マッチョな爺とロリスライムリターンズ
城へと戻ると火口付近に見慣れない後ろ姿があった。
筋肉質な身体に白髪の男が城へと唯一繋がるボロボロの橋を前に立ち往生している。
「誰だろう、あれ」
「見慣れない姿ですね。王の手のものにも見えませんし」
「ちょっとあの人のとこに降ろして」
「はい、魔王様」
空を舞う二人に気づいた見慣れない顔は親しげに手を振っていた。
白髪に白い髭を生やした老人だ。しかし、やはり二人には面識の覚えはない。
「魔王様、急な訪問で失礼します」
老人は頭を深々と下げ、二人に笑いかけた。笑う口には白い歯がキラリと輝いている。
「ごめん、誰?」
「私です!以前、魔王様に果実を与えていただいた町の町長でございます」
あぁ、と思い出したメルルであったが、その時の記憶では町長は細身の老人であったはずだ。ここまで筋肉質であった記憶はない。
「見間違うのも無理はありません。ひ弱だった私ですが、あの果実を毎日食すことで私の肉体はここまで筋肉質になったのでございます」
そう言って町長は自慢げに二の腕の力こぶを見せつけた。
「飢餓に苦しんだ我々でしたが、おかげさまで今では皆活力に溢れ、町も再建出来てきております。あれ以来、皆自分の筋肉を活かしたい一心に町を広くし果樹園を作ろうと計画しております」
笑う顔に白い歯がきらめく。
筋肉がついたことで精神的にも変わったのか町長は笑顔が絶えない。
「そんな変わるんだね、ここで立ち話も何だし、城の中入りなよ」
サキュバスの足に捕まり、町長も玉座の間へと足を踏み入れた。
玉座の前に跪くと、町長はメルルが去ったあとのことを話しだした。
「あれより勇者エリザ様は意識を戻し、国へと戻られました。私たちが洗脳されていると最初は思っていたようですが、その誤解も溶けたようでした」
「そっかそっか。そりゃ良かった」
「王に支配されていた時とは比べ物にならないほどに住民たちは笑顔を取り戻しました。これも魔王様のおかげです」
「もっと褒めていいよ」
ヨイショされてばかりいたメルルは通常の褒め言葉だけでは満足しなくなっていた。
フンスと鼻息を鳴らすと、鼻を高くして腕を組んだ。
魔王である己に自信を持ち、もっとより讃えられたいとさえ思っている。
「魔王様に命を救われました。皆心より感謝しております」
「良い良い!これからも私を称えるといいよ!」
「ははぁ」
「あ、そうだ。昨夜ね森にスライムの城が出来たの。果樹園を作ったなら、そこにも果実届けてあげてくれる?」
「お安いご用でございます」
「場所は城から降りるときに森の中の城が見えると思うから、そこに届けてあげて」
「かしこまりました。さすればさっそく町に戻り果実を届けるよう手配致します」
「よろしくねー」
急激な変化を見せた町長は城を出ると走って山を降りていった。その走りはとても老人には見えずまるで現役の選手のようだ。
「さてさて、これからどーするかなぁ、ん?」
町長を見送り、再び玉座に腰掛けるとメルルはスカートの中に違和感を感じた。
何か冷たいものが足に当たっている。
スカートをおもむろに捲りあげてみれば、スライムの少女が中に潜り込み、足に張り付いている。
「んまぁ!魔王様♡下半身をお見せになるなんて大胆!···ってスライムのガキャァ!なに魔王の御御足に張り付いてるの!」
「スライムちゃん!いつから居たの?」
「ごめんなさい、魔王様、別れ際に分裂して付いてきちゃいました」
「早く離れてくれる!?」
くっついたスライムをサキュバスは無理やり剥がすと勢い余ってスカートまで一緒に引っ張ってしまいスライム諸共引き剥がしてしまった。メルルはパンツを丸出しにしながら、その場に腰を落とした。
「魔王様!なんて素敵な格好!じゃなかった、お怪我はありませんか!?」
「魔王様大丈夫!?」
「大丈夫だよ。丈夫な尻で良かったわ···」
尻をさすりながら立ち上がると、サキュバスは引き剥がしてしまったスカートを差し出し、頭を下げた。
「にしても、どうしたのスライムちゃん、森はいいの?」
「はい、私の分裂体が城を守ってますし、魔王様の傍にいたくて。···駄目、ですか?」
「全然。むしろ丁度良かったよ。サキュバスと二人だと安心して寝れなかったからさ。これからはスライムに私の貞操を守ってもらおう」
「貞操を···ですか?」
「いやあああああ、私と魔王様の二人だけの愛の巣なのにぃいいいい」




