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セブンス  作者: 三嶋 与夢
最終章 ここまで来たぞ 十八代目
335/345

勝算

 ――セントラル王宮跡。


 そこではわき続ける死兵やアグリッサの用意した猿のような獣を前に、初代と二代目が戦っていた。二人が連れている兵士たちも、その場で戦っている。


「いい加減に――くたばりやがれぇぇぇ!!」


 銀色の大剣を豪快に振り回しては、猿を吹き飛ばし、斬り伏せる初代。しかし、相手はいくら腕を、足を失っても即生えてくるような化け物だ。赤い仮面の口からは、炎を噴き出しながら何度でも立ち上がっていた。


 わいてくる骸骨の兵士たちは、二代目が弓で次々に撃ち抜く。二代目の周辺で弓を構えた兵士たちも、次々に敵を撃ち抜いていた。


 そして、初代の兵士たちは陣形もなければしっかりした命令もなく、突撃して骸骨の兵士と戦っている。


「忙しい的当てだな。終わりが見えない。というか、親父――もっとまとまりを持たせろ。バラバラに戦わせるな!」


 大剣を肩に担ぐ初代は。


「知るか! 突撃して叩くのがウォルト家の――ひっ! 母ちゃん」


「え?」


 初代が驚き、二代目が振り返るとそこには薙刀を肩に担いだ女傑の姿があった。イライラしながら二人を見ている。


「……お前ら、並べ!」


 女傑――初代の妻がそう言うと、蛮族だらけの初代の兵士たちが集まってきた。二代目の兵士たちが骸骨の兵士たちを撃ち抜く姿にも、力が入っている。


 そのまま前を歩く女傑は、薙刀を一閃――目の前の骸骨の兵士たちを、なぎ払った。


「さっさとあのエテ公を始末するんだよ。あんたの、唯一の取り得だろうが」


 豪快に骸骨の兵士たちを薙刀で吹き飛ばしていくその後ろ姿に、初代は無言で何度も頷いていた。


「お袋……」


 二代目が懐かしそうに母の後ろ姿を見ていると、二代目の後ろから金属の輪――人の頭部くらいの大きさ――が、数枚回転しながら飛び出していった。


「ちょ、お前も!」


 二代目が振り返って叫ぶと、そこには青い光から登場した一人の女性がいた。右手には金属の輪が数枚浮いており、徐々に回転しながらその速度を上げて低い音が周囲に響いていた。


「面白そうだからきちゃった」


 可愛らしくする妻の姿を見て、二代目は視線を逸らした。若い――二十代前半くらいの姿だが、連れ添った過去があるのだ。若作りをしているようにしか見えない。


「ちょっと痛々しい」


「あ?」


「――良いと思います!」


 すると、女性の後ろには小さな子供がついてきていた。二代目が目を見開く。


「父さん!」


 手を振るその子供は、デューイ。ウォルト家を継ぐはずだった二代目の長男で、初代にとっては初孫だった。


「でゅ――」


「デューイ! そこで見てろ、爺ちゃんの恰好いいところを見せてやる!」


 大喜びの初代により、再会を潰された二代目に行き場のない怒りがこみ上げる。すると、二代目の妻が背中を叩いた。


「あんたも格好いいところを見せてやればいいだろうに。ほら、さっさと目の前の猿と骸骨――それと姑もサクッと」


 二代目の妻の顔が割と本気だった。自分を狙う嫁の言葉に、初代の妻が周囲の骸骨を吹き飛ばして振り返った。


「この水みたいなスープしか作れない女が、私に楯突こう、ってのかい!」


 二代目の妻は、デューイの後ろに移動すると。


「きゃー、お婆ちゃんがママをいじめるの、デューイ」


 孫を盾にされ、額に青筋を浮かべる初代の妻。全員、余裕があった。宝玉のおかげで全員が恩恵――スキルの効果を得ているのだ。


「このアマ――」


「お母さん、お婆ちゃん……仲良くしようよ」


「うん、ママとお婆ちゃんは仲良しよ!」


「――孫の前だ。これ以上は控えてやるよ、このアマ」


 デューイが、三代目とは違う腹黒さのない真っ直ぐな瞳で二人を見ると、二人ともデレデレする。


 二代目は思った。


(三代目は、なんであんなに腹黒くなったのかなぁ)


