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所詮は子供A08

 本編の第5話冒頭では、差別からくる理不尽を述べたデーテルが去ったあと、ギスギスとした空気が続き、やってきたシドウが一喝して黙らせ、より険悪な空気となった。


 Aパートは演習もまともにできず、むしろストレスのぶつけ合いになり、チームワークに亀裂が生じることになる。


 シドウは頭を抱え、中断を呼びかけて反省会をするのだが、そんな集会に参加するほど真面目ではないハーモンとコウが脱出したり、ヒナとユリンが口論になったり、シドウの説教に反論したソータが喧嘩になり、シェリーはいつの間にか逃げていたりと、悲惨な展開だった。


 しかしいつものモニターを見ると、蓄積したフラストレーションが爆発することもなく、歪ではあるが、以前よりもチームワークが形になっており、シドウの指示にも熱が入る。


 なんと今日はユリンとヒナが、シドウとソータの役となり、ペイント弾で放火を浴びた。されどもパイロット科ではトップな成績をしたふたりだ。ハーモンとコウの真正面からの突撃を回避し、シェリーの奇襲まで回避した。


 結局数分でソータとシドウに撃たれることになるが、整備士たちの表情はとても明るい。「今日の掃除は大変そうだ」なんて笑いながら語っていた。


 すべてが俺の行動によって改善された───とまでは思わない。元々、優秀な面々がパイロットになり、メンタルさえ落ち着ける環境があれば実力を発揮できるのだ。


 すぐに仲良くなれるのも、すぐに喧嘩になってしまうのも、どちらも子供ならではの特徴と言えるだろう。


 俺は少しだけ協力してやった。今はそれでいい。


「さて、と」


「エー先輩? 見ていかないんですか?」


 離れようとした俺をアイリが発見し、声をかける。


「おやっさんから言われたろ。ジャケットの製造に取り掛かるって。だから今のうちに情報を整理して、構想を練っておきたいんだよ」


「でもそういうの、主任の仕事なんじゃ?」


「こういうのも整備士の仕事だろ。アイリはソータたちが帰ってきたら、笑顔で迎えてやりな」


 もちろん、嘘だ。


 アイリはソータにとって欠かせない存在だ。今は自覚がなくとも、きっとそうなる。


 だからできるだけ、側にいさせてやりたいのは本心だ。


 けど、俺の行動は虚偽でしかない。


 ドッグの奥にある、ケイスマンの遺産を調べたテーブルに到着すると、誰もいないことを確認して、腕の端末を起動する。


「ハルモニ。調べてほしいことがある」


『イェス。メカニック・エース。本日はなにをお調べすればよろしいですか?』


「ケイスマン教授が託してくれた、ガリウスGの新装備について」


『マスター・カイドウの指示では、メカニック・エースの仕事はガリウスG四号機のジャケットの製造とあります。そちらの詳細図を提示しますか?』


「ああ、そうだな。けど同時に、別の装備についても検索してほしい。現在、ケイスマン教授が遺したデータの解析率はどのくらいだ?」


『おおよそ、39パーセントです』


 その数字が早いのか遅いのかまでは、俺にはわからない。


 ただ、あれから1週間以上は経過していたし、整備士の誰かがパンクするほどの情報量だと危ぶんでいたこともあり、高性能AIであっても39パーセントなら………やはり早い方なのか? 来週には8割に届くだろうしな。


「そのなかで、現在製造可能な装備はどのくらいだ?」


『約7パーセントです』


「………よし。ハルモニ。これから俺が言う装備を検索。該当するものがあれば記録しておいてくれ。いいか? 条件は───」


 こうして、俺の密かな暗躍の日々が本格的にキャラクターの救済へと向かうのだった。






「エースくーん。ちょーっと質問、いいかなー?」


「あ、レイシアさん。こんばんは」


「はーい、こんばんはー。ていうわけだから、メディカルルームに来てねえ」


「え、あ、ちょ、まだ飯食ってるんですけど!?」


 その日の夜。ソータたちとではなく、和解した同級生らの整備士たちと食堂で夕飯を食べていると、ひょこりと現れたグラディオスの天使ことレイシアに呼び出された。


 やはりレイシアは学徒兵の心を掴んでいるようで、男女隔てなく好印象な反応をされる。


 彼女は笑顔で全員に手を振りながら応え、ついには俺の腕を掴んで連行した。同級生の、特に男子たちから再び刺殺するような殺意を込められた視線を背中に突きつけられる。


「これ、なにかなぁ? LAクラウドを私物化するなんて、いい度胸だねぇ?」


 連行されたメカニックルームで、紅茶も菓子も差し出されぬまま詰問を受ける。


 レイシアの腕の端末から浮かぶ立体モニターには、数時間前に提出したレポートの他に、もうひとつの、しかし無関係なファイルがあった。


「え、えっと………すみません」


「理由、聞かせてもらってもいいよね?」


「それは………」


「それとも、私が勝手にプロファイリングしていいの?」


「うぐ………」


 レイシアの推理はかなり鋭い。クラウドに保存したファイルに閲覧禁止機能は施さなかったが、レイシアに見られたら一発でカイドウに知られてしまう。


 ………いや、待てよ? 閲覧禁止にしていないなら、レイシアは内容を調べたはずだ。で、推理してカイドウやクランドに報告していないなら、なぜ俺を呼び出した? 共犯者だから共有クラウドの存在を伏せたかったというのが大凡の理由だろうが。


「カイドウさんにも知られたくないんだ?」


「いえ………具体的には数日以内におやっさんに見せようかと」


「なんで今見せないの?」


 レイシアはメカニックではないので、整備士事情は詳しくないが、軍属であるため疎くはない。


 俺もひとりの整備士見習いとして、順序で迷っていると考えているのか。なら、今のこの時間は、レイシアによる俺のカウンセリングも兼ねているのか。


「まだ、設計できても正常に機能するとは限らないんです。うまく言えないのは、俺が………そんな話術がないからで。でも、みんなのためにできることを精一杯やりたい。だから、まだ誰にも発見されていないここに保存させてもらいました。俺の個人ファイルなんぞ、すぐ突破されますし」


「お父さんたちがその気になれば、この共有クラウドだってすぐ突破されるんだけどね。………はぁ。なら、いいか。前みたく下心あっての行為じゃないし。でも、あまりこういうことしないでね? 通信記録は残ってるの。レポート程度なら些細な容量だけど、この………装備関連のファイル、すっごい容量だから。今回はハルモニに消してもらってるけど、修復して、指摘されたら誤魔化せないよ?」


「はい。すみません」


 迷惑をかけてしまった。仕方ないことだったと言い訳したいし、あの状況ではこうする以外他に方法がなかった。


 次からは、もっとうまくやらないとな。


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