!

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