 ――と。


 そして、初代が大剣を構える。


「孫も見ているわけだ。このエテ公を潰して雑魚を蹴散らさないとな。上はライエルに任せれば大丈夫だろ」


 二代目が呟く。


「またそうやって。まぁ、俺たちが鍛えたんだ。信じてやるとして、俺たちは俺たちの仕事をしますかね」


 二代目も銀色の弓を構えた。特大の矢が出現する。それも何本も。二代目の周囲にも何百と出現した。


 初代が構える大剣も、青い光を発しながらドラゴンの頭部のような形になっていく。剣の形が、ドラゴンの頭部に見えてきた。


「――一撃で仕留めてやる」


 初代の言葉を聞いて、二代目が矢を放った。全ての矢が周囲、そして猿の化け物に突き刺さって爆発を起こす。怯む猿の化け物、周囲の骸骨の兵士が吹き飛ぶと、初代が駆け出す。


「行くぞごらぁぁぁ!!」


 二代目が作った道、そして怯ませた化け物に向かう。それは、二代目が憧れた初代の後ろ姿。初代を守ろうと弓を手に取った二代目は、少し微笑んでいた。


「行けよ、親父」


 大剣を力任せ、豪快に振るう初代は猿の化け物を斬り刻む。そうして最後に、頭部に渾身の一撃を叩き込んだ。


 傾いた床が抜け、猿の化け物がそこに沈む。強力な一撃が化け物を斬り裂き、吹き飛ばし――肉片に変えた。飛び散る血肉の中、初代は大剣を担ぐ。


「おら、次行くぞ、次!」


 笑いながらそう言う初代に、周囲の蛮族姿の兵士たちが片腕を上げて歓声を上げていた――。






「こんな事もあろうかと――ポーターは空を飛べる準備をしていました!」


 荷台部分を切り離し、上半身だけになったポーター。背骨部分が抜け、上半身だけのポーターの背中には空を飛べるようになったヴァルキリーズが担いでいた。


 明らかに飛べるような作りではないが、飛べているので黙っておく。


 ポーターの頭部は、胴体部分の端に寄っている。そのため、胴体部分の真ん中に俺は立つとカタナを持ってアグリッサを見る。


 巨大化したアグリッサの胸元――そこには、ノウェムがだらりと首を下げていた。取り込まれ、徐々に吸収されているらしい。


 ただ、まだ間に合うので慌ててはいけない。俺がノウェムを救出するので、一番問題にしているのは。


「どうやれば心に残る救出になるか。それが問題だ。助け出して抱きしめてキス、の黄金コンボはどうだろうか、エヴァ?」


 同じようにポーターの上に乗っているエヴァは、下を見てガクガクと震えていた。水も駄目なら空の上も駄目。駄目エルフ――それがエヴァ。


「ど、どうでもいいから早くして! 高い! 想像以上に高くて怖い!」


 ポーターにあるとって部分にしがみつくエヴァは、可愛かった。クラーラはポーターの中で。


「どうでもいいです。それよりも……さ、寒いです。凄く寒いです! ライエルさん、早く終わらせましょう」


 ガチガチと震えているクラーラは、早く終わらせて欲しいと懇願してくる。震えている小動物みたいで可愛い。


 ポーターの近くで白いドレスを着て、羽を生やしたモニカはポーターと一緒に空を飛んでいた。ポーターの横でアグリッサからの攻撃を捌いている。


 周囲にはヴァルキリーズもおり、アリアはポーターの左手の上にいた。


「ライエル、いい加減に終わらせるわよ! というか、勝てるんでしょうね!」


 そんな事を聞いてくるアリア。俺は髪をかき上げながら。


「無論だ! このライエル・ウォルト――勝算がなければ戦わない男だからな。勝算は大事だ。ちなみに、賞賛も大好きだ。いつでも褒め称えるように! 俺の心の準備はいつでも出来ている!」


 エヴァが俺を見ながら。


「恰好悪っ!」


 なんと! 勝算のない敵に挑む方が恰好いいのだろうか? いや、待て――俺は恰好いい。そして強い。だから、勝算のない戦いの方が少ないのではないだろうか?


