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第148話 本物の怪物

やはりまだおーちゃん不足

 炎のような髪を振り乱し、ドルーアンは露出の大きい格好のままカナンへと殴りかかる。

 しかしその体には高温の炎を纏っており、先程までとは比べ物にならない破壊力を持っていた。


「くっ……!」


「どうしたどうした貧乳! さっきまでの威勢はどこいったの!!」


 動きは読める。しかし、近接で殴り合うということはその炎によるダメージも受けてしまう。

 再生能力のおかげで多少の火傷は即時回復しているが、あまり芳しい状況ではない。


「しょうがない、おーちゃん!」


『ああ、分かった』


 カナンの身体を薄い氷の膜が包み込む。

 おーちゃんが氷による結界を張ったのだ。多少は炎を防げるだろう。


 しかし。


「何を小癪なぁ! はああああ!!!」


 ドルーアンは更に火力を上げる。

 このままでは薄氷の結界でも防げないし、カナンですら危険かもしれない。

 だからカナンは


「このっ、暑苦しいのよっ!」


 ドルーアンを一本背負いで投げ飛ばした!


 熱を纏っても、基本の立ち回りが改善した訳ではない。カナンはドルーアンの隙を見つけて投げたのだ。


 更に投げるだけでなく追撃も欠かさない。


「はあぁぁ……」


 カナンの口の前に紅い雷の光弾が造り出される。

 それを両手で包み込んで魔力を練り、体ごと横に一回転してから掌と共に解き放つ。


 雷弾は細く光線のように持続し、ドルーアンを直撃した。


「ふん! こんなもの、効かないもんね!」


 それを竜化した片手で受け止める。ドルーアンには全く効いていないようだ。

 だが距離を取りたかったカナンにとってはオマケみたいなもので、別にこれでダメージを期待していた訳ではない。


 そして、ドルーアンの反撃が来る。


「くふふ、少し楽しくなってきた! まだまだ燃え尽きないでよね?」


 ドルーアンの口が裂け、顎が部分的に竜化する。

 そこに真っ赤な超高温のエネルギーが円形に集束してゆく……。


「げ、これはヤバ――」


炎竜衝波動砲(フレインドラゴカノン)!!」


 次の瞬間、ドルーアンの口から超高温の光線が放たれる。

 光線は上から森を一直線に切るように一瞬にして薙ぎ払う。

 そして光線が通った軌跡から、時間差で大爆発が起こった。

 その光景は、まさしく災禍そのものであった。


「ふふ、楽しくなってきたわ」


 光線を間一髪避けたカナンは、再びドルーアンに向き合った。

 光線により出来上がった炎の壁を背に、カナンは不敵な笑みを浮かべる。


「くははっ……!」


 ドルーアンもまた、嬉しそうに笑っていた。









 *






 上空から、爆発するような音が何度も聞こえてくる。だが木々に阻まれ、空で何が起こっているのかを見ることはできなかった。


 魔導戦闘学科のジムは、姿の見えない敵を追いかけ奮闘していた。


「くそー、まちやがれ!!」


 がさがさと茂みから音はするものの、姿は見えない。魔法で攻撃しても手ごたえはなく、やはり音を立てて逃げるだけ。


 それが罠だとは露程にも思わず、ジムは森の奥へと誘われてゆく。


「そこだああぁぁ!!」


 そうして茂みに蹴り飛ばした炎のボールが炸裂すると、今度は手ごたえがあった。


「へへ、どうだ……」


 しかし。


「隙ありぃ!!」


「ぐふっ!?」


 ジムの胸から緑の鱗に覆われた手刀が飛び出した。

 背後に回り込んでいた、蜥蜴人(リザードマン)による攻撃だった。


「単純脳ミソは騙しやすくて助かるなぁ!」


「てめぇ……! くそおおぉ……」


 ジムが攻撃して手ごたえを感じていたのは、自切した尻尾。

 蜥蜴人は自らの尻尾を切り離せるのだ。


 急所を貫かれ、ジムの敗北は濃厚に思われた。


 しかし。


「……なんてな」


「何ぃ!?」


 突如、蜥蜴の腕が燃えだした。

 炎は腕から身体へと渡り、その肉体を焼き尽くそうという勢いで燃え盛る。


 ――ジムは炎の上位精霊の人化種族『焔人』である。


 焔人の特性として、ドレナスやドルーアンには劣るものの炎系統の魔法と非常に相性が良い。

 また、種族の固有能力として肉体を炎に変える(・・・・・・・・)事ができる。


「熱っちちゃぎゃあああ!?」


 手刀を引き抜き、燃え盛りながら踊る蜥蜴人の少年。

 炎は数秒ほどで収まり、辛うじて退場(リタイア)は免れた。


「へへ、ざまあみやがれ」


「くそ……」


 双方共に満身創痍。膠着状態が続くかに思われたそこへ、突然何かが降ってきた。


「つつつ……」


