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そして英雄が生まれる

 ユキトの膨大な量の魔力が練られ魔法が放たれる。


「メテオ!」


 天空から灼熱の隕石が降り注ぐ。


 ドドドドドドォーーーーン!!!!!!


 広範囲にばら撒かれた隕石が空を飛ぶ魔物を巻き込み、着弾地点にクレーターを作りその余波が魔物を巻き込み吹き飛ばす。跡形も無く潰された魔物や吹き飛ばされた衝撃波で死んだ魔物、隕石の熱で焼かれた魔物が散乱するが、生き残った魔物が後から後から押し寄せる。


 ユキトはマナポーションを飲み干し次の魔法を準備する。


「ファイヤーストーム!」

「ウインドストーム!」

「ウインドストーム!」


 土煙りが晴れる前にバーバラがファイヤーストームを連続して放つとサティスとアイザックがウインドストームを放ち炎の勢いが増す。


「ファイヤーストーム!」


 ユキトは両手を広げ魔物の群れの両端に炎の竜巻を二本作り出すと炎の竜巻をコントロールして移動させる。ユキトが手を合わせると両端から真ん中に移動して来た炎の竜巻が一本に合わさり回りの魔物を巻き上げ焼き尽していく。


 炎がおさまったとき大量の魔物が焼け死んで特に中央辺りは死体すら残さず灰になっていた。

 森からは足の遅いゴブリンやオーク、オーガなど人型の魔物や大型のトカゲの様な亜竜が出て来る。

続けてサンダーストームで追撃する。



 半分はいったかな?ユキトが一息ついて広範囲に索敵する。ユキトはまだ魔力量に余裕があるが、サティス達は、範囲攻撃の魔法を、使い続けるのは厳しいと判断する。


「アグニ!」


 ユキトが巨大な赤龍を呼び出す。


『待ちわびたぞ』


 魔法陣が輝き、巨大な赤龍が姿を現わす。


「好きに暴れて良いよ」

『我が力の限り戦おう!』


 アグニが、魔物の群れに突撃する。


「ジーブル!ヴァイス!ルドラ!行くぞ!」


 声を掛けて走りだす。


 走るユキト達の頭上を魔法の槍や矢が飛んで行き魔物の群れに突き刺さる。


 ユキトは一気に距離を詰めると右手で太刀を抜打ち横薙ぎに振るうと魔物が二体まとめて斬り捨てられる。同時に左手でアイスバレットをばら撒く様に撃ちまくる。刀と魔法を使い驚く程のペースで魔物を殲滅していく。時折蹴りや掌底を放ちながら殲滅スピードを上げていく。ユキトはまるで舞うように流れる様な太刀捌きを見せる。斬っても斬っても次々に襲いかかる魔物に平常心を保ち魔物を斃す事だけに集中して行くユキト。何時の間にか右手に【焔】左手に【迅雷】を握り二刀を振って魔物を両断して行く。

 魔物からの攻撃を躱すと魔物の身体がズレ落ちる。

回避と攻撃をひと呼吸で行なうユキト。

 瞬く間にユキトの周りに魔物の死体が積みあり、ユキトは次の獲物を探して走りだす。






 シュン!ズバッ!ガッ!


 ルドラが空を舞台に暴れ回る。風の刃を飛ばし鋭い爪が魔物を斬り裂く、襲いかかるワイバーンにブレスを吐き焼き殺す。大空はルドラの一人舞台だった。空を飛ぶ魔物がいなくなると地上に向けて急降下を繰り返しその度に魔物を葬っていく。





 ドンッ!バァン!ガンッ!


 ジーブルが六角棒を振り回す。一振りする度まとめて魔物が叩き潰される。ジーブルより一回り大きなオーガやトロールを物ともせず叩き潰していく。正面からトロールが棍棒で殴り掛かるのを半身に避けると六角棒を頭に叩き込み、トロールの頭を潰し息の根を止める。休む事なく次の獲物に向かい、オークナイトの盾ごと叩き潰す。

 『我に再び戦いの場を与えてくれた主に感謝を!』

 六角棒を振り回し次の獲物へ駆ける。





 シュン!ズバッ!ザンッ!


 ヴァイスが高速で動き回り氷牙と氷爪が魔物の首を斬り飛ばして行く。その背中からエリンが氷のブレスを吐いて魔物を凍らせていく。ゴブリンやオークの首が飛びエリンが亜竜をブレスで凍らせる。ヴァイスがアイスジャベリンを放ちオークロードの腹に突き刺さる。次の瞬間オークロードの首が飛んだ。

 『戦いは、スマートじゃないといけません。』

 更に加速するヴァイスにどの魔物も反応すら出来ずに死んでいく。





GAOOOOOON!!!


