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ユキト準備する

 結局ハンス先輩は、ヴォルフさんの訓練を受けに週に何度か通って来る様になった。ハンス先輩は、自警団志望なので、今後氾濫が起きるかもしれない現状、戦力が増えるのは良いと思う。



 僕はというと、今冒険者ギルドに来ていた。

 空いている受付を探して並ぶ。直ぐにユキト達の順番がまわってきた。


「あの、登録をお願い出来ますか」

「お二人ですか?ではこちらの魔道具にステータスカードを当てて下さい」


 受付のお姉さんが対応してくれて、言われた通りステータスカードを当てると、魔道具に付いていた魔石が光り、魔道具から小さなタグが出てきた。続けてサティスがタグを受け取ると、受付のギルド職員のお姉さんがチェーンを取り出した。


「このチェーンをタグに通して下さい」


 僕とサティスは、タグにチェーンを付けて首からかける。


「では説明させて頂きます。そのタグは冒険者証になります。タグには名前とギルドランクのみ記されています。ギルドランクが上がるとタグの色が変わります。Fランクの白からEランクの黄色、Dランクの水色、Cランクの緑色、Bランクの茶色、Aランクの黒色、Sランクの赤色と変わります。

 ギルドランクは、ギルドへの貢献度により上がっていきます。依頼ごとにそれぞれポイントが設定されています。例外はありますが、ランク指定の有るもの以外、基本的にどの依頼も受けることは可能です。ですが依頼失敗にはペナルティがありますので気をつけて下さい。二回連続の依頼失敗はランクダウンの対象になります。また高ポイントの依頼には、難易度が高い依頼や納期の都合上、失敗の許されない依頼などには、ランク指定されている場合があります。

 ランクが上がると、消耗品や装備品の購入時にランクに応じて割引きで購入する事が出来ます。

 魔石の納品は常時依頼になっています。詳しくは此方の冊子に記されていますのでお持ち下さい。私からは以上です。今日は何か依頼を受けていかれますか」


 受付のお姉さんが、長い説明のあと聞いて来る。


「いえ、今日はこのまま帰ります」


 本当は、魔石や魔物素材を売るだけなら、商業ギルドで間に合うのだけど、冒険者ギルドは、魔物の出現率の変化や各国の動向の情報が、手に入りやすいから情報収集の為に登録しておくように、フィリッポス先生に言われて登録に来る事になった。


 ユキト達は掲示板の依頼を眺めたり、魔物の討伐依頼が増加しているかなど、職員に聞いてからギルドをあとにした。



 登録を済ませて街を出ると、スッカリ大きくなったルドラとバルク、ジーブルを連れて魔物狩りだ。


 もう何度も来ている場所、ロンドバルから離れ旧ラスケス王国跡地まで転移して来ていた。嘗て王都が在った場所は、その半分を森に呑み込まれていた。ユキト達は、魔物の領域の境界を少し入った辺りで、魔物を狩り続けていた。


「やっぱり魔物との遭遇率が高いな」


 シュン! ズハッ!


 袈裟斬りで一体を仕留めると、刀を返し逆袈裟に斬り上げて次の一体を斃す。

 オークの群れを相手にしながら、ジーブル達に声を掛ける。


『そうですな、魔素の濃度が魔物の領域というのを差し引いても高いですな』


 ドガッ! バキッ!


 ユキトの問い掛けに応えたのは、鋼鉄の上にアダマンタイトをコーティングした、3mの六角棒をその重量を物ともせずに振り回すのは、体長2m50cmの身体に鋼鉄の胸当てと籠手、脛当てを付けた猿王ジーブルだ。


 ズハッ! ガッ、ズハッ!


『魔素溜まりが出来やすい状態ですから、魔素溜まりが出来ると一気に魔物が溢れ出すでしょうな』


 盾を巧みに使い、サティスの護衛をしながら確実に魔物を仕留めるのは、漆黒の鎧で身を包む骸骨騎士バルク。


 シュ! シュ! シュ! シュ!


 バルクに護られながら、魔法の矢を放つ魔法弓を引いて黙々と魔物を射続けているサティス。

漆黒の金属の身体を持つ、ゴーレムのギガスがその背後を護る。


 その少し横に白銀のゴーレム、タイタンがハルバートを振るっている。そのタイタンの頭の上に、小さな青龍エリンがしがみついて氷のブレスを吐いている。



「クルルルルッ!!」


 上空では、空を飛ぶ魔物を相手にルドラが無双していた。既に大型の馬車馬ほど大きくなったルドラは、自分よりあきらかにに大きいワイバーンを風の刃を飛ばして瞬殺していた。


「よし、ここまでにしよう素材採りは後からするから全部集めてくれ。僕がアイテムボックスに入れるから。終わったら一旦退却するぞ!」「ハイ!」

『『了解しました』』

「クルルルゥ!」


 魔物の領域の外側に出て、少し離れて休憩する。

ルドラがワイバーンを鋭い爪で掴んで飛んできた。


「ルドラの獲物だから食べて良いよ。エリンにも別けてあげて」


 キューーー!


