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ギルドつくったった

 連日つめかける相談者の列に、メルルは頭を抱えていた。


「メルル様、いっそのことギルドを立ち上げてはいかがですか?」


「ギルド?」


「はい、問題を抱える者がクエストを発注し対価として金銭や物資を払います。稼ぎたい者たちがクエストを受注、解決することで依頼主から対価を得るのです。最近はメルル様は直接下知を下すまでもないことが増えてきましたし、問題解決を民たち同士で解決しあってもらうのです」


「それいいかも!」


「都のに丁度いい空き家があります。そこをギルドに改装すれば、メルル様の負担も減るかと思います」


「よし!作ろうギルド!」



 ルシールの提案をあっさり承諾したメルルは即日にギルドを発足させた。

空き家は分裂したスライムの手を借りれば数時間のうちに完成し、城に押し掛けた相談者に向けてそちらに向かうように兵たちが指示を出した。

 ギルドの発足は功を奏し、連日メルルの元へ詰めかけていた民たちは自分たちでクエストを受注し、また金銭や物資に困った民はそれらを喜んで受注していた。


 しかし、問題はあった。

それらの事務処理をする人員が足りず、城内にいた兵士たちも駆り出されていた。

慣れない事務作業に悪戦苦闘しながら、事務作業に追われる兵たち。時にはその不慣れから民に叱責を受けるものまでいた。


「クエストが頼めないってのはどうゆうことだよ!」


「申し訳ございません、ドラゴン退治の受注は行えなくなっております…」


 若い事務員が男に怒鳴り散らされていた。

男は威圧するように声をあらげ、対応する女の事務員は平謝りするばかりだ。

謝ってばかりで話が進まない男は余計に腹を立てて怒鳴り声をあげた。

対応する事務員は今にも泣きだしそうな顔をして、再び頭を下げた。


「ったくよぉ!魔王様がなんでもしてくれるって聞いたから、こっちは遠路遥々きたんだぜ!宿代だってもう払っちまってるのに、クエストが頼めないなんてどうしてくれる!」


「も、申し訳ございません!」


「何か問題ありました?」


 そこに現れたのはギルドマスターを務めるルシールだった。

男は急に現れた魔族にビクついたが、それがギルドの代表であると分かると再び声を大きくした。


「こっちはクエストを頼みに遠路はるばるきたんだ!なのに、頼めないってのはどうゆうことだよ!」


 男が手にしたクエスト依頼書を取り上げて目を通す。

依頼名目に『ドラゴン討伐』の文字を見つけると、ルシールは手にした紙をビリビリに破いた。


「な、なにをしやがる!」


「ドラゴン退治は受けられません。ここの受注者は多くが戦闘経験のない民ばかりです。ドラゴン退治でしたら、他のギルドか王政に頼みなさい」


 面子を潰された男は感情任せに殴りかかろうと拳を作った。

突き出された拳を片手で受け止めると、握った拳を潰さないばかりに力を込めた。


「イテテテテテ!手が!手が折れる!」


「調子こいてんじゃねぇぞ人間!こちとら魔王様の善意でやってんだよ!テメェみたいなゴミクズがくるところじゃねぇ!」


 手を放し男が膝をついて崩れそうになった所をルシールの蹴りが男の腹に直撃した。


「とっととこの男を摘まみだしな!」


「イエスサキュバス様!」


 控えていた兵士が男を摘まみだすと、ルシールは対応していた女に声をかけた。

泣き出しそうな女の頭を軽く叩き大丈夫かと声をかける。女は返答せずにぽろぽろと涙を流して無言で立ち尽くしている。


「ちょっとおいで」


 涙を流す女の肩を抱くとルシールは事務所へと連れ出した。

事務所のソファに腰をかけさせると、隣に腰かけ落ち着くまで背中を撫でた。


「あなた、名前は?」


「プラム…です…」


 嗚咽まじりの声にルシールは頭を撫でた。

プラムと名乗った女は自分の不甲斐なさと、兵士を志願したのにやりたくもない仕事をやらされて嫌気に涙を流した。


「私、本当は兵士として…ぐすん…立派な兵士になりたかったんです……でも、王はいなくなって、魔王様に代わって、私は兵士にも何者にもなれず…どうしたらいいのかわからないんです」


 両手で涙を拭うプラム。

どうしたものかと考えるルシールだが、魔王が命令した以上は絶対だ。


「魔王様の命令である以上は仕事はこなしてもらわなきゃならない。でも、もしさっきみたいに困ったことがあれば私も魔王様も協力します。今日はもう休みなさいプラム」


「うぅ…でも、まだ仕事が…」


「いいの。傷ついた女の子を無理に働かせるわけにはいかないわ。今日はこのまま帰って酒でも飲んでなさい」


「うぅ、ありがとうございます…サキュバス様」


「いつまでも泣いてんじゃないぞ」

 

 笑いながらプラムの額を小突いた。

その笑顔はプラムにとって魔族なのに天使のように見えた。

魔族であるが、自分のことを親身に考えてくれるルシールに、プラムの胸はキュンと締められる思いがした。


 ぼんやりとした頭でプラムは帰宅の準備をしていた。

そこに現れた事務員がプラムに声をかけたが、ぼんやりとしたまま生返事しか帰ってこない。


「おい大丈夫かプラム。サキュバス様に怒られでもしたか?」


「うぅん、違うけど…ハァ」


「あんまり仕事が合わないようならサキュバス様か魔王様に頼んで変えてもらったらどうだ?なんなら俺も一緒にかけあってやるぜ」


「大丈夫。もう少し…頑張る」

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