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忙しい日常

 魔物の大氾濫跡に建設された街、ヘリオス郊外で黙々と土魔法を駆使している青年がいた。


 ゴゴゴゴゴゴーーーー!!


「……川の治水工事って大変なんだね」


 ゴゴゴゴゴゴーーーー!!


「そうですね、この川は大きいですからね。だから頑張りましょうねユキト様」


 ユキトが単調な作業に飽きてきて愚痴を言うと、サティスがユキトの尻を叩く。


「でも昨日も一昨日も治水工事か開墾作業を一日中してるんだよ。そろそろ物作りの時間も欲しいかな~なんて……」


「カンパネラの開発計画を進めなければいけませんので、当分ユキト様には土木作業をお願いすることになります」


 サティスからこの後のスケジュールを聞かされガックリとするユキト。何か違う切り口で逃れられないか考える。


「……そうだ!最近、ティアやアメリアちゃんが絡む事件があったじゃないか。怪しい奴らの侵入を防ぐ魔道具を作るなんてどうかな」


「魔物の侵入を防ぐなら分かりますが、商業都市群で他国からの有象無象の者達の侵入を防ぐのは不可能です」


「うっ……」


 サティスの正論に、それ以上言えなくなってうな垂れるユキト。仕方なく粛々と土魔法を使い続ける。膨大な魔力量を背景に、あり得ないスピードで開発を進めていく。


 結局、ユキトが土木作業から解放されるのは、二週間後になるのだった。





 久しぶりに自宅の工房に籠る事が出来たユキト。ここ商業都市群の特性上、他国からの侵入を防ぐ事が不可能な事はユキトにも分かっていた。そのうえで、アメリアちゃんが被害に遭いかけた事件や、ティアが始末した不審な侵入者の事もあるので、何もしないのは不安だった。


「さて、久しぶり難しい課題だな」


 街の中の見廻りにも限界がある。兵士は順調に増えているし、訓練もノブツナやヴォルフのお陰で順調なようだ。


(見廻りの兵士関係はヴォルフさんか爺ちゃんに任せるとして、兵士に持たせる装備関係か街の異変を監視出来る仕組みを考えた方が良いか……)


 先ず武器や防具等は、ドノバンに任せることにして、それ以外の物を考える事にしたユキト。


「制圧用に弱目のサンダーなんかが撃てるロッドがあっても良いかも。後はアメリアちゃん達に造った護衛ゴーレムを改良して、見廻り用のゴーレムがあっても良いな……」


 ブツブツと独り言を呟きながら、考えをまとめていくユキト。誰かに見られると引かれそうだが、基本ユキトが工房に籠る時には、集中しやすい様に用事が無ければ誰も入って来ない。


 大体の考えがまとまると、早速試作にかかる。


(ロッドは、サンダーに限定して短くコンパクトにして、装備するのに邪魔にならない様にしなきゃな)


 ロッドの素材も、比較的手に入れやすいトレントを使用。魔晶石をはめ込み、連続してサンダーを放てるようにして、自然界の魔素を使って魔晶石に魔力を補充する術式を刻む。


「うん、こんなもんかな。後で爺ちゃんとヴォルフさんに渡してテストしてもらおう」


 サンダーを発動寸前でキャンセルするのを繰り返し、発動スピードを確かめる。後は実際の現場でテストしてもらい、意見を聞いてからブラッシュアップしていこうと決め、次に何を作ろうかと考え込む。


(巡回する一部隊に対して一体のゴーレムを造ろうか……、番犬じゃないけど、探索索敵に特化したゴーレムがあればかなり使えるよな)


 先ずユキトは、大型犬サイズの犬型ゴーレムを作り始める。骨格や人工筋肉は、アメリア達に造ったゴーレムの廉価版にして、後で魔道具職人が作り易い様に心がけた。ただ、ゴーレムの制御術式はどうしてもユキト頼りになるのは仕方がない。現状ではユキト並みにゴーレムの制御術式を刻むことが出来るのは、フィリッポスかバーバラ位である。


「え~と、探索索敵系に特化するのは決定だけど、一応多少の戦闘能力も必要かな。う~ん、魔法障壁とサンダー位で良いか」



 試作した犬型ゴーレムを起動して、隅々までチェックを繰り返し一応の完成とした。


(犬型ゴーレムだけじゃ探索範囲が狭いかな………、鳥のゴーレム?うん、良いかもしれない)


 ユキトは犬型ゴーレムに続き、鳥型ゴーレムの製作を決め設計を始める。犬型と違い、空を飛ぶゴーレムの製作なので、慎重に設計をする必要があった。


 骨格は鳥の骨格を基に、中空にして軽さと頑丈さを兼ねた物にする。ユキトのイメージは、闇夜を音も無く滑空する梟だ。ユキトが仕舞い込んでいた素材から、実際の梟型魔物の羽根を使い、その外観は梟そのものに見える。梟の目には暗視と遠視能力を加え、探索索敵系の能力は犬型ゴーレムよりも特化した方向にした。


「おぉ、カッコ良いかも」


 起動した試作梟型ゴーレムを見て、自画自讃するユキト。


 ユキトの指示に従い、工房の中を飛び回る梟型ゴーレム。その羽音がほとんど聞こえない事に満足する。


「巡回警備一部隊に、犬型ゴーレム一体と梟型ゴーレム一羽でチームを組めば街の警備は安心かな?後は、梟型ゴーレムからの映像を受け取る事が出来るようにすればもっと良いか」


 伸びをして身体をほぐし、犬型ゴーレムと梟型ゴーレムを10体づつ製作していく。


 10部隊分のゴーレムを作り終え、久しぶりに工房に籠もれたユキトは満足して1日を終えた。

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