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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第四章 神槍精製

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86話 星の洞窟(地下迷宮)

「ここが、そうなのか……」


 奥が見えない洞窟の入り口。

 ゴツゴツとした岩肌の壁が微かに振動し、人間のうなり声のような音が聞こえてくる。


「──はい、星の洞窟です」


 漂ってくる空気──独特の粉っぽい臭いと、湿度の違う風が外まで運ばれてくる。

 不気味だ。


「では、入りましょうか」

「ええと、俺が前を歩くから、ケンは後ろでナビゲートを頼む。ランドグリーズは……狭いだろうし、俺の鎧に変化しててくれるかな?」

「はい、その身をお守りします」


 ランドグリーズは光に包まれ、そのまま俺の身体へ『武具変化』した。

 戦乙女の鎧とは違い、ゴツゴツとしたフルプレートの鎧に、兜の代わりに頭だけサークレットがついた男向けのデザインだ。

 まさに重厚。


 だが、重さを全く感じさせず、可動部も思ったより広い。

 感覚的には、ちょっとコートで厚着をした程度だ。

 たぶん、最高の鎧である。


 ……ただ一つを除いて。


「なぁ、ランドグリーズ」

「はい、何でしょうか?」

「この金色、どうにかならないのか……」


 全身、純金と言わんばかりに光り輝いている。

 ゴールド、ゴールデン、ゴールデンサンである。


「相応しい色だと思いますが?」

「……ごめん、俺的には目立ちすぎて、恥ずかしくなって死にそう」


 鎧から声がする、不思議な感覚。

 ランドグリーズと密着していると考えてしまうのもあり、さらに恥ずかしさが倍増する。

 全身金色が似合うやつなんて、世の中に数人レベルだろう。


「うーん、そうですね。考えておきます。でも、今はこれで我慢してください」

「そ、そうか。迷惑をかける」

「……このまま密着していたいですし」


 何か小声で言われた気がするけど、あーあー聞こえなーい。

 先に恥ずかしさで戦闘不能になってしまう。


「じゃあ、行くか」

「はい、魔神様!」

「お~!」


* * * * * * * *


 カンテラを腰から吊しながら、その微かな明かりで前に進む。

 といっても、俺は夜目が利くので平気だが。


「ええと、その分かれ道は右です」


 マップを見ながら、後ろからのナビが大変そうだ。

 洞窟の内部は、人が2~3人並んで歩けるかどうかのスペース。

 高さは、たまに俺の身長だと頭をぶつけそうになる。


 背が低めなドヴェルグ基準なのだろうか。


「その先、広くなっています」


 しばらく歩くと、先から明かりが見えてきた。

 そこを通り抜けると、目の前には大空洞。

 ちょっとした野球のグラウンドくらいの構造になっていた。


 そこかしこに掘ったような形跡があり、手押し車などが放置されていた。

 普通、鉱山のイメージだとトロッコだが、何か理由でもあるのだろうか?


「昔はここらへんでも掘れていたらしいですが、今では休憩所の役割が強いですね。ライトクリスタルもあって明るいですし」


 ケンが説明しながら指差す、透明な角張った水晶。

 それが淡く光を発していた。

 地下にある聖剣の故里がぼんやりと明るさを保っているのも、このライトクリスタルというやつのおかげなのだろう。


「モンスター達も、これには手を出しません。自分達にも必要だと本能でわかっているんでしょうね」

「モンスター……やっぱり出るのか」


 前のダンジョン攻略のように先に排除する事も出来るが、正直アレをまたやったら……やばい気がする。

 毒の沼地で町を汚染し、最深部にあるエーテライトという鉱石もどこかに流れていきそうだ。

 ダンジョン入って二分で環境半壊、そんなやり方はやっちゃいけない!


 俺は反省している!

 さすがにもう、この聖剣の故里まで半壊させるなんて事は絶対に、絶対にしないぞ!


「あ、ところで、モンスターってどんなのがいるんだ?」

「そうですね、最初に出てくるのはピンクラビットです」


 なんだ、可愛い名前じゃないか。

 通り道で出会ったら、餌付けでもして道を譲ってもらうくらいの気構えで良さそうだ。

 ダンジョン+ウサギ、なんともファンシーだ。

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