第110話 炎竜王戦その3
ソラ参戦おめでとう!!!!!
「グオオオオッ!!!」
『うおおおおっ!!!』
オレは氷の大剣で紅い竜の爪をギリギリと受け止めていた。
完全召喚のオレでも反応が遅れるほどの俊敏性に、炎を交え強化されたパワー。〝王〟の名は伊達ではないって事か。
「あれがぁ……オーエンちゃん、なのぅ?」
三人が、何か恐ろしいものでも見たような視線をオレへ向けてくる。まあなかなか禍々しい見た目って自覚はあるが。
「オーエンちゃんってまさか……爵位悪魔……? そんなの伝説でしか……」
ゲーてぃ? なんだそれ、初耳だ。
って、そんな事を気にしている場合じゃない。
そんな伝説のなんとやらと渡り合うこの竜も、とんでもない化け物なのだから。
「カナンちゃん! オーエンち……オーエンさん! 外のワイバーンたちはあたしたちに任せて!」
『ちゃん付けでいいんだが……。まあいい、そっちは任せた!!』
なぜにさん付けなのか。よくわからんが、オレの魔力を貸して強化された三人なら最上位飛竜が相手でも問題ないだろう。
「逃がさん! 灼熱砲射!!」
『させねえよ!!』
隙を突いて三人に向けて熱のビームを放とうとしてきたので、身をよじって強引に手首で受け止める。
ぐぐ……かなり熱いが、このイカした手甲のおかげで貫通されずに耐えている。
防御をしつつも、オレはもう片方の拳に闇の魔力を纏わせて顔面に素早くパンチ。
すると、ドレナスの顔面の鱗にヒビが入り怯ませた。
熱線による攻撃は中断させられたが、ドレナスは流れる血を舐めとると、怯むことなくオレへ攻撃をいくつも叩き込んでくる。
「ぐっ……くはは! いいぞいいぞ!!」
『くっ……』
精製した氷の大剣も一気に砕かれ、素早く軌道の見切れない拳や爪がいくつも飛んでくる。
が、思ったより痛くないなこれ。
どうやら今のオレの防御力は、狂信国の一件以前よりも桁違いに高くなっているらしい。
炎系の攻撃以外はそこまで痛くないし、やりようによっては押し切れるのではないか。
パワーはオレの方が上回っているっぽいしな。
……と思っていたが、オレのパンチやキックが全く当たらん。あっさり見切られるし、時々カウンターまで織り混ぜてくる。
もっとカナンと格闘の練習しとけば良かったかなぁ。
でも人化形態のオレじゃ、体力ゴミカス過ぎて近接戦闘の練習もできなかったしな。
対して人化形態でも強かったドレナスじゃ、格闘の経験とセンスに天と地ほどの差がある。
「そのまま耐えてておーちゃん!!」
空になった小瓶を片手に持ったカナンが、オレの腕の上を駆けてドレナスへ飛びかかる。
カナンはオレと組み合うドレナスへ、大振りの一撃をその眉間めがけて振り下ろした。
「ぐあっ!?」
先ほどまでは効かなかったカナンの攻撃が、ドレナスの眉間の鱗を切り裂いていた。
こっそり血を容れた小瓶をカナンに渡し、【吸血姫】によるバフをかけさせた。……のだが、なんかかなりの強化具合だな。
ちょっと強過ぎない?
まあいい、カナンが作ってくれたチャンスを無下にはしない!
『隙ありだ!!』
ほんの一瞬だが怯んだドレナスの頭に、下から拳を振り上げぶちかます!