 早速エリンが飛んで行き、ルドラとワイバーンを食べ始める。ジーブルはオークナイトを食べている。


「みんなレベルが40を超えて、安定感がでてきたな」

『主、エリンの護衛を兼ねて、あと最低もう一体召喚獣を増やしませんか』

「確かにサティスの護衛をバルクがするとして、婆ちゃんの護衛にタイタン。アイザックさんにギガス、あとエリンに護衛が居ればもっと安定感が増すな」


 あれ、なんか忘れてるな……そうだフィリッポスさんも後衛職だったな。


「フィリッポスさんの護衛を考えると二体欲しいか」

『そうですな、二体増えれば我等の陣容も厚みが増すでしょう。主が新たなゴーレムを造るという手もありますが』


 





 ジーブルの助言を受けて、新たな召喚獣を仲間に加えるために、魔物の領域から離れ召喚魔法を使い、新たな召喚獣を得るため、見本の羊皮紙片手に召喚陣を描いていく。

 魔法陣が描かれた側にユキトが立ち、その両脇をバルクとジーブルが固める。さらにその背後を、タイタンとギガスの二体のゴーレムとルドラがエリンを頭に乗せて控える。


「じゃあ、いくよ!」


 ユキトが魔法を発動させると、魔法陣が光り体長3mを超える銀狼が現れた。ユキトが左手で鞘を持ち鯉口を切り腰を落とし何時でも抜き打つ準備をする。


『私を召喚したのはそこの少年か、では契約に移ろう。私に名を贈るのだ』


 狼の魔物が、早速契約を促してきた。

 えっ……闘って力を示すんじゃないの?


「あの、……闘わなくていいの?」

『猿王にグリフィン、さらにスケルトンロードまで従えた者を相手に、ワザワザ力試しをする程戦闘狂ではないからな』

『クックックッ、相変わらずだな狼王』

「知り合いか?ジーブル」

『顔見知り程度には』

『少年よ、契約は良いのか?』


 そうだ契約しなきゃ……うん、決めた。


「君の名前は、ヴァイスだ」

『ふむ、我が名は狼王ヴァイス、貴殿を主とし忠誠を誓う』


 光と共に消えたヴァイスを再度召喚する。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


ヴァイス 240歳 雄 カイザーウルフ


レベル:48

称号 :狼王

HP :2600/2600

MP :700/700

筋力 :880 (+50)

耐久 :800 (+50)

敏捷 :980 (+50)

知力 :580 (+50)

魔力 :360 (+50)



スキル 

体力回復強化 身体強化Lv7 

威圧 再生 空歩 直感 頑強

隠匿Lv6 気配察知Lv7 氷魔法Lv5


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


『主よ、今日はこのままもう一体召喚契約に臨まれるか?』


 ジーブルが聞いてきた。


『もう一体だと?……私の他にも召喚する積もりなのか。我が主は、何故そこまで力を求める』


 ヴァイスが怪訝に思ったのか、ユキトに聞いて来る。


 ユキトは、ヴァイスに何故力を求めるかを説明する。もう直ぐ起こるであろう、魔物の領域より魔物が溢れ出る氾濫。その溢れ出た魔物が、ロンドバルと言う街へ流れ込むであろう事、その後に予測出来る各国からの侵略。自分達はその未来を変える為に、氾濫を凌ぎきり現在魔物の領域となっている場所を解放し、街を再建して、その街を色々な種族の人達が平和に暮らせる場所にしたい事を伝えた。


「僕を育ててれた爺ちゃん達は、六英雄と呼ばれる位凄い人達だけど、三人は後衛職だから護衛出来る戦力が欲しかったんだ」

『なるほど、魔物の氾濫が起るとなれば1つの魔物の領域から溢れ出る数を考えれば、戦力は多いに越した事はないな。大陸に覇を唱えるでなく望むは民の安寧か。面白い我が主に相応しい』

