所詮は子供A03
「カイドウ」
「な、なんだよ」
「フォトロプシーとは、なんだ?」
「………あん?」
『キャプテン・クランド。フォトロプシーとは、サフラビオロスで流行したAIを使用した画像編集アプリの名称です。撮影した写真の編集、インターネットから保存した画像などを学習し、生成することができます。メカニック・エースは上位AIである私を使用し、メカニック・エースの同級生らが腕の端末にダウンロードしたフォトロプシーの画像保存機能をブロックしました』
「………ど、どういうこったぁ?」
カイドウも、もちろんクランドにもエースの行動の意図が理解できなかった。
機械や物理学の知識はあっても、若者の流行には疎いのだ。その度にレイシアに質問することにしている。
今回はエースがハルモニを使って、同級生らに嫌がらせをしたと判断するべきなのか。
「ハルモニ。なぜエース・ノギはそのような制限を設けた?」
『サフラビオロスの記録を遡ると、フォトロプシーは去年、サフラビオロスのアスクノーツ学園で使用禁止となったアプリとして削除されております』
「使用禁止? その内訳は?」
『一部の学生が、センシティブな画像を生成したことが発端とされています。被害に遭った女子学生は多数。裸体はもちろん、根拠なき性交渉時の合成画像を当人の無許可で販売し、摘発されています。しかし禁止になる前のアプリを隠し持ち、当艦のクルーが所持する端末にインストールし、操作していたところをエース・ノギが目撃。画像の保存を禁じました』
「………今のガキって、マジでおっそろしいな」
「………同感だ」
息を呑み、呆れ尽くすカイドウとクランド。
邪推して、危うくエースを咎めてしまうところだった。
『なお、当時の犯人グループは全員退学。サフラビオロスを去っています。志願兵のなかに構成員はいません』
「単にアプリを端末にインストールしただけか。けどよぅ」
「ああ。貸与した端末にそんなものを入れるなど、言語道断だ! ハルモニ! その整備士の名を調べ、呼び出せ! その者たちの所業も調べろ! それで罪状を決める!」
「お、おいおい。落ち着け馬鹿。ガキの息抜きを取り上げるなんざ大人のすることかぁ?」
頭に血が昇ったクランドを諌めるカイドウ。そんなふたりの目の前に、エースが隠しておきたかった画像が一覧として表示される。
保存を禁止しただけで、生成データは残っていたのだ。エースの手落ちである。
年頃の飢えた男子が心血を注いで生成した画像は、とても刺激的で、そして───クランドの怒りのボルテージを数秒でマックスにまで上昇させることになる。
娘のレイシアも被害に遭っていた。隠し撮りされたらしい。どうせカウンセリングの時だ。
「………ふぅ。軍法会議を始めようか」
「すまねぇガキども。これは俺も庇い様がねぇわなぁ」
クランドは断罪の場を設け、カイドウは部下をあっさりと切り捨てた。
とはいえ、未成年の所業である。死ぬことも、追放もありえない。人権剥奪もありえないだろう。
ただ、地獄を見ることになるだけだ。
「んで、エースのやつに貸与してるハルモニはどうする?」
「彼の功績は大きい。それに、彼もこうして我々に行動が知られていると承知していることだろう。周囲には伏せておき、乱れそうになる風紀を正そうとする限り、限定的ではあるがハルモニの使用を許可する」
「違ぇねぇ。それがいいな。奴は底知れねぇなにかがある。もしかすると、それがわかるかもしれねぇしな」
クランドとカイドウはエースを認めつつあるのだった。
数時間後、モヤシみたく変身したあの3人の整備士の見習いたちを発見したエース。中途半端に庇ったエースは顛末を知って、処理が甘すぎたと学び反省。内心で3人に合掌しながら次に活かすと決めた。
デーテルside
デーテル・グレイといえは、誇り高き連合軍が開発した最新鋭の宇宙戦艦、特殊強襲特装艦グラディオスにおいて副艦長を務めるエリートである。
そう。この私のことである。
軍人を輩出してきた誇り高きグレイ家の長男にして、士官学校では入学から卒業まで主席を保ち、常に他を寄せ付けず、誰よりも前へ、誰よりも上へ、道を示してきた。
軍人となってからは、より志しを持ち、より高次元の目標を掲げ、歴史あるグレイ家の創始者から代々続く先祖に恥じることのない軍人となるべく、日々邁進した。
そんな私の功労が認められたからこそ、グラディオスの副艦長に就任できたと言えよう。
出航以降、様々な任務を与えられ、完遂した。
グラディオスには私が尊敬する艦長がいた。極めて優秀で、自分にも他人にも厳しいシビアな性格。まさに私の理想。
メカニックも性分は荒いが仕事をする連中がいる。言葉遣いは相応しくないが、彼らは精鋭だ。
パイロットも、悪くは………ない。
シドウ・ミチザネ。士官学校時代から名前は聞いていた。ずば抜けて優秀なパイロット候補生がいて、成績は私に及ばずとも優秀。ただ、なぜか私たちの相性は良くなかった。グラディオスに配属された唯一のパイロットは暫定でエースパイロット扱い。それはいいが、シドウは周囲から尊敬の眼差しを集める。それは面白くない。
そしてなにより、軍医が素晴らしい。
レイシア・デネトリア。クランド艦長の一人娘にして、学生時代には異性に一切興味が持てなかった私の動悸を激しくさせた、白衣の天使。カウンセラーとしても勤務していて、私も月に一度はお世話になっている。紳士として礼節を重んじ、謝礼を尽くすのだが、なぜかその度に苦笑されている。きっと照れているのだろう。
わかるとも。私は学生時代から優秀だった。事務的な会話をするためにやむなく声をかけた女子たちも、照れたような苦笑をしていたからな。きっと私に話しかけられたことを光栄に思っているのだろう。それを解せぬほど私は歪んではいない。
そのような完璧な布陣に、ある日異物が混入した。
許すまじ失態だ。私は初めてクランド艦長へ軽蔑に近い感情を覚えた。
とはいえ、私が天使と認め、将来は私を支えることに喜びを覚える妻として迎えたい女性の父親だ。私は家族を大切にする。なら、一度の過ち程度、笑って許してやるさ。
異物───学徒兵。
私が認めた完璧な采配を崩壊させかねない危険物。
異物、所謂虫ケラが平然と、我が物顔で艦内を闊歩する。
許すまじ暴挙である。
ならば、私がすることはひとつだけだ。
虫ケラに身分を弁えさせるのだ。
私が声を発して、静聴しない者はいなかった。
ドッグへと向かい、まずは好き勝手をするパイロットを集める。
「集まれ民間人のパイロットども! 3秒以内だ!」
「………はーい」
返事をしたのはヒナ・ワルステッドなる………まぁ、レイシアさんには及ばぬが、少しは胸の高鳴りを覚える容姿をした少女だけで、他の5人はあろうことか文句までたれて集まる。20秒以上も要した。
いったい、なんなのだこれは。
リアクションありがとうございます!
デーテルさんはちょいとアレなひとです。
次回は13時頃に更新します。さて、今日はどんなイラストを作りましょうか。
作者からのお願いです。
この作品は皆様の温かい応援で成り立っております。ブクマ、評価、感想、リアクションなどのありがたい応援を、ガソリンのごとく注入していただければ、作者は尻尾があれば全力でぶん回しつつ筆を加速させることでしょう。何卒よろしくお願いします!
誤字脱字報告、ご質問も大歓迎です!