ドレナスは大きくのけぞるも、更なる追撃を避けようと翼に炎を纏わせて後方へ飛び退いた。
ともあれ、これでようやく二撃入れる事ができた。パワーでは大きく勝っているが、スピードと技術では大幅に劣る。
カナンがいなけりゃジリ貧で削りきられかねないだろう。
「ぐぐ……魔霊との連携、なんと厄介な……」
「あんたこそ厄介極まりないわ。私たちが今までに会ってきた中で、多分イルマちゃんの次くらいには強いわよ」
ドレナスは隙を見せまいとこちらを睨み付ける。ダメージはあるが、まだまだ致命傷には程遠い。
「イルマ……貴様、あの男と、イルマセクとどういう関係だっ!!!」
すると、「イルマ」という言葉に対して、その金色の瞳に再び狂気的な怒りが灯る。
「少し会って話しただけよ。従ってもいないし、友達でもないわ。ただの知り合いよ。むしろあんたこそどういう関係なのよ?」
こいつあのおっさんと知りあいらしいな……。が、今はとにかく会話をしてギルドへ連絡する時間を稼ぐ。クラッドさんにギルドへの通信魔道具をこっそり収納から渡しておいたし、連絡して対応してくれるだろう。
「知りたいか? ならば教えてくれる。……あの男は、かつて〝魔境〟において8柱目の王だった」
「へえ……」
「……しかしあの男だけが運良く大海の女神の加護を得ると、女神の力を借りて自らの意にそぐわぬワタシたちを無理やり結界に押し込めた……!!!」
怒りに任せ、オレへ爪を振りかぶるドレナス。
それをオレは氷の障壁で防ぐ。
「それだけではない!! ワタシの姉さんを誑かし洗脳して連れ出した! ああ、憎らしい……憎らしい!」
「……今度会った時に私から言っておいてあげるわよ?」
「断る! ワタシの手で、あの男の全てを滅茶苦茶にしてやらねば気が済まぬ!!!」
復讐に取り憑かれた、修羅の竜ってところか。
悪いがあまり同情はできないな。
意にそぐわぬとは言っても、この感じじゃあまともに話し合いにも応じなかったんだろうし。獣王もだったが、そのプライドがイルマセクとの和解を許さなかったのだろう。
「炎竜尾鞭!!」
ドレナスは長い尾に焔を灯し、鞭のように振ってこちらを牽制してくる。さすが防いだ方が良さそうだ。
『上位氷結魔弾!』
オレはそこへすかさず魔弾をかまして相殺する。
しかし、近接が不利とはいえ距離を取られて時間を稼がれてしまうとかなり困る。
オレの完全召喚の滞在時間を削られてしまうからだ。
ならば、無理やりにでも近づいてやる!
「!!」
全身に闇の魔力を纏わせて、空中から放ってくるドレナスの熱線を無理やり押し退けて接近する。
すると逃げるように距離を取ろうとするが、オレには考えがある。
『主様!!』
「ええ!」
オレは、肩に座るカナンを掴み、そして思い切りぶん投げた!!
「何だとっ!?」
【空中跳躍】も相まってまるで弾丸のように突っ込んでゆき、油断したドレナスの脇腹辺りと翼の一部を抉り斬った。
「どうよっ!!」
翼の一部が破けた事により、バランスを崩し減速するドレナス。
オレは凍闇徹甲砲を放ちながら接近し、そして近接の攻撃も仕掛ける! この一撃に賭けてやるつもりだ。
ドレナスも体を縮こませて防御姿勢をとるが、そんなものは
『無駄ァ!!!!』
「……!!」
魔弾が炸裂し、真っ黒な大爆発が巻き起こる。
と同時に、爆発の中へ突っ込んで防御するドレナスの体に縦の回転蹴りをかます。
『はぁ……どうだ……?』
勢いよく地面へと墜落してゆくドレナス。
以前よりも強化された凍闇徹甲砲に加えて、全力の一撃を与え、いくら準特級といえどこれでまだ動ける方がおかしい。
「ぐ……グオオオオオオオオオオオオオッ!!!!」
全身がひび割れ、四肢や翼も半分消失し、満身創痍のドレナスが、まるで獣のような咆哮を放つ。
とんでもなくタフだなこいつ……。獣王だったら消し炭になっていただろうに。
しかも、満身創痍なのにこちらまで気圧される。
恐れるべきは、手負いの竜って事か……。
「あっ!!」
凄まじい生命力な上に、どうやら獣王と同じく再生能力を持っていたようだ。
全身の傷や失ったパーツが、めきめきと治ってゆく。
「素晴らしいぞ……このワタシにこれほどまで傷をつけるとは」
が、治ったのは『傷』であり、蓄積したダメージは残っている。再生で魔力をかなり消費させられたので、無駄ではないハズだ。
『追撃だ主様!!』
「私に合わせて!!」
空中でカナンと合流し、地上で傷を癒すドレナスに今度こそとどめを刺すべく舞い降りる。
傷が治りきる前に畳み掛けてやる!!
