表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

89/205

呪われている


「なんだ、と……」


リューンの目が見開いたまま、凍った。


「ムイが、国王陛下の元へ……」

「……ローウェン、嘘だと言ってくれ」

「リューン様、残念です……」


ローウェンが断腸の思いで告げにきたということが、その顔からありありと見て取れる。手には、一枚の紙。ワグナ国の要職についているローウェンの旧友からの、二度目の手紙だった。


「どうして、そのようなことに……いや、そうだ、ムイの名前だ……名前を狙って、ムイを、」


「ムイは名前を渡さなかったそうです。ですから、そのまま国王陛下へと献上されることに決まっ、」


だんっと音が響いた。リューンが両の拳で、机を叩いた。


「献上だとっっ‼︎ ムイは商品じゃないぞっ‼︎」


「リューン様っ」


握り込んだ両手がぶるぶると震えている。唇は噛み締められ、血が垂れていった。ローウェンは、慌ててリューンの名前を呼んだが、リューンの耳には入らない。


諦めて、ローウェンは静かに部屋を出た。ドアの前で、息を吐いていると、中からリューンの雄叫びが聞こえてくる。何かを叩く音に紛れて、泣き叫びながらムイを呼ぶ声も。


ローウェンは耳を塞ぎたくなった。

足早にその場を離れる。


そのうちに、ローウェンは自分の目頭が熱くなっていくのを感じた。


(こんなバカな話があるかっ‼︎ 心を頑なに閉ざしていたリューン様が、ようやく一人の女を心から愛せたというのにっ‼︎)


袖口で、ぐいっと涙を拭う。


(呪われている、呪われているんだっ。この城も、リューン様の力も、そしてムイの力もっ)


ローウェンは執事室へと戻ると、ドアを力任せにバタンっと閉めた。ネクタイを緩めて首から引き抜くと、床にバシッと叩きつけてベッドに転がり込む。


当分、リューンに呼ばれることもないと思い、そのままごろんと天井を見ると、目を閉じた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