 アグニが鋭い爪で斬り裂きその巨体で踏み潰す。

尻尾で打たれブレスで焼かれていく魔物達。

 アグニが咆哮する度に魔物の動きが止まる。

 ゴブリンやオーク、オーガでさえもアグニの身体に傷ひとつつける事が叶わない。ただ一方的な蹂躙が展開される。

『そんな攻撃まったくきかぬわ!』

 尻尾で魔物を薙ぎ払うと魔物が纏めて吹き飛ぶ。




 シュン!ザンッ!シャッ!


 無駄のない動きで魔物を斬り続ける。

 ノブツナが刀を一閃する度、魔物の首が飛び上半身がズレ落ちる。ちらっとユキトを見て。

「我が孫ながら凄まじいな」

 ユキトの無事を確認するとノブツナはギアを更に上げていく。





 ドガッ!バン!ドガッ!


 ヴォルフの拳が唸り魔物の頭を胸を破壊していく。

パンチの一発一発が蹴りの一撃が全て必殺の一撃となって魔物を襲う。

「まだまだ、弟子には負けられねぇな!」

 魔物の頭を爆散させながら戦場を駆ける。





 シュン!シュン!シュン!シュン!


 サティスはひたすら魔法弓を撃ち続ける。

 自分を救い居場所をくれたユキトと共に生きる為に、空を飛ぶ魔物もサティスの魔法の矢から逃げられない。マナポーションを飲みながら魔法弓を撃ち続ける。





ハンス side


 なんだこれは、魔物の領域の調査じゃなかったのか。蓋を開けてみれば魔物の氾濫に出くわした。

しかもユキト達が魔物を殲滅し始めた。俺はフィリッポス先生の護衛の役割を与えられたが、俺の所へは殆ど魔物は流れて来ない。何故なら銀と黒のゴーレムとスケルトンロードが少し前に出て積極的に戦う事で後衛の護衛をしていたからだ。

 さらにドノバン様がハンマーを振り回し要所要所でフォローしていた。俺は気合をいれ大斧を握る手に力を入れ前に出る。

 ゴーレムやスケルトンに出来ることが俺に出来ない訳ない。ユキトの先輩の俺がやれない訳がない。


 ハンスは大斧を振り回し魔物を叩き潰す。





ある冒険者パーティーのリーダー side


 俺は夢を見てるのか? 今自分の目の前で起こっている事が信じられない。

 俺たちはギルドから依頼を受けて魔物の領域を調査する為に此処まで来たんだが、其処には先客が居た。前の大氾濫の時の英雄の一人、ロンドバル高等学院の学院長が自警団の一個中隊を率いて丘に布陣していたんだ。聞くと彼等も魔物の領域を調査する為に来ていたようだった。

 そして肝心の調査の結果は最悪の結果だった。魔物の気配があり得ない程大量に感じる。今にも魔物が溢れ出そうだ。そう、魔物の氾濫が起きたんだ。

俺は、学院長に早く逃げた方が良いと忠告しようとしたんだがその時現れたのが彼等だった。

 子供の頃から知ってる物語で読んだ英雄、六英雄が揃って現れたんだ。でも本当の驚きはその後だった。スケルトンロードにキングエイプとカイザーウルフさらにグリフィンのユニーク個体を引き連れ現れた少年。キングエイプやカイザーウルフ、漆黒のグリフィンという伝説級の魔物を連れたあの少年は何者なんだ。さらにその少年は何処からか鋼鉄のゴーレムを出すと六英雄と共に配置に着いた。

 学院長の魔法が呼び水になり魔物が波のように押し寄せるが、俺達は逃げる事も忘れて立ち尽くしていたんだ。

 何故ならあの少年から信じられない規模の魔力が溢れだし引きつけた魔物に天空から隕石が降り注いだ、そのあと俺は考えることを放棄した。

 その直後、爆炎の魔術師バーバラ様と聖人アイザック様それとエルフの少女のファイヤーストームとウインドストームが魔物に放たれた、その時またもやあの少年が信じられない事をした。ファイヤーストームを二本同時に発動して、しかも動かしたんだ。俺は戦士だから魔法はそれ程詳しくはないが、アレが非常識なのは分かった。

