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異世界序列のシムワールド ~玄関開けたら2分で半壊……しょうがないから最下位から成り上がる~  作者: タック@コミカライズ2本連載中
第四章 神槍精製

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85話 戦闘炭坑夫(マイナーズ)

「じゃあ、説明を頼む」

「はい、魔神様の頼みとあらば何なりと!」


 何か、ケンの瞳がキラキラと輝いている。

 尊敬の眼差しというやつだろうか。

 よっぽど妹が助かった事が嬉しかったのか、微笑ましいし、照れくさい。


「では、『星の洞窟』の場所ですが──」


 エーテライトという神器のための鉱物があるという、星の洞窟。

 地表の各所に入り口があり、それはどれも星の中心に向かって続いている。

 この聖剣の故里からも入り口があって、今回はそこから行くらしい。


「ちょっと待った。星の中心に向かうって、重力の関係とか、マントルとか色々あるんじゃ……」


 地球基準で言えば、中心に向かうとドロドロの溶岩が詰まっていたり、重力が0に近付いたりする。


「え? 何を言ってるんですか?」


 ケンが真顔で返してくる。

 冗談では無く、マジで言っているらしい。

 地球の常識はここでも通じないのか……。


「映司さん、ここはそのため(・・・・)に調整された異世界ですから。あ、おはようございます」

「おはよう、ランドグリーズ」


 今まで寝ていたらしいランドグリーズが起きてきた。

 フェリの事を軽く説明するが、あまり驚いた表情では無かった。

 それなら大丈夫ですよ、と一言だけだ。


 話を戻そう。


「ランドグリーズ、そのために調整された異世界とは何なんだ?」

「実際に行って見た方が早いです。そこで本人から聞けますしね」


 本人? 誰かいるのだろうか。


* * * * * * * *


「その前に、ここで買い物をさせてください」


 聖剣の故里の市場。

 元からある商店、どこからかやってきた外来品を広げる行商、武具を買い付けにやってきた身なりの良い者達。


「この町、一万人目の赤ん坊が生まれた記念だぁ! セール中だよ! 見てけぇ!」


 という大きな規模の町なので、それなりに買い物客も多く賑わいを見せている。

 朝なのに薄暗い地下の町だが、人々の活気で明るく見えるような気もする。

 サンドイーターとまではいかないが、色々と珍しいものが目を楽しませてくれる。


「えーっと、水は魔神様が出せるし、食料は昨日の残りで作った干し肉やハムで平気ですね。軽くパン辺りと、方位計でも買っておきましょうか」


 何でも、星の洞窟というところは空間が歪んでいる場所も多く、特殊な魔石を使った方位計が必要なのだそうだ。

 それと、俺とランドグリーズは食料は食べなくても平気だが、ケン用のを用意しておかなければならない。

 ……そういえば、まだケンには俺達の詳しい素性を話していなかったな。


「それじゃあ、私は向こうへ」

「ランドグリーズ、任せた」


 時間も惜しいので二手に分かれ、ランドグリーズは食料の買い出しをする事になった。

 一方、俺とケンが向かったのは、人通りが少ない隅の方の──とあるレンガ造りの古い店。

 端的に言ってしまえば、怪しげな雰囲気。


 ガラクタのような物が外まで積み上げられ、間違いなく一見さんは回れ右だろう。

 何か巨大な骨まで置かれてるし……、ってアレは見覚えが。


「おっちゃーん、生きてる~?」

「生きとるわい! 昨日、会ったばかりじゃろう!」


 サンドイーターの骨を持っていった、酔っ払いドヴェルグであった。

 店の中に入ると、同じように雑多な棚だらけ。

 所狭しと物、物、物。


 使い道の分からないバネの飛び出した機械から、星のマークが入った水晶玉まで。

 掘り出し物はありそうな雰囲気だが、こう量が多くては探す気にもなれない。


「今日は何だ? 星誕祭が近いから、流れ星の腕輪でも欲しいのか?」

「違う違う。星の洞窟に行くから、方位計が欲しいんだ」

「お前ら……あそこに行くのか」


 今日はシラフのドヴェルグのおっちゃん、割と真剣な顔だった。

 酔っぱらっていないこの種族は、案外普通なのか。


「わかった。これを持っていけ」


 奥の棚から持ってきたもの、それは円形のパーツの中に矢印が付いた機械と、一振りの長剣だった。


「方位計と……、この剣はなんだい?」

「ワシが若い頃に使っていた炎の魔剣じゃ。こう見えても、昔は戦闘炭坑夫(マイナーズ)で星の洞窟へも潜っておったからな」

「え、えーっと、そんなに持ち合わせが──」


 おっちゃんは、やれやれと肩をすくめた。


「昨日の礼を兼ねた餞別だ。こちとら、いつもかーちゃんに尻に敷かれてんだ。たまには、ガキ相手くらいには良い所を見せねぇとな」


 ニカッと歯を見せて笑った。


「それと、そこの異邦人の料理人」


 俺の事だろうか……たぶん俺の事だろう。

 こっちに来てから、料理ばかりだったためかな……。


「こんなガキでもいなくなると、騒々しさが足りなくていけねぇ。守ってやってくれ」


 俺は、当たり前だという表情をした。


「任せてください」

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