 ――最強であるが故の孤独。俺はそれを実感して少し悲しそうに笑った。


「馬鹿だな、エヴァ。俺にとって全て勝算のある戦いだ。勝てないなら、勝てるようにするだけだ。それがウォルト家! だから最強! そして俺は、そのウォルト家の中でも最高の傑物だと信じている」


 アリアが顔を覆った。


「自分で信じているだけでしょ。いいから、その勝算を話しなさいよ」


 アグリッサが右手をこちらに向けてくると、ヴァルキリーズたちは前に出てシールドを展開した。巨大な光が迫ってくるが、それをはね除けるヴァルキリーズ。


 アグリッサが俺たちを追って、灰色の雲の中へと突き進んできた。周囲には雷が発生し、ゴロゴロと音を立て、時折地上や雲の上に光を発生させた後に、雷鳴を轟かせていた。


「まぁ、ここまでくればいいか」


 セントラル近くからアグリッサを引き離した俺は、クラーラに言ってポーターをアグリッサに向けさせる。


 すると、アグリッサも追いかけっこを止めて俺たちの前に浮んだ。


「逃げるのは止めたのか、ライエル? 私をセントラルから引き離してどうにかなると思っているのかな?」


 余裕の笑みを見せるアグリッサ。その傲慢さを最後まで貫き、呆気なく死んで欲しい。


「あぁ、やはり眠り姫にはキスが一番だ。王道で使い古されているが、それでも俺はそういうシチュエーションが大好きだ!」


 エヴァがガクガクと震えながら。


「か、会話が繋がっていないわ、ライエル」


「すまない。つい、どうやってノウェムを救出すれば、俺に心から惚れるかと考えていた。駄目だな。一番近くにいたのに、心を繋ぎ止められない俺――まぁ、たまにはチョロくない女もいいが」


 他がみんなチョロかったので、少しくらい難易度の高い女がいても良いと思った。


 アリアが持っていた道具を俺に投げつける。


「チョロイ、って言うな!」


 顔を赤くするアリアを、俺は慰める。


「そう怒るな。強く、そして格好良く、金持ち……そして大陸最大の権力を持とうとしている俺だぞ? 俺の前ではみんなチョロイ」


 ポーズを決めて宣言していると、アグリッサが急接近してきた。モニカが前に出て、翼を広げると、そこから細い光が数百も放たれアグリッサに襲いかかる。


「防衛兵器――そんなものまで持ち出すか。貴様、月の墓守だな」


 そんな事を言うアグリッサは、表面を少し焦がす程度だった。すぐに修復されるが、モニカは金色のツインテールを風に流しながら。


「中古扱いとは酷い。これでも新品ですよ。月にいた姉妹たちから、受け取った道具です」


 ヴァルキリーズのコアであるオートマトンたちは、過去に月で墓を守っていた。誰の墓だろうか?


「ふん、ノウェムやオクトーに全て破壊されておきながら、偉そうに。ただ、その程度で勝てるとは思っていないだろうな?」


 アグリッサが両手を広げると、いくつもの光が出現した。そこから放たれる光は、どれも高密度の魔力の塊である。


 俺は左手を顔の前に突き出すと指を鳴らす。


「確かに当たれば消失してしまいそうだ。だから、当たらなければいい」


 アグリッサから放たれる光は、モニカとは違い太い光の塊として俺たちに襲いかかる。――が。


「ワープ」


 それらの光が俺たちに直撃する前に、全て空間に吸い込まれるとアグリッサがガードを固めた。


「舐めた真似を――ッ!」


 アグリッサの周りの空間から、自分のはなった高密度の魔法が襲いかかる。流石に先程のモニカ以上にダメージを与えていた。


 俺はアグリッサを見ながら目を細めた。


「――やはり、全てのスキルを使いこなすのはお前でも不可能か。スキルを作りだしたと言うから警戒していたが、精々がセレスと同じで用意しているスキルを付け替えるのが精一杯。威力は桁違いだが、やり様はいくらでもあるな」


