土木作業員 ユキト再び
ロンバルドの城壁の外側に広がる小麦畑の横で、ユキトは新しい畑の造成に励んでいた。
ゴゴゴゴゴゴーーーー!!
大地がうねり地面の表層が耕されていく。
「はぁ、ロンバルドはこれでお終いかな?」
「はい、次はカンパネラの新規開墾ですね」
ユキトが開墾を終えた畑を前にひと息ついて、サティスにスケジュールの確認をする。
「じゃあ行こうか」
ユキトはそう言うとサティスの手を取り、カンパネラに転移する。
ユキトはトルースタイン中を周り、新規開墾や水路を引いたり、農道整備を国中を周り、精力的に行っていた。
昨日までは大量の家を土魔法で造っていた。
ユキトが土木作業で忙しいのは、ケディミナスからの難民や移住を助けた住民が、暮らしていけるよう、農地と家を造っているのだ。
ユキトが連日土木作業を集中的に行っているのは、この先難民がもっと増えるだろうと予測しているからだ。
大量の家を建て終えたユキトは、ドアや窓などの細部を職人達に任せ、今日の作業を終える。
翌日、ユキトは一旦建築や開墾作業を休み、山の麓に来ていた。
「ユキトお兄ちゃーん!もう行って良いー!」
子熊型ゴーレムに乗ったアメリアが、ユキトにもう出発して良いか聞いてくる。
今日はユキトとサティスだけじゃなく、アメリア、イリス、ティアと彼女率いるメイド達もこの場に居る。
「わかったよアメリアちゃん、無理しちゃダメだよ。ルドラとジーブルそれにエリンもアメリアちゃんを頼むね」
「クルゥ」
『お任せ下さい』
「キュー」
アメリアの護衛に、グリフィンのルドラ・キングエイプのジーブル・青龍の子龍エリンを付けた。
「ティア達も無理しないでね。ヴァイスとバルクもティア達を頼むよ」
「ユキト様、ご安心下さい。己の身は己で守れてこそのメイドですから」
ティアがそう言うが、それは既にメイドじゃないんじゃないかと思うユキトだった。
『心配には及びません。我等が常に周囲を警戒していますので』
『我等も日々の鍛錬は行っていますから、ティア殿方の護衛はお任せ下さい』
ティアと彼女率いるメイド達には、カイザーウルフのヴァイス、スケルトンロードのバルクを護衛に付けた。
「いってきま~す」「行って来ます」
「「「「「行って参ります」」」」」
ユキトとサティスを残し、方々に散って行った。
彼女達が、護衛を連れて何をしに行ったのかと言うと、ケディミナスとトルースタインを陸路で繋ぐ山越えの街道近辺の魔物狩りをするためだ。
やがて来る戦乱で、ケディミナスからの避難民が出来るだけ安全に逃げて来られるよう、危険な魔物を山狩りしようということになった。
そして残ったユキトは何をするかというと、あいも変わらず土木作業だった。
ゴゴゴゴゴゴーーーー!!
狭い道が広がり固められていく。今現在、細く険しい山道が、ドンドン拡幅されていく。
「これって斜面の落石や崩落防止もしておかなきゃダメだよな」
「そうですね、大きな落石は道を塞ぎかねませんから、安全の為にもお願いします」
ユキトは斜面を固めながら山道を拡幅整備して行く。所々に休憩所代わりになる広場を作りながら頂上を目指して作業を進める。
「ふぅ~、さすがに疲れたよ」
頂上までたどり着いたユキトはへたり込む。
「お疲れさまでした。お茶でもどうぞ」
サティスがタオルとお茶をユキトに渡す。
「トルースタイン側は万全だと思うけど、この先に手を出せないのが歯痒いね」
ユキトが整備したトルースタイン側は、道幅も広がり斜面の崩落や落石の心配もない。しかしケディミナス側は手を出せない為、依然細く険しい危険な山道のままだ。魔物の駆除も出来ていない。
「これ、こっそりと整備しちゃおうかな」
「問題ないと思います」
ユキトがボソッと呟いた言葉に、賛同する声が聞こえる。
「ティア達は終わったの?」
ユキトに合流したのは、ヴァイスとバルクを連れたティア達メイドだった。
「ケディミナスも今は、大軍が行軍出来ない山越えの道を注視していないと思います。魔物の駆除を含め問題ないかと」
ティアの言う事ももっともだ、戦後にケディミナスがどうなっているかも分からない。ならやりたいようにやるか。
「アメリアももっと魔物を狩るの!」
そこにアメリアとイリスがルドラ達と共にユキト達と合流する。
「そうだな、考えるより先ずやってしまおうか。ただケディミナスの連中に見つからないよう注意して行動してくれ」
「は~~い!」
アメリアの元気な返事をかわきりに、ケディミナス側の魔物の駆除をするため散って行く。
ユキトも頂上反対側の山道の整備を始めた。
日が暮れる頃、ケディミナス側の麓に到着し、全員が揃った所で、ロンバルドに転移して戻った。
後日、トルースタイン共和国へ逃げる難民達は、ユキトの整備した道と、アメリア達が魔物を駆除していたお陰で、安全に避難することが出来るようになる。