「今日はもう帰ろうか、召喚するのは魔力が万全な時の方が良いだろう」

『主よ、私にも猿王今はジーブルと言ったか、ジーブルの様に武器を頂けないか。自前の牙と爪でも問題はないが、殲滅スピードを上げる為にあれば有難いのだが』

「確かに一理あるね、うん……面白いのが作れるかもな。帰ってドノバンさんと相談して作るか」


 ユキトは皆んなを送還して家に転移する。


「「おかえりなさいませ」」

「おかえりー!」

「ただいま」


 ティアとイリスその後からアメリアに迎えられる。


「ちょっと工房に行くね」


 工房に行くと丁度ドノバンさんが居たので、仲間になったヴァイスの武器の相談をする。


「口に咥える片刃の剣で、魔力を込めると属性剣になって、込める魔力によって刃の長さが伸びる武器って出来るかな?前脚にも魔力の刃を出す装備が欲しいんだ」

「ふむ、口に咥える方はミスリル合金で作れば魔法剣は問題無かろう。前脚の分は剣にするのか?」

「横から一本の爪がある感じに出来ないかな?」

「爪も伸びれば良いのじゃな。三日くれるか」

「ありがとう、お願いします」




 ヴァイスの装備が出来るまでの間、ギルドの討伐依頼を受けたり、魔石を納品してポイントを稼いだりして過ごした。ヴァイスとの連携も問題無いレベルになったと思う。


 ヴァイスと言えば、ヴォルフさんと狼繋がりなのか変に仲良くなっている。名前も似てるからかな。

そして今僕は、街から大分離れた場所に魔法陣を描いている。


「よし、間違いは無いかな……うん、大丈夫だ」

『では配置に付きます』


 ジーブルが言って、それぞれ配置につく。

 さて、なにが出て来るかな。


 ジーブルが僕の横で六角棒を担いでる、反対側に居るバルクが大盾を持ち剣を構える。ヴァイスも新装備を着けて待機する。その横でルドラがエリンを乗せている。さらに僕は、がアイテムボックスからタイタンとギガスを出す。


「じゃあ、いくよ!」


 ユキトが魔法陣に魔力を流す、魔法が発動して魔法陣が光りだす。あっ不味い、やばいのが出て来そう。

何時もにも増して巨大な存在を感じ取り、すぐに攻撃出来る様にユキトは魔力を練り始める。


 現れたのは、全長10mはある赤龍だった。赤い鱗に赤みを帯びた金色のたてがみと、頭には二本の角が生えている。


 僕はドラゴン相手に、どこまで通用するか分からなかったけど、全力で魔法を放つことを決めてさらに魔力を練り込み放とうとした。


『我を呼びしは、其方か小さき者よ。我を従えって、ちょっとまて!ストップ!ダメ!其れはダメな奴!お願いだからちょっと待つのじゃ!』


 赤龍が慌ててストップをかける。


 ユキトは、赤龍が現れる前から練りに練っていた、魔力を大量に込めた雷魔法Lv5の《トールハンマー》を放つ寸前だった。


『フゥ~、危ない危ない!お主儂を殺す気か~!さっき何の魔法を放とうとした!』

「イヤ、トールハンマーだけど」

『言い方が軽いわー!そんな魔力で撃たれたら灰も残らんわ!』

「だって、力を見せなきゃいけないんでしょ」

『限度があるだろう…本当に近頃の子供は……』

「いや、子供って……それで続きはどうするの?」

『はぁ~、付き合いが悪いのう。早よう名前をつければ良えじゃろう』

「じゃあ、アグニね!」

『……軽過ぎるじゃろぉ』


 そのまま光に包まれ消えていく赤龍。


「……なんか、呼びだすのを躊躇うな」

『『『………………』』』


 ユキトは、もう一度アグニを呼びだす。


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


アグニ 640歳 雄 赤龍


レベル:82

称号 :赤龍王

HP :4800/4800

MP :8800/8800

筋力 :1800 (+50)

耐久 :2400 (+50)

敏捷 :1200 (+50)

知力 :1000 (+50)

魔力 :1060 (+50)



スキル 

体力回復強化 身体強化Lv9 

威圧 再生 飛行 直感 頑強

気配察知Lv7 火魔法Lv5 ブレス(火属性)


~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~


「……よろしく、アグニ」

『扱いが冷たいぞ!年寄りは敬うべきだと思うぞ』

「これからも色々お世話になります」

『そうそう、最初からそう言えば良いのじゃ』


 ユキトは、サッサと送還する。

 アグニが光の中に消える。


「護衛には使えないね」

『……何か色々残念な方でしたな』


 ジーブルが酷い事を言ってる。


『見た目とのギャップが酷いですな』


 ヴァイスの言う事も、もっともだ。


『誠に……』


 バルクは、呆気にとられている。


「帰ろうか、サティス」

「ハイ!」


 強力な仲間を得た筈なのに凄い疲れた。早く帰ってお風呂入って寝よう。

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