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16 第二王子「言葉遊びじゃないのだぞ」

「父親に会わせろと仰っていますの。国王陛下に委ねていると答えたのですがどうやら父親の登場を待ちたいようですわ」


「奴らがそれを望んでいるということも国王陛下に判断していただくことも報告を受けました。ですが国王陛下が奴らと当主たちを会わせるとは思えません」


 キリアは訝しみと疑問と複雑な渋顔をする。


「わたくしもそう思いますが彼らは違うようですわ」


「はぁ。どこまで甘く浅はかなのだ。これで兄上の側近だったとは恥ずかしくはないのか? 兄上が不憫でならない」


 キリアが眉を寄せるとそれを見ただけで側近たちはビクリと肩を震わせた。キリアが側近たちの不甲斐なさを諦めたように鼻で息を吐いた。


 先程キリアたちが入ってきた後ろの扉が開きムーガが入室してくると皆が緊張の空気となる。ムーガが国王陛下からの伝言を持ってきたことは明白であるからだ。


 ムーガはエーティルとキリアの間に顔を近寄らせ二人にだけ聞こえるように言葉を発する。エーティルとキリアはうんうんと頷きながらムーガの話に耳を傾けた。しばらくしてムーガが二人から顔を離す。


「わかった。ご苦労だった」


「はっ!」


 キリアとムーガが形ばかりの挨拶を交わす。


「お前たちの父親である当主たちは国王陛下が召集なさり質疑することとなった」


 側近たちは互いに肩を叩き膝を叩きして喜びを分かち合う。その姿にまわりは驚きを隠せない。


『父親がこの件に関わってきたというだけで助かった気でいるのかしら? どこまで人頼りな方たちなの?』


 エーティルでさえも顔に出さないが動きを止めて彼らを見つめてしまうほどである。


「ん、ん」


 ムーガが小さな小さな咳払いをして裁判長席の空気を戻す。


「あー……。というわけであるが、二人から事情を聞かぬ訳にはいかない。黙秘や隠し事をしても意味はない、いや、心象を悪くすると思え」


 二人は満面の笑みをキリアに返して首肯した。


「続きから聞く。

なぜあの者とエーティル嬢を対峙させようと思ったのだ」


「あ、あそこまで話をわかっていないとは思っていなかったのです」


「第一王子殿下を自由にせよと宣ったそうではないか。お前たちがあの女を唆したのではないのか?」


「とととととととんでもないことですっ!

それにウェルシェ嬢は『殿下を自由にしてくれ』ではなく『殿下の自由にしてくれ』と言っておりましたっ!」


「何だその言葉遊びのような言い訳は……」


 キリアがついつい呆れ顔を晒してしまうほど幼稚な答えだ。


「殿下の希望を言うことは可能だと聞いていたのであの女がそれをエーティル様にお伝えする程度だと思っていたのです。

『側妃のことは殿下の自由にしてくれ』と。

それに我々はあの女とほとんど話もしておりません」


「話をしなかっただと? 第一王子殿下の側妃にと考えたのなら人となりを知るべきではないのか? そして人として問題があるようなら徹底的に反対するべきなのではないか?」


「て、天真爛漫でラオルド殿下はあの笑顔に癒やされているようにお見受けしたので」


 ソナハスは落ち着きなくキョロキョロとしているだけで口を開こうともせずドリテンの顔を見上げながら袖を握っている。ドリテンはその視線に助けを求めようとしながら懸命に紡いだ。


「天真爛漫であれば何でも赦され側妃になれると考えていたと……」


 休憩前の話に戻ってしまいそうになりエーティルは急いでキリアの膝に手を乗せた。キリアはふぅと大きく息を吐き出し落ち着こうとする。

 慌てたのは側近たちですぐに誤魔化そうとする。


「い、いえ! そういうわけではないのですが確認不足であったことは確かです。申し訳ございません」


 初めてドリテンから謝罪の言葉が出たが頭も下げずに薄ら笑って口だけ謝る姿が父親によって助けてもらえるからという後ろ黒い心が見え隠れして尚更に白い眼で見られている。

 謝らないソナハスも引き攣り笑いを見せて逃げおおせる気概が見れて取れる。


「ほぉ。そうか……」


 キリアはこれ以上聞く必要性を感じなくなってきていた。

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