しかし
「楽しい一時だったが、いい加減終わりにしよう!」
そう呟いたドレナスの全身がまるで太陽のように白熱し、眩い光はまるで昼間のように一帯を照らしだした。
な、何だ何だ?! とんでもない魔力出力量だ! 今まで使ってきた技のどれとも、まるで比較にもならないほどの――
「これを受ける事を、誇りに思うがいい。
〝秘奥・炎竜旋滅葬〟!!」
一層眩く白く輝くドレナスが、地上から真っ直ぐこちらへ突っ込んでくる……!
とんでもないスピードで、空中にいるこの状況では回避は……
『〝多重結界〟!!〝高位氷結魔弾〟!!』
少しでも軌道を逸らそうと、魔弾をかましたりするが……
全く効いていない! さっき張ったやつもとっくに崩壊しているし、たぶん多重結界も一瞬で打ち破られるだろう。
とんでもねえ熱量だ……。並の人間なら、近づくだけで灰になってしまいそうだ。
なら……
凍闇徹甲砲!!
オレが使える魔弾系で一番強力な術式を放ち、少しでも足止めをする。
ドレナスを中心に黒い爆発が巻き起こり、辺りを闇が包み込む。この隙に少しでも距離を……
「無駄だ!!」
効いてない?! 煙を切り裂いて、眩く輝く竜がもう、すぐ背後に迫る。狙いはカナンじゃなく、オレのようだ。
「避けておーちゃん!」
さすがにあれを受けるのは、まずい。けれど、とんでもないスピードで避けきれない――
ならば、逆に受け止めてやる!!
オレの残りの魔力はざっと6割くらい。その内の3割を使って、闇属性を付与した結界を全身に数百も重ねて防御力を高める。
『来い!!』
「いいだろう、貫いてくれる!!」
そして、黒いもやがかかるオレの体に白く発光するドレナスが衝突した。
『く……これは、ヤバい……』
受け止めて秘奥とやらを止めるつもりだったのだが、どんどん加速している。
「おーちゃん!!」
『来るな主様!!』
押し返す事もできず、壁に押し付けられ次々と結界が破られていく。
……壁が溶けた?! やべえ、とんでもない熱も発しているのかこれ。
カナンじゃ近づく事すらできなさそうだ。
しかし、このままだとオレが倒されてしまう……。そうなったら――
『うおおおおお!!!』
オレは両手で小さな恒星のようなドレナスを掴み、この肉体の膂力全てを使って左方向へと投げ飛ばした。
が
『くっ……腕が』
特に力を込めていた左腕の肘から先が、結界を破られて消滅してしまっていた。
その断面からは残り少ない魔力が漏れ出してしまっている。
「諦めろ!」
しかし、そこまでして投げ飛ばしても、ドレナスはすぐに方向転換してまたこちらへ突っ込んでくる。
全身に数百も重ねた結界も、大半が破られて残りわずか。次に食らったら今度こそ貫かれてしまうだろう。
オレに残された最後の手段。それは――
「さらばだ! 名も無き爵位悪魔よ! 久々に楽しめたぞ!!!」
『まだだ! 【人化】!!』
オレは巨体の魔霊形態からいつもの幼女フォームへ移行して、小回りを生かしてドレナスの突進の軌道から逃れる。
しかし、改めて見るとすげえ巨体の竜だな。あんなのと殴りあってたのかオレ
「あっつ!?」
く、こんな離れててもめちゃくちゃ熱い!? 外で戦ってたら森がどれほど焼失していたか……
「小癪な!」
2回目の突進を避けたはいいが、次こそはこの姿でもやられてしまうだろう。
そもそも、一定距離近づかれただけでアウトだ。
魔力もあと僅か。
魔法も有効ではないし、ドレナスの魔力が底をつくまで耐えられるはずもない。
――でも、キミの魔力量なら
ひとつだけ、この状況を打開できる手段があるとすれば。
確実に発動させられるためしはない。
だが、これができなきゃ待っているのは確かな〝敗北〟。カナンも、エリナさんもリナリアさんもクラッドさんも、みんな死んでしまう。
いや、考えるな。
確実に、成功させる。イメージを、オレの心を現実に。
集中し意識を研ぎ澄ませろ。
そして――
「心 象 顕 現 !
〝形 影 相 弔〟!!」
そして現実は、オレの心象で塗り潰された。
炎竜王戦、二話くらいで終わるはずだったのにどうしてこうなった。
次回で決着です。そして力を使い果たしたおーちゃんの運命やいかに!?
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