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どんどん貢ぐがよいぞ

 翌日、魔王が課す税に対して少しでも負担を軽くしてもらえるようにと画作した町長たちは、その手に貢物を持って魔王の城を訪れた。

金銀の財宝、街で取れる特産品、歴史ある骨董品、中には生贄として女を連れてくるものすらいた。

持ってこられた品々は玉座の後ろに山を築き、メルルは何をいうまでもなく物資や貴重品を手に入れた。


「随分貢ぎ物もってきたね。いやーありがとう。なんだか悪いね」


「とんでもございません、ただ、税のことについてなのですが…」


 町長の一人が恐る恐る口を開いた。

これから何を言われるのだろうと、町長たちは精神が潰れそうだった。

中には土地柄あまり物資が取れない町もある。税を払えなければ何を差し出さなければならないのかと答えのない悩みをもつ者も少なくない。


「そうだった。あなたの町は何が取れるの?」


「私の町は海沿いにあります。なので漁業が盛んにおこなわれており、毎月城に一定量の魚や海藻を納めていました」


「そうなんだ。新鮮なお魚が取れるのはいいね。今の時期は何がとれるの?」


「今の時期でしたら、アーマードフィッシュなどが産卵の時期ですので、肥えて卵をもったアーマードフィッシュが多数取れます。鱗は固いですが、揚げると大変美味です」


「そうなんだ。じゃぁ毎月これだけ持ってきて」


 メルルは三本の指を立てた。

言葉にされずに手で示された数に、町長はどれほどの数を収めればならないのかと考え、頭を重くした。

300キロ?3トン?いいや、魔王のことだからもっと桁が多いかもしれない。

町長は聞くのが怖くて口を開けずにいた。

しかし、そこは聞かねばならない。町を治めるものである以上、上の指示は飲み込まねばならない。


「魔王様、失礼ながらそれはいかほどの数でしょうか…?」


「30匹。私とルシールとスラちゃんくらいしか食べないし、毎月30匹持ってきて。新鮮で身のいいやつね」


 町長は頭が真っ白になった。

30匹。途方もない数を想像していたのに対し、メルルの言った数はその遥か下である。

そんな極少量だったら、一日と掛からずに調達が出来てしまう。

以前の王と比べても遥かに少ない数に、町長は頭の整理がつかない。


「魔王様、わたしの耳が遠いようで、申し訳ないのですが、今30匹とおっしゃいましたか?」


「うん。30匹。毎月、月初めに持ってきて。あと、お魚は時期によって美味しいものが違うでしょ?だから、季節が変わるごとに旬の魚に切り替えてね」


「わ、わかりました」


 どんな表情を作っていいか分からずに、町長は城を出た。

背を丸くして無表情に口を開けて出てきた町長に、周囲の住民や同じように魔王を訪れたものは、一体何があったのかと町長を見つめていた。


「30…確かに30と。30。30かぁ………フフ、ハハ、フハハハハ!!!」


 あぁ、ダメだこいつ完全に壊れている。

周囲はとんでもない数を要求されたのだろうと察して、溜息をつきながら視線を反らした。

だが、町長の胸の内は心が軽々しすぎて、今にも踊りだしそうな気分である。

 30匹など1時間も漁をすれば取れてしまう。

たったそれだけの数を治めるだけで済む。考えもしなかった魔王の言葉に町長は何度も先ほどのやりとりを反芻していた。

 彼の町は以前は毎月王に多量の魚を治めていた。治める量が多いあまりに残りを自分たちの町に流通させるのが限度だった。しかし、これからは余った魚を他の町へ流通させることも出来る。

つまり、他の町に魚を卸すことで金を得ることが出来る。それが出来れば今迄以上に町を発展させることにも繋がる。


「我が町は。我が町は救われたー!」


 一刻も早くそれを伝えたくて、町長は駆けだした。

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