 彼等は最初の魔法攻撃で、およそ半数の魔物を葬って見せた。だけど絶望的な状況に変わりはない、半数でも1万は残ってるんだ。だけどあの少年、そうユキトと呼ばれた少年が今度は巨大な赤龍を召喚したんだ。それからは、ユキトと呼ばれた少年と彼の召喚獣達、そして剣聖ノブツナ様、拳王ヴォルフ殿達による一方的な戦いだった。

 後ろからは、バーバラ様とエルフの少女が魔法と魔法弓で攻撃し、その前でスケルトンロードとゴーレムが魔物を止めていた。自警団や俺たちの所に、辿り着けた魔物は10本も居なかった。





ロンドバル自警団員 side


 ロンドバル都市同盟は、4つの都市を中心とした準国家の様なものだ。王や皇帝を置かず議会によって運営されている、種族間差別も殆どない平和な街だ。

 ただ、何も問題が無いわけじゃない。ロンドバルには自警団しか戦力らしい戦力がない。有事の際には冒険者ギルドに、戦力を期待しなければならない現状だ。自然自警団の仕事は多岐に渡る。

 今も俺達は六英雄の一人、フィリッポス様と魔物の領域の調査する為にこの場に訪れた。だが俺達を待っていたのは、魔物の氾濫が起きるという事実だった。

それを知って俺達は悲壮な覚悟を決めたんだ。ロンドバルは俺達の街だ、家族や知り合いが沢山いる。ここで一匹でも多くの魔物を倒して街に向かう魔物を少しでも減らさないと。

 誰もが生を諦めた時、俺達の前に一人の少年が前回の大氾濫から姿を消していた残りの六英雄と共に現れたんだ。およそ2万を超える魔物の氾濫を六英雄と一人の少年、彼に付き従う召喚獣によって殲滅してしまった。動く魔物が居なくなり静けさを取り戻した戦場に立つ少年を見る俺の頬を涙が流れていた。

 街を俺達を救ってくれた英雄に、心からの感謝の涙なのかもしれない。







シュン! チン!


 太刀を鞘に収め周りを見渡す。

戦場から音が消え静寂が訪れる。



「ルドラ!バルク!ジーブル!ヴァイス!エリン!アグニ!皆んな無事か!」

『怪我一つありません』

『サティス様も無事です』

『エリンも疲れたようだが無事だ』

『この程度朝飯前じゃ』


良かった、爺ちゃんとヴォルフさんも無事だな。


サティスの所へ急ぐ。


「サティス!大丈夫だったかい」

「ハイ、バルクが護ってくれましたから」

「婆ちゃんとアイザックさん、フィリッポス先生も無事だね」

「なんだい、アタシ達はついでかい」

「そんな事ないよ、婆ちゃんが心配だからドノバンさんにもフォローして貰ったんだから」

「まあ、そういう事にして置いてあげるよ」


フィリッポス先生がやって来た。


「お疲れ様でした。ユキト君達はこのまま森を1キロ程伐採して後退させて下さい。私は冒険者達を連れて一旦ロンドバルに帰ります。冒険者ギルドに魔物の後始末を依頼として出して来ます。自警団には先行して魔物の後始末をして貰います。あと出来ればメテオの跡を整地して貰えると嬉しいのですけどね」

「そうですね、ボコボコですもんね。伐採した木材は如何します?」

「一箇所に纏めて置いて下さい。あとこれを渡して置きますね」


 フィリッポス先生が、見た事ある魔道具を出してきた。


「この魔道具は例の防壁を作るものですね」

「はい、このサイズを基準して防壁を作って下さい。私も直ぐに戻って来ますから」


 フィリッポス先生が冒険者のパーティーを連れてロンドバルに転移して行った。



 ルドラ、ジーブル、ヴァイス、エリンとアグニは、食事中だ。

 爺ちゃんとヴォルフさんが戻って来た。


「ユキト、ご苦労だったな」

「あぁ爺ちゃんもお疲れ様」

「おぅユキト随分とレベル上がったろ」

「うん、40台だったレベルが60超えたよ」

「また豪快に上がったな~、レベルの高い俺が上がったくらいだからな」


 レベルが60を超えステータス上で、レベル100超えの爺ちゃん達に並んだけど、スキルの熟練度や圧倒的な経験の差でいまだ勝てる気がしないけど。

婆ちゃんにだって魔力量だけは圧倒的に僕の方がうえだけど、繊細なコントロールや引き出しの多さではまるで敵わない。


「僕らも食事にしようよ。サティス準備して!」

「ハイ、ユキト様」



 その夜は自警団の皆んなと宴会になった。


 


 その日、ロンドバル都市同盟に一人の英雄が生まれた。

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