 余裕を見せ、アグリッサを小馬鹿にしたように笑ってやった。


 図星だったのか、アグリッサは。


「それがどうした? 貴様らの攻撃で私を倒せると思うなよ。全盛期には劣ろうとも――」


 俺はカタナを掲げる。すると、周囲の雷がカタナに集まってきた。


「忘れるな。俺もセプテムの血を引いている。これくらいの芸当は宝玉のサポートでいくらでも出来るんだ。クラーラ、俺を投げろ」


 ポーターの右手に乗った俺は、アグリッサに向けて投げつけられた。周囲の雷を魔力で操作し、そのエネルギーをアグリッサに叩き込む。


 それが俺の作戦!


「それがどうした」


 ヒョイ、っと避けるアグリッサ。俺は空の上に放り出され、目標を失い自由落下をするだけ――とはならない! 何故なら俺は――強いから!


「だから、甘いと言っているんだ。――シャッフル」


 アグリッサに突撃したヴァルキリーズと位置を交換すると、俺はそのままアグリッサに斬りかかった。


 流石に自然エネルギーは偉大だ。アグリッサがガードのために掲げた右腕を切り飛ばす。


 斬られた右腕を回収するアグリッサは、すぐに繋げて手を握ったり開いたりしていた。


 俺はそのままヴァルキリーズと位置を交換し、ポーターの右手に回収された。


「痛みは実感できたかな?」


 俺が片目をつむってそう言うと、アグリッサは眉間に皺を寄せ笑っていた。


「あぁ、たまには良いものだよ。だから、お前には何十倍、何百倍にもして返してやろう。そして言っておく。この程度で私を倒せると――」


「思ってはいない。ただ、この程度で終わりだと思わないことだ。何しろ、俺は勝算のない戦いはしない男だからな」


 ポーターは、続いてアリアを投擲した。更に、俺も投擲する。


「シャッフル」


 ヴァルキリーズと位置を交換し、俺とアリアがアグリッサに攻撃を加える。


「ちっ! 小娘――」


 正直、地上に攻撃をすると脅して貰った方が、その特大の攻撃をアグリッサにぶつけられて面白いのだが、相手も警戒しているのかそれをしてくれない。


 地味に削るしか方法がなかった。


 再びポーターに回収される俺と、アリア。エヴァも次第に慣れて来たのか、弓を構えて矢を放った。


「セレクト」


 エヴァの放った矢が、空中で勢いを増してアグリッサの死角に回り背中を攻撃する。


「チマチマと五月蝿い蝿が!」


 相当イライラしているアグリッサを見る俺は。


「――ボロボロになって、お前を助けるためにここまで傷を負った感を出すのはどうだろうか? 満身創痍の俺もかなりグッとくるものがあると思うんだが?」


 ノウェム救出後を考え、その感想をアリアに求めた。アリアは俺を見ながら。


「なんでそんなに余裕なのよ」


 未だにダメージらしいダメージを与えられていないアグリッサを前に、余裕である俺が信じられないらしい。


「言っただろ? 俺は勝利を確信しなければ戦わない男だ、と。勝てるからに決まっている」


 カタナに雷を集め、再びアグリッサに斬りかかる体勢を整えた。アグリッサが、俺を睨み付けてくる。


「人間程度が、私に勝てると本気で――」


 俺は左手の親指を突き立て、自分を指差した。


「思っているさ。なにしろ――俺は、女神に愛された男! 勝利の女神も俺に微笑んでいるんだからな!」


 どうしよう、凄く恰好いい。自分が凄すぎて怖い。自分に惚れてしまいそうだ。


「抜かせ! いつまでも調子に乗るなぁぁぁ!!」


 アグリッサが、俺たちをひねり潰そうと急接近、そして右腕を振るってきた。その勢いは、風圧だけでもとんでもないものだ。俺は指を鳴らし。


「悪いが攻撃を受けるつもりはない。徹底的に避ける事に専念させて貰う。――ワープ」


