未知なる世界へ
旧ケディミナス教国で起こった一連の争乱は、邪神の欠片を召喚した、教祖自らがグレーターデーモンとなり滅ぼされることで終息を迎えた。
旧ケディミナス教国へ侵攻した、パルミナ王国とブランデン帝国は、共に甚大な被害を受け、自国に戻れた兵士は、1,000人を切る有様だった。
パルミナ王国、ブランデン帝国共に、国としての体裁を保つギリギリにまで追い込まれ、国内の統治に長く苦労する事になる。
求心力を失った皇帝と国王は、退位を迫る国内勢力との闘争にも対処しなければならなかった。
トルースタイン共和国とイオニア王国は、同盟を結ぶ事となり、共同で旧ケディミナス教国の復興を行うことになった。
ユキトはグレーターデーモンとの戦いの後、ケディミナス国内を出来るだけ浄化して周った。
大量の濃密な瘴気に曝されて、そのまま放って置くわけには不味そうな場所も多かったからだ。
一月かけて、旧ケディミナス教国を浄化して周りユキトにとって、この地での仕事は終わった。
「サティスー!食料品は買ったっけ?」
ユキトが荷物を片付けながらサティスに聞く。
「はい、三ヶ月分の食料は買って置きました」
「イリスお姉ちゃん!お菓子を買って来ていい~!」
アメリアがイリスに叫んでる。
「ちょっと待ちなさい!私が一緒に行くから!」
イリスがアメリアを追いかける。
メイド服に身を包んだ少女達も準備に追われている。特に彼女達は、全員が抜ける事が出来ない為に、誰がティアについて行くのかで揉めに揉めた。結局、ローテーションを組んで、ユキトが転移を使い交代させる事で落ち着いた。
そう、ユキトはこの大陸を飛び出し、外の世界の探索に出ることを決めた。
トルースタイン共和国も暫くは安泰だろう。
まだまだ爺ちゃん達も現役だ。
全ての準備が終わり、ユキトが旅立つ時がきた。
「身体には気をつけるんじゃぞ」
ノブツナの言葉に目が熱くなる。
「うん、爺ちゃんも元気で。時々転移で帰って来るよ」
「生水は飲むんじゃないよ」
「バーバラ婆ちゃん、もう子供じゃないよ」
バーバラは、ユキトを何時迄も子供扱いだ。変わらぬ優しさが身に染みる。
「強ぇ魔物を見つけたら報せろよ」
「分かりました。見つけたら報せに帰ります」
ヴォルフさんは何時も通りだ。
「ユキト君、また会おう」
「はい、アイザックさんもお元気で」
「本当は、一緒に研究をして欲しかったのですけどね。まぁ、私も暫くは国の事で研究どころじゃないですが」
「フィリッポス先生には、色々と教えて頂きありがとうございました」
「おーい!ユキトー!出発するぞー!」
ドノバンの野太い声が響く。
ドノバンは、飛空船の操縦が気に入ったのか、ユキトに着いて来る事になった。
「じゃあ、皆さん!お元気で!また会いましょう!」
ユキトが飛空船に乗り込むと、静かに船体が浮き上がり。南に舵を取り離れていく。
ユキトの冒険は、今始まったばかりである。