「ね、姐さん!?」


 降ってきたのは真っ赤なトライテールの髪に黒いマントの下はビキニパンツのみという格好の少女。


 仙術科の怪物、ドルーアンだった。


 空から最強の敵が降ってくる。そんな最悪な状況にも関わらず、相変わらずジムはバカであった。


「おい、お前大丈夫か? その格好、追い剥ぎにでも襲われたのか?」


「はぁ? 何言ってるのきみ? ぼくは――」


「丁度よかった姐さん! こいつをちゃちゃっと倒しといてくださいよ!!」


 蜥蜴人の少女がドルーアンにすり寄る。

 しかしドルーアンは首を横に振った。


「悪いけど、今ぼくそんな余裕ないから。今すぐここから逃げた方がいいよ」


「へ?」


 次の瞬間。

 ドルーアンを中心に、大爆発が巻き起こった。

 側にいた蜥蜴人の少年は爆風に巻き込まれてしまい、退場(リタイア)となってしまった。


 幸いジムは離れていたため、巻き込まれずに済んだのだが……


「か、カナン!?」


 爆発の正体は、雷を纏いドルーアンめがけて空から突っ込んできたカナンであった。


 カナンは地面に倒れたドルーアンの顔を掴み、そして空へと軽々ぶん投げた。

 その顔は不気味な笑みを浮かべており、ジムの声など届いていないようだった。


 そしてドルーアンを追って再び空へと飛び立つと、上空でまた爆発音が断続的に鳴り響く。


「ヤベー……」


 いくらバカなジムでも、規格外の事が起こっている事を認識せざるを得ないのであった。









 *








熱線吐息(フレアブレス)!!」


 ドルーアンの口から火炎が放射され、カナンを襲う。

 避ける事はさほど難しくはないが、いかんせん火力が高い。

 かするだけでも危険だ。


上位雷撃魔弾(イナズイガ)!」


 対抗して魔法を放つが、ドルーアンの火力の前には無力となってしまう。また、当たったとしても耐久力がとてつもなく、さほど効いてもいない。


 ごく僅かだが、形勢がドルーアンへ傾いてきていた。


(どうしたものかしら。舌に込めてもらった魔力はそこまで多くない。無駄撃ちは避けたいわね)


 おーちゃんの力は前面的には使いたくなかった。しかし、ドルーアンという敵は縛りを課して勝てる相手では無さそうだ。


「うぅらあぁぁぁ!!」


「ぐっ……」


 ドルーアンの攻撃全てに爆炎のオマケがついてくる。

 そのため拳を打ち合うだけでカナンへのダメージが蓄積していってしまう。


「ほらほら、さっきまでのお返しだよ!!」


「うぐっ!?」


 ついにカナンが腹部に拳を受け、吹き飛ばされてしまう。

 纏っている服が腹部だけ焼けて白い肌が露になる。

 表皮の火傷は即癒えるが、内臓に受けたダメージは大きい。


 カナンは口から赤い滴を溢しながら、地上へと落下していった。


「くはは、これでとどめ――」


 ドルーアンは、突然カナンの気配が変わった事に気がついた。

 禍々しくてどす黒い、強大なモノの気配を感じ取った。


 カナンがゆっくりと起き上がる。

 その姿に変化は無い。しかし何かが違う。


「うふふ……」


 カナンは、己の影の中から何かを引っ張り出した。

 黒くて長い棒状のものを――


 刀身が黒いモヤのようなものに包まれた、一振りの刀。――刀の銘は、〝紅影〟


「はっ、そんな武器を持った所で――」


 カナンがニヤッと口角を上げた次の瞬間。


 姿が消えた。


 そしてドルーアンの腕に紅い線が走り、血が噴き出した。


「!?」


 今まで大したダメージを受けつけなかったドルーアンの腕に、深い切り傷が刻まれたのだ。


「ふ~んふんふ~ん♪ まだまだ楽しめるわよね?」


「こ、こいつ……」


 鼻歌混じりに背後で笑うカナン。その纏う空気が、何かが違う。

 刀を含めて全身から、先程とは違う異様なオーラを放っている。


 ドルーアンは、本能で恐怖を感じ始めていた。

 本当の意味での〝怪物〟を相手にしていたのだから。

生意気なボクっ娘は〝わからせる〟に限る。

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― 新着の感想 ―
[良い点]おちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃちゃ
[良い点] また新しい種族!アイデアの豊富さがすごい! 黒死姫(でしたっけ?)モード!?キタぁぁぁ!! それも自我制御してる!数段階ランクアップしたウルトラカナンちゃん!いけいけぼくらのカナンちゃん…
[一言] クゥ〜ッ!! 一徹明けのオチャニウムが体にしみ渡るぜ
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