 ポーターやモニカ、ヴァルキリーズごと、俺はその場からアグリッサの後ろに回りまたチマチマと攻撃を当てていくのだった。


 ――アグリッサの弱点を探しながら。






 ――上空で雷鳴が轟く中。


 ライエルの本陣では、五代目が帰還させたグレイシアとエリザが自分の軍勢に戻って兵士たちを落ち着かせていた。


 立ち直った本隊が、急に士気が上がったのでそれにあわせる形で立て直していたのだ。


 本隊に合流するグレイシアとエリザ。


 それを受けて、ブロア将軍は作戦の立て直しを図っていた。


「今なら建て直せる。わき出る死兵たちを囲むことが出来れば――」


 そんなブロア将軍の隣には、一人の女性がいた。赤いドレスを身に纏い、扇子を畳んで左手にポン、ポンと当てながら用意された椅子に座っていた。


 綺麗な女性だ。ただし、微笑みながらセントラルの崩壊している姿を見て。


「かつての都が崩壊したのは悲しいが、憎きバンセイムに支配された土地だ。それに、私の孫がバンセイムを打ち倒し、帝国を築き上げる――こんなに嬉しいことはない。そうは思わないかな、同志諸君」


 同志諸君――かつて、バンセイムに反乱を起こした騎士や兵士たちだ。バンセイムの建国前に存在した大陸を治めていたセントラス王国の流れを組み、アグリッサの末裔でもある【ゼノア】。


 そんな彼女は、本陣でかつての仲間たちと共に戦いを見ていた。


 当時、酷い状態だったバンセイム王国を打ち倒すために立ち上がった者たちだ。数は多くなくとも、意志だけは強いものを持っていた。


「ゼノア様のお孫様は立派でございます。我々も参戦するべきかと」

「周囲が死兵共を押し込んでおりますな。ウォルト家の歴代でしょう」

「準備は出来ております」


 ゼノアは立ち上がり、扇子を開いた。


「代々守ってきた黄色の宝玉をセレスが蘇らせた。しかし、ライエルがそれを利用して天下に覇を唱えるのならば、私たちも手伝わねばならない。セントラスの残した災いをここで終わらせ、そして正統なる者に大陸を引き継がせる時が来た!」


 整列する軍勢を見ているのは、グレイシアとエリザだ。本体に戻ってきてみれば、何事かと目を見開く。


 ブロア将軍が二人を見て。


「夫人、あのお二人もライエル殿の嫁候補です」


 五月蝿いので、グレイシアとエリザに押しつけるブロア将軍。すると、ゼノアが振り返って二人を見て目を細めた。


「――ライエルの嫁? 随分と多いわね。まぁ、帝位に就くのなら多くても問題ありません。突撃をかけるので供をしなさい」


 そんな事を言うゼノアに、二人とも困惑していた。ブロア将軍の指示を仰ごうと戻ってきたのだ。しかし、ブロア将軍は視線を逸らしたままだった。


「こ、こいつ私たちを売りやがった!」


 グレイシアがそう言うと、ゼノアが扇子をしまって二人の首元を掴んで引きずっていく。


「早くしなさい! 息子の邪魔をしたくないの。それと、ブロードと合流するわよ。あの人も、気が利かないんだから」


 グレイシアとエリザがもがきながら、引きずられていく。


「ちょっ、私よりも力が強い!」


「は、離して!」


 もがく二人に、ゼノアは言う。


「ついてきたら、ライエルの事を教えてあげるわ。それと、ウォルト家に相応しいかチェックしてあげる」


 四代目の妻のようなことを言うゼノア。ウォルト家の女性陣に受け継がれる風習のようなものなのかも知れない。


 ――嫌な風習である。


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― 新着の感想 ―
[一言] 月 金色のツインテール この話以降、モニカの顔をセー○ームーンで想像するようになってしまった・・・
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